―代償―
授業も終わり、千尋も翔も部活で、俺は一人帰路についていた。
オフィウクスの言葉を頭の中で整理していた。
俺の持っている、球は、何かを代償にすることにより、能力を得れるということだ。
多分、宮本は代償を支払ってサインの能力を得ている。
つまり、宮本に会う日数で俺は、負けた時の代償を考えなければいけない。
「代償って何にすればいいんだ……」
そんなことを考えていると、自宅についていた。
部屋に着くと、俺は部屋のベッドに倒れこんでいた。
どんなに考えても、代償になるようなものは思いつかなかった。
俺は、机の上の写真立てを眺めていた。
「恒平。この前の写真おいておくね」
「いいよ。写真なんておかなくても」
「どうせ、勉強なんてしない机でしょ。飾っておいてもいいでしょ」
「確かに、勉強しないけど……」
そんなやり取りをして机の上は写真立てがいっぱいになっていた。
千尋や翔と撮った写真や小さい頃、父親と母親と一緒に撮った写真。
いろいろな写真を眺めていた。
「いろいろ。あったな」
楽しかったこと、悲しかったこと、つらかったこと、たくさんの思い出だった。
「コンコン」
俺の部屋をノックする音がする。
扉が開いて現れたのはいつもの幼馴染の顔だった。部活帰りで制服と竹刀袋を担いでいた。
「恒平チャイム鳴らしても出てこないから」
「ごめん。気づかなかった」
俺は、机の手に取った写真立てを机に戻す。
「なに? 写真見てたの?」
「あぁ」
「思い出に浸っちゃってたの? 恒平らしくない」
「そんなんじゃないよ」
俺は、否定した。
「何かあったの」
千尋は俺を心配そうな顔でのぞき込む。
「大丈夫だよ。丁度この写真の翔がバカやってたことを思い出していただけ」
ははは、と俺は無理やりな笑いを作りだす。
「私じゃ、助けにならないかもしれないけど……」
千尋は続けて、
「相談のるから、一人で抱え込まないでね」
俺は、千尋の言葉に、
「ありがとう」
心からの、ありがとうを送った。
「さて、今日は恒平が夕飯作ってくれる日でしょ?」
「えぇ、もうそんな時間」
「私が帰って来てるってことはもう7時過ぎだよ」
「まだ、準備してなかった……」
「じゃあ、てきぱきと私のために料理してきて下さい」
にこっ、と千尋は、人差し指を下にし、俺をリビングに促す。
「はぁい」
俺は、千尋に感謝しながら、一階に降りて夕飯の支度をした。