赤い果実と甘い雫
温かい日溜まりのようなものが俺を包み優しいミントの香りが香る。
安心するようなそんな心地よい感覚。
そんな中誰か、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
_____……こた…ろ…起き……
段々声が近づいてくるようにはっきり聞こえ俺の意識もはっきりしてきた。
体が重くて動かない。
そんな中、近くで話している会話が聞こえてきた。
「 おい!佐 藤 小 太 郎!!!起きてくれよ。僕が、やっと出てきたのに小太郎は目を覚ましてくれない…… 」
「仕方ないなのです。小太郎さんは、長い眠りが必要で今さっき意識がはっきりしてきた所なのです。’‘りんちゃん ’‘も、ちーと一緒に待つなのです!それまでシュガーキッチンのアイドルであるちーの生歌を聴くなのです! 」
この声は……ちーちゃん?と……誰だ……?
聞き覚えのない女の子の声が聞こえる。
その声の主とちーちゃんは会話を続ける。
「……うん……僕……ちーちゃんの歌が聴けて幸せだよ(ボソッ」
「……?どうしたなのです〜〜⁈ そんな顔を真っ赤にして、涙目になって…大丈夫なのです? 小太郎さんはもうすぐ目が醒めるなのです!!だ . か . ら. そんな心配いらないなのです!ちーといい子に待ってるなのです 」
「うん…僕は大丈夫!それよりショコラはこんな時に、何処に行ったんだ?さっきから見当たらないな 」
「ショコラちゃんは、’‘ おかたづけ’‘ で忙しいなのです!小太郎さんが目覚めるまでにくると思うなのです 〜今回の’‘ おかたづけ’‘ は大変なのです〜」
「そうなんだ…僕、まだ’‘ おかたづけ’‘ したことないから、だから…」
「ちーちゃん…!!!’‘ おかたづけ’‘の話……言っちゃ……だめ……聞かれる…… 」
ショコラちゃん……?ショコラちゃんの優しい声が聞こえる。
’‘ おかたづけ’‘ ってなんの話を ’‘ みんな ’‘ してるんだ……。
それより俺はどうして体が動かないんだ……?
早く起きなきゃ……みんなが心配してる……のか ?
「うわわ〜!!ショコラちゃんいつの間に、後ろに居たなのです〜びっくりさせないで欲しいなのです!!ぷんぷん!!」
「今……帰って……きたの……もうすぐ小太郎さん……意識戻るから……この蜜で動くから……」
そう言ってショコラちゃんは俺の口元に甘い雫を垂らした。
ほんのり甘い雫は、口に触れた瞬間。全身に電流が駆け巡るような。
命の源を注がれたような……そんな温かなエネルギーを感じた。
「小太郎さん……目を…開けて……」
目を開けると綺麗な瞳に、今にも涙が溢れそうなショコラちゃんの姿と、いつになく静かに黙って心配そうに俺の顔を見ているちーちゃんがいた。
俺は、ふらふらになりながらも重い体を起こすと、ちーちゃんもショコラちゃんも緊張の糸が切れたのか、右側からちーちゃんが、左側からはショコラちゃんが俺に飛びつく様に抱きついてきて、俺は支え切れずに後ろに倒れこんだ。
「イテテてって……二人ともそんな飛びついたら痛いだろ?……」
そう言う俺の声を全く聞いてない様にちーちゃんが騒ぐ。
「あぁぁぁぁあ!!!小太郎さんの目が空いたなのです!!小太郎さん大丈夫なのです?ちーはとってもと〜っても心配したなのです!なので一番心配していたちーの事を真っ先に ぎゅー って抱きしめてくださいなのです!!」
そう言い左側にいる、ショコラちゃんを追い出そうと押すがショコラちゃんも負けじと
「私……小太郎さんの為に……一番頑張った……だから小太郎さんから……抱きしめて貰うのは……私が先……」
「ダメなのです!!ちーが‘’りんちゃん‘’ とずーっと一緒に待ってたなのです!だ か ら !!ちーが小太郎さんにぎゅーして貰うなのです〜!!」
「……私も……頑張った……から……」
俺の上で、揉める二人をなだめる様に二人の頭に手を置き
「ストーップ!!!!みんな……俺…よく分かんないんだけど……なんか心配かけてごめんな…」
そう言って心配そうに見つめる二人の頭を撫でた。
二人の頭を撫でていたら、胸が締め付けられる様に苦しくなり、それがどうしてなのか俺にはわからないが涙が出た。
苦しくて苦しくて切なくて……。
その理由が俺には分からないが、大切な‘’ 何か ‘’を失った様な
そんな気持ちで俺は泣いた。
自分の無意識の罪を洗い流す様に……深く……。
しばらく経って俺の真横にある大量のフルーツから声が聞こえた。
「おいおい!!僕が来たんだし、男なら泣いちゃダメだぞ!小太郎!!」
真っ赤なポニーテールが特徴的でスレンダーな体の手のひらサイズの女の子がフルーツの上に立っていた。
「君は…誰?」
「やーっと話せる…安心したぞ!!僕は、シュガープロジェクト第4案内人の林檎だ。気軽にりんごと呼んでくれよな!」
「りんちゃんはとーってもいい子なのです!シュガーキッチンのアイドルであるちーの個人ファンクラブ。「ひめひめちーちゃん」の会員ナンバー1番なのですよー」
「おい!ちーちゃん!それははずかしい……から言うな……よな?」
「りんごちゃん……ちーちゃんが……好き……」
「おい!!!ショコラもそう言うこと言うなよな!!小太郎に誤解されるだろ?」
「もう〜!!!やめてくれぇぇぇええ!!!」
顔を真っ赤にしてあたふたする‘’ りんご ‘’ をよそにからかう二人。
笑顔が絶えないそんな雰囲気に、いつものみんなだという安心感と共に
俺は心の何処かで、‘’ 何か ‘’が足りない様なそんな気がしていた。
続く




