特別編・ロードバスターズ×ゼロスト 後編
「こっちなら通れるぞ!」
「待ってくださいよ、破耶さん!?」
ミカノが戸惑いながら付いていく。
「見ろミカノ。扉が有るのだ!」
「はあ……はあ……。走るの速いですよ~破耶さん……」
「すまん。早く夏郷に会いたくてな」
「そりゃあ、アタシだってムロに会いたいですけど」
「きゃっ!?」
ミカノが屈む。
「銃声か!?」
破耶が身を屈めながら歩いていく。
「え……ふぇ!?……破耶さん!?」
「きゃあっ!!」
ミカノが動けずにいる。
「誰なのだ!! 隠れてないで出てこい!!」
破耶が叫ぶと、物陰から人が出てくる。
「肝の据わっている女だな。普通ならアッチの女のように怯えているのが正しい女の在り方だ」
「狙いはなんだ!」
「三カ月前、クラッティスを騒がせた男……ザンとか言ったか。あの男が死んだ今、あの男以上の事を起こそうと思ったんだよ」
「……すまんが、生憎わたしはクラッティスには今日初めて来たのだ。騒動の事もいま聞かされて知ったぞ」
「それは不幸だったな。来て早々……死ぬんだからな!」
男が銃を構える。
「逃げるのがやっとか、なら……」
「イヤだ! 放して!」
男がミカノを捕まえる。
「ミカノ!」
「冬じゃなければ良かったがな」
男がミカノの身体をなぞりながら言う。
「……下衆な……」
「どーとでも言ってろ」
「離してよ!」
ミカノが抵抗する。
「……騒げば撃つ」
「うっ……!?……」
「ミカノ!!」
男がミカノを連れて、近くのエレベーターに乗り込む。
「さあ、イグラズの最期だ」
エレベーターの扉が閉じた。
「上にいったのか……」
エレベーターが止まる。
「屋上か……」
破耶が近くの階段を駆け上がっていった。
※ ※ ※
「イグラズを襲ってどうする気!」
「どうもしないさ」
「どういうことよ!」
「騒いだら撃つと言ったろ?」
(このままじゃ……)
「なんだあ? 男が美少女抱えて銃で脅してる?」
「誰だ」
「お前みたいなヤツに、名乗る名は無い!」
「そうか。なら、ついでに動くな。動いたら女を撃つぞ」
「じゃあ動かない……俺はな」
「?」
男が体勢を崩す。
「このぉぉぉ!!」
ミカノが隙をついて男の股間を蹴る。
「ぐっ!?……」
男が股間を押さえて倒れこむ。
「どうだ! 乙女の攻撃は!」
「後ろからとは卑怯な……」
「女子を人質にとるやつには言われたくないわ!」
破耶が男の背中に座る。
「無事で良かったぞ、ミカノ」
「ありがとう、破耶さん」
ミカノと破耶が見つめあう。
「……あの~……俺も居るんだけど?」
「そうだった。何故お前が居るのだ、新田よ」
「誰かに呼ばれた気がしたんだ。んで気が付いたら見たことのない風景が見渡せる、この屋上に居たんだ」
「なるほどな」
「あの、お二人は知り合いなんですか?」
「うむ。同じ高校に通っているのだ」
「え!? もしかして夏郷さんもですか?」
「無論だ」
「良いなあ~」
「ミカノは通ってないのか?」
「色々と忙しくてね」
「勿体ない。こんな美少女を迎い入れたい高校なんて幾つも有るだろうに」
「痛いぞ! 生徒会長」
「……お前には千景という彼女が居るではないか」
「千景は何か違う」
「浮気者か、お前は! それでも副会長か!」
「いたた……何度も叩くなよ」
「わたしは千景の親友だぞ! もし千景に何かあったら、その時はぁぁ!」
破耶が拳を作る。
「おいおい!? 俺はそんなに軽い男じゃないぜ……俺は千景を愛してる!」
新田が断言した。
「……その言葉、帰ったら千景に言ってやれ。生徒会長命令なのだ」
「ヘイヘイ。まったく、俺のほうが先輩なのに」
「楽しそうですね、高校」
「通えない事情があるのか?」
「馬鹿者。深く訊く奴がおるか!」
「構いませんよ……」
「ミカノ、しかし」
「アタシ……ううん、アタシ達はロードバスターズっていう警察に協力するチームを組んでるんです」
「どんな事件でもか?」
「はい、拒否権はあるんですけど、実際は構わず首を突っ込んでしまって」
「首を突っ込まなければいいんじゃ……」
「それだけじゃないです。アタシ達には大切な恩師が居ました」
「それが?」
「その人は刑事さんでした。だけど、ある事件でアタシ達を庇って……死んでしまいました」
「その刑事の意思を継いでってことか?」
「そうです」
「それは望んでしてるのか?」
「アタシにとって、ロードバスターズは今の生き甲斐ですから」
「なるほどな。生き甲斐、か」
新田が納得した。
「すまないミカノ。新田がズケズケと訊いてしまった」
「いいんですよ。高校は憧れますけど、アタシはもっと貴重な経験をしてきましたから!」
「ウンウン。美少女は笑顔が一番だよ」
「新田あああああ!」
新田を破耶が追いかける。
「あはははは」
二人を見てミカノが笑った。
「……どうなってる!?」
「分からないけど、けど!」
屋上にたどり着いた夏郷は破耶を抱き締めた。
「無事でよかった!!」
「信じていたぞ、夏郷!!」
破耶の表情が更に明るくなる。
「ホントにお似合いだな~」
「ホントだな」
「ムロ、来てくれたんだ!!」
「当たり前だろ?」
「でも、どうして場所が分かったの?」
「あの欠片はザンの側に有ったんだろ? だから欠片はザンの意地が作り出した塊なんじゃないかって考えになってな」
「クラッティスで一番高い建物、クラッティス・タワーの頂にザンは来たかった?」
「さあな……」
ムロがミカノを見る。
「何よ」
「何となく……見ていたいなって」
ムロとミカノが微笑みあった。
「やれやれ。リア充め……」
新田の身体が光だす。
「夏郷。生徒会長。時間みたいだ」
「そうか」
「ご苦労だったな」
「……二人共、冷たすぎない?」
「新田さん、ありがとうございました!」
「ありがとー! ミカノちゃん!」
笑顔を残して新田が戻っていった。
「十四時だけど、昼飯食べるか?」
ムロが言った。
「アタシ、ハンバーガーが良い!」
「わたしはアメリカンドッグが食べたいのだ!」
「夏郷は?」
「……両方かな」
「奇遇だな、オレも同意見だ」
四人は昼食を求めてタワーを降りた。
※ ※ ※
一週間後。
「起きるのだ夏郷!!」
「ん?」
「身体が光っておるのだ!!」
「!?」
夏郷が起き上がり身体を見る。
「俺だけ!?」
「急いで着替えるのだ!」
「おう」
夏郷が着替えている間に破耶がミカノに知らせる。
「夏郷さん!?」
着替え終わった夏郷は一階に降りてきた。
「急にごめんね? ミカノちゃん」
「あっ……あの、ムロを呼んできます」
ミカノが向かいの部屋で寝ていたムロを起こして連れてきた。
「……帰るのか?……」
「そうみたいだ」
「……気を付けて帰ろよ……」
「分かった」
ムロが寝室に戻ろうとする。
「ムロ!! 夏郷さん帰っちゃうんだよ!?」
「……夏郷、また来いよ? 歓迎するぜ」
ムロが寝室に戻った。
「もう!」
「いいんだよ。ムロから別れの言葉を聞けたから」
「夏郷。わたしは一緒ではないらしい」
「なに言ってんだ、ミカノちゃんと、もう少しだけ居られるんだから良かっただろ?」
「それもそうだが」
「……それじゃあ、ミカノちゃん。もう少し破耶を頼むね」
「はい、喜んで!」
夏郷が戻っていった。
「すまぬな。もう少しだけ世話になる」
「破耶さんなら大歓迎です!」
※ ※ ※
夏郷が戻ってから一週間後、破耶も身体が光だした。
「お別れだな」
「寂しくなります」
ミカノが泣き出す。
「泣かないでくれ。わたしも別れは辛いのだ」
破耶も涙を流す。
「うっ……うう……」
「わ……たし……が泣くとは……な」
ミカノと破耶は抱き合って、泣き合った。
「おーい、二人の指輪が光ってるぞ」
「これは!?」
ミカノの指輪が破耶の指輪に光を渡す。
「何が起きてるのだ!?」
破耶の指輪がミカノの指輪に光を渡す。
「赤色が濃くなった!」
「何故、濃くなったのだ!?」
破耶の身体の光が強くなる。
「別れは笑顔でしよう、ミカノ」
「そうですよね! お互い笑顔で!」
ミカノと破耶は互いの指輪を突き合わせる。
「誓おう。また会いに来ると!」
「はい。またいつか……必ず!」
破耶が戻っていった。
「帰っちまったな」
「でも約束したから……また会うって」
「そうだったな」
「ただいま!」
ミカノの両親が旅行から帰ってきた。
「お帰りなさい」
「あら、ムロ君いらっしゃい。お邪魔だった?」
「相変わらず饒舌っすね、オバサンは」
「あらあら……お義母さんでも良いのよ?」
「本当に饒舌っすね」
ムロが照れながら言った。
※ ※ ※
「夏郷、戻ったぞ」
破耶は高校の屋上に居た。
「まさか屋上に飛ばされるとはな。つくづく、わたしは屋上と縁があるのだと思わされる」
破耶は見渡す。
「そう都合よくはないか」
「破耶!」
「夏郷!?」
「戻ってきたんだな」
「ああ」
「……何となく高校の屋上に来てみたくなってな。来てみたら破耶が居た」
「夏郷の顔を見たら、ほっとしたぞ」
夏郷と破耶は屋上からの景色を眺める。
「今頃どうしておるのだろうな……ミカノは」
「元気で居るさ……ムロが傍に居るからな」
破耶が夏郷と手を繋ぐ。
「わたしも夏郷が傍に居れば元気だぞ」
「俺もだよ」
夏郷も破耶の手を握り返した。
※ ※ ※
「クシュン!!」
「どうしたの?」
「誰かが噂してんのかな?」
「ムロの噂なんて誰がするのよ?」
「セリオ、カズマ……夏郷か破耶?」
「誰でも良いんじゃない? 生きてれば!」
「ま、そうだな」
いつもと変わらず、イグラズに晴天が広がっていた。




