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Zodiac Sign - ゾディアックサイン-  作者: 真野亜駆
第一章 始まりのGemini
10/29

―間幕 宮本唯―

私の、お父さんもお母さんも共働きで、ほとんど家にはいなかった。

一緒に住んでいた、おばあちゃんが私の面倒を見てくれていた。

私は、ひとり遊びをよくしていた。

「……さみしい」

そう、一人だったのが、すごくつらかった。

4歳の頃だった。

「あなたは、だあれ?」

私は、鏡の同じ顔の少女に問いかける。

「……泪」

一言だけ同じ顔の少女は名前を答えた。

それが、私が、泪との初めての出会いだった。

最初はしゃべってはくれなかった泪も少しづつ話しかけてくれるようになった。

「唯おねえちゃん」

「なあに?泪」

「おねえちゃんは好きな人いるの」

「うん。幼稚園のね……」

そんな、他愛のない話を私と泪は一緒に話していた。


小学校の入学前、

「いいなぁ。おねえちゃんは学校かぁ」

「泪。ごめんね」

「ううん。いいの。おねえちゃんいっぱい友達できるといいね」

「ありがとうね。泪。いっぱいできるといいな」

「できるよ、おねえちゃんなら」

「うん」

私は、泪との会話がとても楽しかった。本当に姉妹のように。

小学校の入学式に出た。

その日は、いつも忙しい、お父さんとお母さんが一緒に参加してくれた。

入学式の後、お父さんとお母さんは一緒にレストランに行った。

「入学おめでとう。唯」

「おめでとう」

お父さんも、お母さんも私にお祝いの言葉をかけてくれた。

「ありがとう。お父さん、お母さん」

私は、お子様ランチを食べながら、にこっ、と微笑んだ。

「いつも、一人にしてごめんな、唯」

「ううん。大丈夫」

私は、安心させるためにお父さん、お母さんにいった。

「いつも、泪と一緒にいるから平気だよ」

お父さんもお母さんも「泪」の名前を聞いた途端、顔を青ざめていた。

家に帰った後、お父さんとお母さんはおばあちゃんと言い合いになっていた。

「あの事、唯にはなしたのか」

「いいえ。私は……」

おばあちゃんは、しどろもどろになりながらお父さん達は話していた。



小学校入学の後すぐに、違う、都心の学校へ引っ越すようになった。

お父さんとお母さんは、頻繁に私を病院に連れていくようになった。

髭を生やした年配の病院の先生が、

「学校はどう」

とか、

「お友達はいるの」

とか、他愛もない会話を週に1回話した。


「病院どうだった?」

泪は、心配そうに私に話しかける。

鏡越しの泪に、

「大丈夫だよ」

私は、元気アピールを、泪に向ける。

「あの先生、きらい。」

泪は、病院の先生を嫌悪な声をだす。

「そうかな?」

「うん。何かいやな感じがする」

「気のせいだと思うけど……」

「そうだね。お姉ちゃん。心配かけてごめんね」

「ううん。大丈夫だよ」


その後も、病院に通い続けた。

最初は、他愛のない話であったが、どんどんと話は、泪の話になっていく。

「泪ちゃんは今も、唯ちゃんと話しているのかい?」

「うん。いつも一緒だよ」

「そうかい」

先生は、いつもにこっ、と笑いかける。

そして、甘い飴玉を私に渡した。

私は、つまらない病院の唯一の楽しみでいつも舐めながら

話を聞いていた。


「ただいま」

私は、いつものように家に帰った。

「泪。いる?」

「……」

返事が返ってこない。

「泪―」

「おねえ……ちゃん」

「どうしたの。泪」

「ごめんね。少し、体調が悪いみたい」

「大丈夫?」

「うん。大丈夫。おねえちゃん。一緒に話そう」

「うん」

私は、学校や病院の事をいろいろ話した。


その後も病院に通った。

小学校に通って、ずいぶん経っていた。

「学校は順調かい?」

「うん。友達もできてとてもたのしいよ」

私は、先生にニコニコ話しかける。

「そうかい」

先生は答えた後、続けて、

「どうだい。泪ちゃんは元気かい?」

と訪ねる。

「……泪ちゃんって誰?」

私は、その言葉に反応できなかった。

その後は、病院に通うことはなかった。

学校は順調で、小学校を無事卒業した。


中学校入学前の春休み。

「唯。中学校に行く前に部屋を片づけなさい」

お母さんが私に、命令する。お母さんは仕事を辞めて

専業主婦になっていた。

「はあーい」

私は、気だるそうに部屋の片づけを宣言する。

部屋の片づけをする。

小さい頃のおもちゃを整理していると幼稚園の落書き帳を見つけた。

「わぁ。懐かしい」

私は、思い出に馳せながらページをめくる。

すると、ひとつのページで手を止める。

そのページには、私ともう一人の同じ顔の女の子が一人。

「この子って……」

絵の横のひらがなで書かれた名前を見る。

「一人にはゆいとひらがなで。もう一人にはるいと……」

私は、その名前を見て、その場で倒れた。


気が付くと、私は病院にいた。

お父さん、お母さんが、私を見下ろしながら、

「大丈夫。唯」

「うん。大丈夫」

「よかったよ。部屋を片付けの様子を見ていたら唯が倒れてて、お母さん……」

お母さんが、私の顔に涙を落とす。

「心配かけてごめんね」

「お父さんも心配したぞ」

「ありがとう。お父さん」

私は、お父さん。お母さんに思い切って、

「ねぇ、泪って誰かわかる」

そう伝えようとした時、

「だめ」

私は、誰かからの声で言葉を止めた。

その言葉は、小さい頃聞きなれた声だった。


私は、病院を退院した後、お母さんに聞いた。

「ねえ。お母さん」

「何? 唯」

「私、小さい頃、病院に通っていたことあったよね。私病気だったの」

お母さんは、少し戸惑いながら、

「ううん。病気じゃないよ」

「じゃあ、なんで病院に通っていたの」

お母さんは思い口を開いた。

「あの頃の唯は、私たちが仕事をしていて一人になることが多かった。その時に、唯は空想の友達の事を話すようになっていたの」

「空想の友達?」

「そう。小さい頃はよくあることらしくてイマジナリーフレンドって言われるみたい。けどね小学生になってもその話をよくするから心配になって、お父さんとお母さんは都心の病院に通わせたの」

「そうなんだ……。その子の名前ってもしかして……る」

私がその名前を伝えようとした時、お母さんは、

「その名前は言わないで」

私の言葉を遮った。


私は、部屋にいた。お母さんは体調が悪くなったのか、自分の部屋で少し休むといって自室で休んでいた。

「コンコン」

私の部屋をノックされる。

「はーい」

「父さんだ。少しいいかい」

お父さんが私の部屋にはいってきた。

「どうしたの? お父さん」

「少し、話をしたいんだけどいいかい」

お父さんは神妙な顔をしていた。

「うん」

私は一言告げて、頭を下げる。

「実は、唯が小さい頃、病院に通っていた話なんだが……」

「空想の友達のこと」

「そう、そのことだ。お前も中学生だから話しておかないと思って」

お父さんは重い口を開く。


……。


私は、お兄ちゃんをみつけた夜の高台で電気の付いた街を眺めていた。

「やっと、始まるね」

私は、心を震わせていた。

「もう少しだね。泪」

私は、お兄ちゃんと約束した日を心待ちにしていた。


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