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ハロー1216  作者: エル
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決闘 幕間2

「遅いなぁジャックの奴」

 店を開けっぱなしでどこをほっつき歩いているのだか。

 あまりにも適当すぎる管理だった。

 これじゃあ店のものを持っていかれたって文句は言えないと思う。

「って言っても、ここにあるのはガラクタばっかりか」

 まさにジャンク屋の名に恥じない、実にジャンクな物ばかりがここには並んでいる。

 本当に価値のあるものは奥の倉庫にしまってあるし、倉庫のカギはジャック自身が持っているのだ。

「……ガラクタ眺めるのも飽きたな」

 工房に残してきたプラムの様子も気になるし、何より今夜の準備がある。

 一度帰った方がいいかもしれない。

「しょうがない、出直すか」

 そう考えて店の外に出ようとした時だった。

 凄い勢いで扉が開き、酷く息を切らせているジャックが入ってきたのは。

「おい、どうしたんだそんなに息を切らせて」

 突然のことに驚きつつも聞くが、ジャックは絞り出すように一言だけ語った。

「プラムちゃんが連れて行かれた」

「え?」

 最初は何を言っているのか分からなかった。

 プラムが、連れて行かれた?

 けれど、呆然とする僕にジャックは鬼気迫る表情で叫んだ。

「組合の奴らだ。衛士で、買い物に出てたプラムちゃんを、攫って」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 そんなことはありえないはずだ。なぜなら。

「プラムには許可のない外出は禁止してるんだよ。そんなはず」

 魔道人形の大原則だ。

 マスターの出した命令には逆らえない。僕は期間も例外条件も設けていなかったからまだ命令は有効のはずだ。

 だけど、本当は分かっていた。

「事実だ。事実あの子は買い物に出て、捕まっちまった」

 プラムは、どこかしら普通じゃない。

「そんな、ばかな。魔道人形がマスターが一度出した正式な命令に逆らえるわけ」

「そんなこと今はどうでもいいだろ!」

 現実逃避の言葉を吐いた僕の胸ぐらを、ジャックは掴んだ。

「連れてった衛士は闘技場で待つって言ってやがったよ!いつもの見せしめさ!お前プラムちゃんがあんな目に逢いそうになってんのにそんな悠長なこと言ってんのかよ!」

「!」

 見せしめ。時々闘技場で催されているという悪趣味な狩り。そんなものにプラムが。

 そうだ。今はプラムの救出が第一だ。それ以外のことなんて、それこそどうでもいい。

 そうあるべきだ。そうすると決めたんだ。

「すまない。すぐに向かう」

「早く行け、いや、少し待て」

 出ようとする僕をジャックが制して、なにやら転がり込むようにカウンターに潜り込むと、すぐに何かをこっちに放った。

「丸腰じゃどうにもなんねえだろ。もってけ。この店で一番いいブツだ」

 受け取って驚く。

 カットラスだ。それもこんな店に転がっているにしてはかなりの上物と言える逸品。

 鞘から抜いて刀身を確かめる。これはいいものだ。頑強で素材も文句なし。

 不安要素があるとしたら僕自身、あまり得意とは言えない部類の武器であることだけ。

 だけど、今はそんなことは言っていられない。

 魔道人形を相手にすることになるかもしれないのだ。素手はまずい。

 魔道人形が相手の場合、素手かそうでないかだけでも雲泥の差がある。

 走るのに邪魔にならないよう帯剣し、錆びついた魔力回路に火を入れる。

「助かる」

 一言礼を告げて、僕は体全体に意識を向ける。

 肺機能、足の筋力共に強化済み。

 もう振り返ることはしなかった。僕は店を出て闘技場に向かって駆ける。


 助けろよ。

 不意に、そんな声が聞こえた気がした。

 助けるさ。例え何が起きようと、プラムだけは絶対に助けて見せる。

 それだけを、ただその意志だけを胸に灯して。


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