表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハロー1216  作者: エル
28/48

コピー

「あらかじめ断っておくとだね、私は君の知る『先生』ではないんだ」

 どう見ても先生にしか見えない顔で、先生のものにしか聞こえない声で、そんなことを言われた。

「私はね、本物の1215のコピーなんだ。記憶や感情、人格と言ったものをクォーツに写し、それをスペアの頭部に組み込んだもの。それが、ここにいる私だ」

「コピー?けど、人格も記憶も持っているなら、それは先生とは変わらないんじゃあ」

「それは違うよ、私は彼女の知識も記憶も持っているが、いくつもの欠落を抱えている。そもそも、本物とはクォーツのスペックが全然違うんだ。まぁ、有り合わせに急いで詰め込んだものだからそれは仕方ないんだけどね。私にできることは、せいぜい彼女が過去に経験したことを話すくらいのものさ」

 そして、それが自分に課された役目だとも、先生のコピーは語った。

「で、君の後ろで怯えながらこちらの様子を伺っているそのメイドさんが、例のクォーツを組み込んでできた子かい?」

 言われて、プラムはびくっと反応を示した。

 なににそんなに怯えているのか、僕にはいまいち分からない。

「はい、そうです。先生に託されたクォーツを使って作ったのが、このプラムです」

「うん、いい出来だ。随分と技師として腕を磨いたんだね。あれから、うん?そういえばあれからどれくらいの時間が経っているんだい?」

「三年です」

 この先生は、きっと三年の間、ずっとこの場所でスリープ状態だったのだろう。

「三年か。ほぼ教授の予想通りだね」

 僕は驚いた。師匠は僕がプラムを起動してここに来るまでの年月まで予想できていたらしい。つくづく、底の見えない人だ。

「さて、残念ながら、この頭部とクォーツが稼働できる時間には限界があるんだ。僕は、僕の役割を果たさなければならない」

 そう言うと、先生はまじめな顔を僕に向けた。

「なにから聞きたい?」

 僕の答えは、決まっている。

「三年前、僕は先生からあのクォーツを託されました。聞かせてください。あのクォーツの秘密を。師匠は、なにを作ろうとして、そして追われることになったのか」

 先生は片目を瞑って難しそうな顔をする。

「ふむ、まずはそこからか。最初に、シュウ、君は一つ勘違いをしている。それを正さなくてはね」

「勘違い?」

 心当たりは全くない。

「そうとも。あのクォーツはね、教授が作ったものではないよ」

「そんなバカな。あれだけ精巧な物、師匠以外に作れるはずが」

「いいや、事実だとも。そうだね、じゃあそこから話そうか。私が経験したこと。どうやって、あのクォーツを手に入れたのか。それが、全部に繋がっているともいえるしね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ