始まりの終わりと温かな光
それは……試練内容……だから……小太郎さん……に……言っちゃダメ
そう申し訳なさそうに俯きながらショコラちゃんは呟いた。
「そんなんじゃわからない!どうして俺にだけ知らされていないことがあるんだ!!」
俺にだけ知らない、シュガープロジェクトの ‘’ ルールの存在‘’ が俺を苦しめていた。
重い空気が流れ誰もが黙る。
そんな中、糸が切れたように苺は笑い出した。
「あはははははははははははははははッ」
「あはははっはっはハハハハハハハははっははははは」
真っ黒の部屋に苺の乾いた笑い声はこだまする。
「苺が悪者になるこんな世界クソ喰らえですぅ」
「こんな結果の決まった裁判なんかぶち壊してやるですぅ」
「みんな壊れて腐って死んじゃえですぅ!!あきゃはっははははははははっは」
明らかに様子のおかしい苺の目は猟奇的で常軌を意したものだった。
とてもいつもの苺とは思えない姿に、俺は只々名前を呼ぶ事しか出来なかった。
「いち……ご?」
そうすると苺が満面の笑みで、上目遣いに俺に笑いかけ
「小太郎しゃん♡大好きですぅ〜苺は小太郎しゃん一筋ですぅ〜」
「でも……ふふふ」
そう話しながら苺は口元を隠し、クスクス笑ったかと思うと、ゴミを見るような見下した目で俺を見て
「小太郎しゃんは浮気ばかりですぅ〜シュガー源老師様の前で、一緒に此処から出ると誓ったのに……」
「第二案内人のショコラちゃんは未だしも、 私が嫌いな ‘’ あの子 ‘’ にまで手を出したですぅ 」
そう言ってちーちゃんの方を、睨む。
……苺は……何もかも知っているのか?俺はちーちゃんと何を……。
俺の胸の引っ掛かりの原因は、思い出せない記憶の中に何かあるのか?
胸の突っかかりがとれない……。
「小太郎しゃん〜!本当に思い出せないのですぅ?それとも……自分にとって都合が悪いから思い出せないのですぅ?あはははははははっはは」
口元だけ笑いながら目は全然笑わない。
「こんな浮気者の小太郎しゃんが許されて、シュガープロジェクトのルールを守っている苺が、悪者扱いされるなんて納得出来ないなのですぅ〜」
苺は満面の笑みを浮かべながら、スカートの中から、ツイスト・タガーを取り出した。
「第一案内人がこんな物を衣類に仕込んでいたとは……見落としていた……わたくしは検事失格です」
白がすかさず、ツイスト・タガーを取り上げようとするが苺はツイスト・タガーを振り回し、白の腕を刺す。
その場にうずくまる白。
黒子の悲鳴が鳴り響く。
混沌とした状況の中
「あははははははは…苺はもうすぐ消えるですぅ♡その前に……小太郎しゃんの記憶に焼き付けて忘れられないように……いつでも小太郎しゃんのすく側にいるですぅ♡」
「これが小太郎しゃんの選んだ結果ですぅあはははあはははっははははははは」
自分の喉にツイスト・タガーを突きつける。
「永遠に小太郎しゃんは私のモノですぅ♡愛してますですぅ」
「苦しまないでですぅ〜直ぐに会えるでですぅ」
「い…いち…ご…やめ…」
俺が止める間もなく
「 お 前 が 悪 い 」
ズブッん グッチャ
ツイスト・タガーで自分の首を刺した。
「プレイヤー佐藤小太郎!!!見てはダメです!!」
そんな白の声も俺には届かなかった。
目の前の惨劇。
血に染まる苺のワンピース。
満面の笑みを浮かべたままじっと俺を見て
苺は首に刺さったツイスト・タガーを抜き、何度も何度も頭に刺した。
「やめ……やめてくれ……もう…」
そう呟くと ‘’ 苺だったモノ‘’ はその場に崩れ落ちた。
何もかも俺が悪い。
狂いそうな頭の中には、笑いながら何度も何度も突き刺す苺の顔が浮かんでいた。
「あはははははははは…俺が…俺のせい?……俺が俺が……俺が苺を殺した?」
俺は徐に立ち上がり、苺だったモノに近づくと後頭部に激しい痛みを、感じてその場に倒れこんだ。
薄れゆく意識の中、微かに声が聞こえる。
「……全く……計算違い……あ…女……こん…消え方……しやがって……」
「こいつ……には……まだ生きてて……もらわないと……利用……」
「……裁判……終……する…しか……」
____________………………意識が遠のく。
温かい日溜まりのようなものが俺を包む。
優しいミントの香り。
安心するようなそんな心地よい感覚。
_____………小太郎
そんな中誰か、俺の名前を呼ぶ声がする。
「 小 太 郎 」
声は少しずつ大きくなり目を覚ます。
目の前には大きなかまどと大量のフルーツがあった。
続く




