出会いと誓い
『ボッン‼︎‼︎ 』という音と共に
かまどから飛び出してきたその女の子は辺りをキョロキョロ見て俺を見つけた途端、満面の笑みを浮かべ近づいて俺の前に上目遣いで恥ずかしそうに俺に話しかけて来た。
「あっ‥あのぉ‥‥‥」
「‥‥‥小太郎しゃんの‥‥‥小太郎しゃんの‥りっ‥理想の‥女の子になれましたかですぅ? 」
顔を赤くし恥ずかしそうに話しかけてくるので俺もつられて恥ずかしくなり
「‥‥‥うん」と首を縦に振る。
苺の顔は更に赤くなり俺も可愛すぎて直視すら出来なかった。
そんな風にお互いがもじもじしているとだだっ広い部屋にどこからとも無く大きな声が広がった。
「これより第一次試験の準備を開始するぞぃ!! ! 課題は「言語」じゃ‼︎ プレイヤーは此処に用意した器具を使い、己が創り出し乙女に現世で必要な「読み書き」を教えよじゃ‼︎‼︎ 期間は2週間!試験の不合格の場合は現世に戻る資格なし‼︎ 以上じゃ‼︎ 」
唐突にそんな声が聞こえたかと思ったら「ボフッ‼︎ 」という音と共に真っ白なだだっ広い部屋に長方形の木目が綺麗な机と学習に必要な鉛筆やノート類といくつかの本が出で来た。
その様子を俺も苺も唖然として見ていたが苺がキラキラした目で俺に
「言語って何でしゅか⁉︎ しっ、試験て何でしゅか⁉︎ 小太郎しゃん‼︎ 教えてくだしゃい! 」と興奮気味に騒がしく言うので俺は慌てながらも冷静に
「おッ‥俺も知らんが苺に言葉を教えないと此処から出られない様だな」と言い回りを見渡した。
何処までも続く真っ白なだだっ広い部屋。
あるのは大きな不思議なかまどと大量のフルーツと苺を作った怪しい粉と今出て出来たばかりの机と本のみ。
此処で2週間生活出来ないよな……。
風呂もトイレもない、ましてや飲み水やフルーツ以外の食料も無い。どうしたらいいのか……?
そんな事を考えていると
「伝え忘れたぞぃ‼︎ 此処のシュガーキッチンの中ではプレイヤーが必要だと思うものは何でも出現させる事ができるのじゃ‼︎ 飲み水も食料も寝床もだ‼︎ 但しその対価に現世での己が一番大切な記憶を預かるのじゃ‼︎ 此処から出た時には返してやるがのぉ! これは此処でのルールだから異論は認めん‼︎ では健闘を祈る‼︎ 」
「ちょっと‼︎ 待てよ‥…」
俺が言う前に声の主は消えていった様だった。
俺の大切な記憶を渡すって。どの記憶か見当もつかない……そんな事を考え込んでいるとその様子を隣で心配そうに見ていた苺は
「小太郎しゃん‥苺、頑張るですぅ‼︎ だから一緒に此処から出るですぅ‼︎」
俺を励まそうとニコニコ笑って言ってきた。
その無邪気な笑顔に俺は救われた気がして
「そうだな、、、あれこれ考えていても仕方がないしな!これからよろしくな!苺 」と言い
苺の頭に手を置きなでた。
すると苺はみるみるうちにまた真っ赤になり不意に頭を撫でた俺もそれを見て恥ずかしくなり直ぐに手をどかした。
苺は一瞬寂しそうな顔をすると顔を真っ赤にして上目遣いに俺を見て
「……苺が…いい子だったら……小太郎しゃんまた頭なでなで‥してくれましゅか? 」
それを見て俺の心臓はかつてないほど速くなり、自分が不意にやった事だったがこんな可愛い女の子にこんな表情をさせ、尚且つ嫌がられない事にこのゲームをやって良かったと心から感動したが苺に悟られない様に
「おぉ……もちろん撫でてやるぞ」と返すと
すると苺は顔を赤らめて嬉しそうに
「やったですぅ! 小太郎しゃん!じゃあ苺はなでなでの為に勉強頑張るですぅ」
「そうか…そうだな! 2週間しかないし、早速始めるか!」と言い苺の今出来ることを聞いた。
苺は難しい言葉で無ければ話すことは出来るのだが読む事と書くことは全く出来なかった。
俺はまず苺にひらがなを教える事にした。
俺がノートにお手本を書きそれを見て苺が書く、何度も何度も同じ字を書き、覚えていく。
〜3日後〜
苺は話すことは出来ていたのでひらがなをみるみるうちに覚えて言った。
「苺、これは何て読む?」と俺は「あ」と書いた紙を苺に見せた。
すると苺はニコニコと笑い元気良く
「これは「あ」でアイスの「あ」ですぅ!」
俺は頷き
「じゃあこれは?」と言い苺に「ち」と書いた紙を見せた。
すると苺は元気良く
「これは「ち」でいちごの「ち」ですぅ」
俺は再び頷き
「苺、全問正解だ!苺はいい子だな」と言い苺の頭を撫でた。
すると苺は嬉しそうに上目遣いに俺を見て
「小太郎しゃん!絶対一緒に出ましょうですぅ!」と俺に笑いかけてきたので俺も
「そうだな、絶対出ような!」
そう頷いた。
絶対苺と此処から出ると俺はこの時固く誓ってこの幸せが長く続くと信じていた。
このアプリの本当の使い方もシュガープロジェクトの本当の意味も知らないまま。
続く