二人の交りと心の行先
穏やかな日々。
可愛い女の子との甘い生活。
いつもと変わらない温かく優しい空気が俺を包む。
ただ最近少し変わった事があった。
少し前までは、俺の周りにみんなが集まってちーちゃんがずーっと話していて、それを俺とショコラちゃんが聞いている。
そんな日々だった。
それが最近現れたりんごちゃんが来てから、ちーちゃんはりんごちゃんを自分の頭に乗せてずーっと楽しそうにお喋りしていて、片時も離れないくらい二人は仲良しだった。
そんな事情もあってか、今までショコラちゃんも俺にべったりだったが最近では、益々俺の側から離れようとしない。
「……小太郎…ん……好き…です……小太郎さんも同じ…気持ち…です?」
「…うん。ショコラちゃん俺も好きだよ。…でもショコラちゃん…俺が目が覚めてからずーっと同じ質問ばかりしてるよ?…はぁ 」
「何回も……聞きたく…なるの…ショコラに……ちゅー……してください……です」
「…うん」
ショコラちゃんと出会ってすぐの頃。
ショコラちゃんの髪の毛がサラサラで、余りにも綺麗だから櫛で髪をとかさせてもらった時。
いい匂いがして、ショコラちゃんといい雰囲気になり初めてのキスをした|。
それからというもの俺は、ショコラちゃんと何度も何度も唇を交わした。
今日も手馴れたようにショコラちゃんの柔らかい唇に本日何回目か分からないくらいの口づけをする。
ショコラちゃんとのキスはビターなカカオの香りなのに、舌を絡ませると一気にほんのり甘いホワイトチョコの様な味わいになり、後味はフルーツの酸味を感じる様な甘い甘い不思議な口づけ。
「はぁ……小太郎…ん……を独占したいです……もう一回……して欲しい…です…」
ショコラちゃんのおねだり顔えっちだな…。
内心そんな事を思いながらも、どこか冷めてる俺は、全く勃たないしその先に進みたいという欲求も無い。
只々、言われているから唇を重ねる。
ずーっとキスだけを只々する関係。
本当だったらそんな関係いけないのかもしれない……。
普通なら罪悪感を感じるのかもしれないが、どこか冷めている俺は、義務に近い感情以外
それ以上の感情は浮かばなかった。
目覚めてからというもの、無気力でやる気が全く出ないし
無力感や虚無感が心のどこかに常にあって、冷めた感情しかなかった。
俺は、どうしてしまったんだ…?
うつむきぼーっと考えていると
「……小太郎さん?……私を……見て……気づいて…」
上目遣いに潤んだ瞳で、顔を真っ赤にして俺を見るショコラちゃん。
俺はそんな気持ちを悟られない様に笑顔を作る。
「あはは…ごめんごめん!ショコラちゃんとのキスが気持ちいいからさぁ。ぼーっとしちゃった …あははぁ…」
重い空気が一瞬流れ、俯いていたショコラちゃんが顔を上げて俺を見つめる。
「誤魔化しても……ダメ……私は……小太郎さんが……うわの空なの…分かってます」
必死で力強い眼差しに、俺は今まで隠していた‘’ やる気が出ない ‘’事や ‘’ 無力感を感じる‘’ 事を正直に話した。
ショコラちゃんは、終始俺の話を真剣に聞いてくれた。
全てを話し終わると今まで黙っていたショコラちゃんが口を開いた。
「なんで…なんでそんな大切なこと…言って…くれなかったの?…こんなに……大切なのに…」
俺が何か言わなきゃと話し出す前に
「行くのです…………白様の……所へ」
俺の手を握って、突然走り出したショコラちゃんは大きなかまどの前で立ち止まった。
「はぁはぁ…ショコラちゃん急にどうしたんだ…それに “ 白様 ”って誰なんだよ… 」
「小太郎…んは……覚えてない…かもしれないですが…… ‘’ 白様 ‘’ に……会った事が…ある…です…」
「…え…?」
「とにかく…会いに行くです…記憶は無くても…心は……わかるです…」
いつに無く強引なショコラちゃんは指をパチンと鳴らし
「…シュガーキッチン…オープン」
その掛け声で大きなかまどが開いた。
中は真っ暗で先が見えない。
その中に半ば強引に手を引かれ連れて行かれるが不安な気持ちはなかった。
俺の心の指し示す先に何があるのか。
そんな気持ちでいっぱいだった。
続く




