序章
窓から差し込む太陽の光、鳴きわめく鶏たち、いつもの時間に今日も俺は起きる。
この生活を初めて一ヶ月、最初のうちは分からないことだらけだったが、慣れればどうってことはない。
口うるさい従者も居なければ、面倒な勉強も無いのだから、むしろこちらの生活の方が快適だ。
だが相変わらず朝は眠くて慣れない。
動物の世話や畑仕事があるから、早く起きなければならないのは分かるが……
「ふあ〜」
大きなあくびをしながら俺は右手で頭を掻こうとした。
その時、硬いトゲのようなものが右手に刺さった。
「痛ってぇ!」
俺の 寝ぼけていた脳内は、その痛みで完璧に覚醒した。
「いっけね、またツノ出てた…」
頭に生えたツノは悪魔の証、上級悪魔は大半が人間の姿をしているが、ツノだけは必ず存在する。
ツノは悪魔の罪を表しているからだ。
ここで生活するにあたって、ツノは魔法で消しているが、寝起きや感情が高ぶるとたびたび魔法が解除される。
いくら元魔王とはいえ魔力を制御できない時くらいはあるのだ。
俺は口早に魔法を詠唱し、頭のツノを消した。
こういう時にやはり自分は悪魔なのだなと思い知らされたりするものだ。
じゃあなぜ悪魔の俺がこうやって人間の真似をしているのかというと長い話になる……のだが、気になる方がもしかしたらいるかもしれないので話しておくとしよう。