記憶の価値と理性の時間
遠くの方で俺を呼ぶ声がして、その声に近づいて行くと
温かいものに包まれる感覚が俺の全身を包んでいた。
お風呂に入った覚えもない。
その前後の記憶も俺には無かった。
でも俺は、ちーちゃんとちびりんごちゃんと一緒にお風呂に入っていた。
俺の左側でちーちゃんとちーちゃんの膝の上に座ったちびりんごは体を洗っていた。
何が何だか分からない俺は、動揺してすぐに目線を外すことしかできなかった。
どうしてこんな状況になったのか、俺には全く理解できなかったが、ちーちゃんとちびりんごの話を聞く限り俺は、ちーちゃんとちびりんごに対して ‘’ 男として ’‘ 何かをしてしまったらしい……。
俺は一体…何をしたんだ⁈
そう自問自答をしても、全く思い出せない。
それに、俺の横にはタオル一枚だけのちーちゃんがいて他に考える事が出来なかった。
横目で見るちーちゃんの体はとっても綺麗でドキドキして直視できなかった。
記憶が思い出せない……。
もはやこの最後の記憶も ’‘ いつからの’‘ ’‘何処からの ’‘ 記憶なのかも定かではなかった。
それでも不思議と不安や恐怖は一切なかった。
どうしてこんな状況になっているのかだけ気になった。
その気になった気持ちも、ちーちゃんの笑顔を見ていたらそんな事取るに足らない、どうでもいい出来事な気がして気にならなくなった。
只々、可愛い女の子との甘い甘い幸せの時間が続いていた。
温かい満たされた気持ち。
幸福な気持ちだけ俺にはあった。
「小太郎さん!あまり湯船に浸かるとのぼせちゃうなのです。体も洗ったし、そろそろ出るなのです!お風呂あがりにみんなで、冷たいキャラメルマキアートを飲むなのです。」
「そうだな!僕も賛成だ!キャラメルマキアートは僕にもちーちゃんにも相性がいいからな 」
二人共楽しそうに、話しているのをぼーっと眺めていた。
「ねぇねぇ!!小太郎さん!ちーのお話聞いてるのです? なんだか上の空でちーは寂しいなのです 」
そう言ってあからさまな泣き真似をしながら俯くちーちゃん。
それを見てちびりんごは、湯船の淵にきて大きく手をパタパタさせながら
「そうだそうだ!小太郎!ちゃんとちーちゃんの話を聞いてないだろ!ちーちゃんを悲しませたら僕が、許さないからな! 」
「りんちゃん!いいのなのです!ちーは……ちーは小太郎さんとずっと一緒に入れるだけで幸せなのです。だから小太郎さん!ちーを選んで一緒にいて欲しいなのです 」
そう言いながらちーちゃんはタオルを外し、湯船にいる俺に裸でそう迫ってきた。
流石にぼーっとしていた俺も、ちーちゃんのこの大胆な行動には慌てて
「ちょ!!ちょっと待ってくれ……ちーちゃん見えてる…見えてるからぁ! 」
そう言いながら、慌てて目を閉じる。
視界が真っ暗の中、俺の腰と太もも辺りには柔らかな感覚と、重みを感じた。
「へへへ…。小太郎さん今更なのです? 散々、ちーとあんな事やこんな事をしたのに…」
どうやらちーちゃんは俺の上に乗って湯船に入っているようだった。
「ちーちゃん!ちょっと待って……それの体勢はいろいろまずいって……」
裸でこんな可愛い子が上に乗っていたら、流石に俺の理性も保たない。
「小太郎さん……そう言いながらこんなに大きくなるなんて、ちーに興奮してくれたなのです♡このままだとちーがちゃんとお座りしたら入っちゃうなのです…あッ」
流石の俺もここまでされたら、なるようにしかならないと覚悟を決めて薄眼を開けて、ちーちゃんを見る。
ちーちゃんは恍惚とした笑みを浮かべて腰を動かして中に入れようとした瞬間。
突然お風呂場のドアが開いた。
「……私も……小太郎さんと……お風呂……入る……」
そう言ってショコラちゃんはタオルで前を隠しながら、お風呂に入ってきた。
それを見てちーちゃんは立ち上がり
二人は睨み合うように顔を見合わせる。
俺は突然の事で動けずこの気まずい状況に只々、見ているしかできなかった。
「むぅ〜!!!今良いとこだったのに邪魔しないで欲しいなのです!ショコラちゃんだって楽しんだならちーだって楽しみたいなのです〜 」
「そうは……させない……小太郎さんは……私のもの……」
「ぷっく〜なのです!小太郎さんは、みんなのものなのです〜ショコラちゃんばかり独占するなんて許されないなのです!小太郎さんがデカ乳が好きだからってちーはぜっーたい認めないなのです!! りんちゃんもこのデカ乳に言ってやるなのです! 」
そう言ってさっきまで、ちびりんごがいた湯船の淵を見るが、ちびりんごの姿がない。
「あれれれ?りんちゃんは?何処なのです?」
ちーちゃんが慌てて探すが見当たらない。
でも俺の目の前で音がして、目線を下げると
「ぶくッぶくッ…たすけ…ぶくッ」
ちびりんごが溺れていた。
頭の中はぼーっとしていたが冷静に、助けなきゃと思ったが体が動かない。
「あわわわ!小太郎さん何してるなのです!!」
そう言ってちーちゃんが、ちびりんごをすくい上げた。
「りんちゃん⁈りんちゃんしっかりするなのです!今、助けるなのです!」
そう言ってちーちゃんは、お風呂場から出て行った。
俺とショコラちゃんの二人きりになった。
「ふふふ……小太郎…ん……キスして……欲しいです……」
そう不敵な笑みを浮かべながらショコラちゃんは、俺を求めてきた。
続く




