甘味の元素とチョコレートな彼女
大きなかまどが開き中に入る。
生暖かい風が吸い込まれるように奥に向かって流れていた。
俺は、ショコラちゃんに手を引かれるまま奥へと進む。
「…もうすぐ……です…」
ショコラちゃんがそう言いながら指を三回鳴らす。
すると奥の方がだんだん明るくなって、その光は一気に俺たちを包んだ。
ダージリンの香りがして目を開けると、英国調の家具が置いてある部屋に出た。
「あらあら。わたくしがお茶を足しんなんでいる時に無粋なお客が来たこと 」
その声に振り向くと、銀髪の女の子と小さい女の子が6人いた。
小さい女の子達が俺を見て、騒ぎ出した。
「ぐはははは!!プレイヤーがここまできたぞ〜?」
「白ちゃま〜わたくち…怖いでしゅ〜 」
「愚民どもが!!!白様の前です!跪きなさい!!」
「むにゃむにゃ…眠いお…」
「あらあら坊や…私に会いにきたんでしょ?…ふふふ」
「もぐもぐ…バブゥ…」
「皆さん!慎みなさい。低俗な人間といえどお客様です。 プレイヤー佐藤小太郎とそちらの案内
人にわたくしと同じダージリンを……あと席の準備を 」
そう銀髪の女の子が言うと、小さい女の子達は一斉に部屋から出て行き、椅子とティーカップ、チョコレートケーキを持ってきた。
「プレイヤー佐藤小太郎。席の準備が出来たので、お座りください 」
そう促され、俺とショコラちゃんは席についた。
沈黙した空気の中、銀髪の女の子がティーカップに口をつけた。
「……で。わたくしに何の用かしら?」
「…単刀直入に……いうです……小太郎…んの ‘’ 感情 ‘’ ……返して……くださいです……」
「ふふふ。何を言いだすかと思えば‘’ そんな事‘’ ですか…。‘’無償で返せ‘’ と?でも言うのかしら?貴女はいつからそんな浅はかなで幼稚になってしまったの?ふふふ 」
一瞬にして、張り詰めた空気が漂う。
「これでは、せっかくのダージリンが冷めてしまうわ…」
銀髪の女の子は紅茶を飲む。
そう言われて、俺も一口紅茶を飲んだ。
ほんのり甘いダージリンの香り。
心まで温まるような、温かい感覚が全身を包んだ。
「ダージリンの味は、どうかしら?プレイヤー佐藤小太郎」
「…はい。まあ美味しいです」
「そう?ふふふ……ずいぶん素直ね 」
銀髪の女の子と目があって俺は、とっさに目をそらした。
「バンッ!!」突然ショコラちゃんが机を叩くと立ち上がり大きな声で
「早く……小太郎…んの感情…返す……です……!!」
そう言い銀髪の女の子に詰め寄る。
周りにいた小さい女の子達が必死に銀髪の女の子を守ろうと間に入っていた。
「白ちゃまをお守りするでち〜」
「ぬおおおおおお!!!」
「白様に無礼を働くなど!!」
そんな状況の中、銀髪の女の子は優雅に紅茶を一口飲みカップを置く。
「ふぅ。全く、貴女は節操も品もない…お話になりませんね 」
完全にゴミを見るような目で、ショコラちゃんを見下しにこやかな顔で俺に話しかけてきた。
「決めるのはプレイヤーである佐藤小太郎です。 わたくしはプレイヤーである佐藤小太郎の願いをあくまで叶えたまで。どうするか選択するのはプレイヤーである佐藤小太郎の権利です。わたくしにも決める権利は無いのです 」
「プレイヤーである佐藤小太郎はどうしたいのかしら? 」
そう問われ、俺はぼんやりした頭の中で必死に考え用とするが全く思考が巡らない。
「……小太郎…んは……考えることすら……出来なくなってるのです…」
「そう?かしら…その方が都合がいいのは貴女ではなくて?ふふふ 」
お互い睨み合う。
そしてショコラちゃんが耳打ちしてくる。
「小太郎…ん…私の言う通りに……言うです……‘’ やる気と精気を戻してくれ‘’ と……そう言えば戻れる……です」
何も考えられない俺は、ショコラちゃんに言われるがまま
「……やる気と精気を戻してくれ」
そう銀髪の女の子に告げた。
「ふふふ…まるで操り人形ね!プレイヤー佐藤小太郎。もはや自分で選択する事も放棄しましたか? 」
畳み掛けるように言い放つ。
「…俺は」
「小太郎…ん……そのまま言うのです…!!!」
「俺に…やる気と精気を戻してくれ…俺の願いだ」
その様子を見て、銀髪の女の子はゴミを見るような見下した目で俺を見つめため息をついた。
「ここまで浅はかで、鈍感で、下劣で悪趣味だとむしろ清々しいものですね。…いいでしょう。その願いわたくし、上白糖の精霊白が叶えましょう 」
そう言うと白は小さい女の子に小さい角砂糖を二つ持って来させた。
「シュガーキッチンに帰ったら必ず二つ同時に口に含みなさい。どちらか一つでもダメです。分かりましたね?」
そう言われ二つの角砂糖を渡された。
「…はい…分かりました。」
それを受け取るとショコラちゃんが
「では…こんなに長居してもいけないです……シュガーキッチン…帰る……です……」
そういい俺の手を引く。
「あらあら。まだケーキも残っているのに貴女は食べてかれないのね…」
そう銀髪の女の子が言うと
「私…その……ケーキ嫌いです……お気遣いなく……」
そういい俺たちは部屋から出た。
部屋から出ると、ショコラちゃんは指をまた三回鳴らす。
俺はまた真っ暗で生暖かな空気が流れるかまどの中に戻ってきた。
ぼんやりした俺の頭の中には戻れるという少しの期待感。
そして何かが違う…そんな気持ちだった。
続く




