―文化祭―
「おい。恒平。看板できたか?」
翔は、俺に話しかける。
「まだだよ」
「おせーぞ。このままだと間に合わないぞ」
俺たちは、星洋祭の準備をしていた。
星洋祭は、学校の商店街中が3日間お祭り騒ぎで学校の一大イベントである。
ちなみに、学校内でも催しが行われ、俺たちも準備に追われていた。
残された時間は残り3日だった。この3日間、授業はなく、文化祭の準備をしていた。
「しかし、なんだよ。この看板」
看板には、こう書かれている。
「メイドと執事と怪獣とホラー喫茶」
「ちょっと、いろいろ混ぜすぎじゃないか」
「お前がいないときにいろいろあったんだよ」
「いろいろって?」
俺は、宮本の一件で少しの間病院に入院し、学校を休んでいた。
そのため、文化祭の出し物の打ち合わせをしていなかった。
「文化際の出し物をみんなで集計をとったんだが、その時に出た案が、メイド喫茶、執事喫茶、お化け屋敷、戦隊もののショー」
「あぁ……」
「そして集計をしたら、同率で収集つかなくなって結局先生が、全部混ぜて提出しちまって今に至るわけだ」
「……」
俺は、先生を不憫に思った。苦渋の選択だっただろう。
「所で、金谷は大丈夫なのか?」
「あ、あぁ……平気だ」
「そうか」
俺は、千尋のいない教室を眺めていた。
※※※
「千尋、準備できた」
「ごめん。まだ」
私は、剣道部の出し物を準備していた。今は、屋台の中のおでん鍋を設置していた。
剣道部はいつも定番で、おでんを文化祭の出店を行っていた。部活の仲間が、
「時間ないからね。あ、そうだ。これ」
と渡されたのは、歴代の部員たちが残していったおでんのレシピだった。
「レシピ通りに作れるか、しっかりと何度も練習しないとね」
部員の仲間が私に、活を入れる。
「そうだね。しっかりとおでんの出汁、つくれるようにならないと」
「一先ず、出汁の練習して、その後具材入れてたしかめよう」
「うん」
私は、おでん鍋に出汁のレシピ通りに入れていく。
「そういえばさ、最近恒平君と会えてないんじゃない?」
「うん。そうだね。クラスの出し物の事もあって忙しいし」
「なに? 向こうの出し物のほうの手伝いの方がよかった?」
「そ、そんなことないよ」
私は、否定する。
「全くもう、ラブラブでなにより」
「ちゃかさないでよ」
「ごめん、ごめん。それじゃ、時間もないし、作ってみようか?」
「うん」
私たちは、おでんの出汁の作成に勤しんだ。
※※※
「キーンコーン、カーンコーン」
終業のチャイムが学校中に鳴り響いた。
「翔。ごめん。少し早くあがってもいいか」
俺は、翔に声をかける。
「おいおい、まだ看板できてないぞ」
「すまん。ちょっと、用事があって」
「……仕方ないな。明日朝早くこいよ。俺も早く来るようにしておくから」
「わかった。すまん……」
「いいよ。じゃーな」
俺は、用事のために荷物を持って、教室を後にした。
※※※
「お疲れ様」
私は、部活の準備が落ち着いて、自分の教室に戻る。
「お疲れ」
翔君が挨拶を返してくれた。
「あれ? 恒平は?」
「今日は、もう帰ったぞ。何か、用事があるようだった」
「そうなんだ……」
私は、答える。
「なんだ、恒平は金谷に挨拶して帰らなかったのか?」
「うん……」
「そうか、まぁ明日もあるし、俺も今日は上がろうと思っていたんだ。帰るか一緒に」
「そうだね」
私は、翔君と一緒に学校を後にした。
※※※