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ロードバスターズ  作者: 碧衣玄
異世界からの来訪者編
39/40

特別編・ロードバスターズ×ゼロスト 前編

 イグラズに降った雪は見事に積っていた。


「まさか積るとはな~、完全に嘗めてたぜ」


「でも雪の感触は気持ちいいわよ」


 ミカノがブーツで雪を踏み歩く。


「騒ぎすぎて転ぶなよ」


「平気よっ……!?」


 ミカノが転んでしまった。


「痛たたた……」


「言わんこっちゃない」


 ムロが手を差し出す。


「えへへ」


 ミカノが立ち上がった。


「しかし、こんなに積るとは油断したな」


「雪かきなら手伝ってあげるわよ」


「……それもそうだけど食材がよ」


「自転車には雪は辛いわね……まあウチで食べれば良いだけだけど」


「なんか悪りいよ」


「アタシはアンタの彼女なのよ! 彼氏が困ってたら助けてあげたいわよ!」


「お……おう。ありがたいです」


「分かればよろしい」


 ミカノは雪を手で丸める。


「えい!」


「冷た!?」


 ミカノが投げた雪が、ムロに当たった。


「あはははは当たったわ~」


「……んの~、そりゃ!」


 ムロが雪を投げる。


「当たらないわよ!」


「……しまった!?」


「すみません! アタシが避けたばっかりに」


 ミカノは、ムロが投げた雪が当たってしまった人に頭を下げる。


「いや。俺の注意が足りなかっただけだよ。気にしないでくれ」


「オレも御詫びする! 道端で雪を投げ合ってたのが間違ってた」


「やめてくれ。本当に気にしないで」


「そうだぞ」


 物陰から少女が現れる。


「雪が当たったぐらいで死にはしない」


「貴女は?」


 ミカノが少女に訊く。


「わたしはくれない 破耶はやだ。夏郷かざととは付き合っているぞ」


「〝かざと〟って誰だ?」


「俺が夏郷、飯沼 夏郷だ。本当に気にしないでくれよ!?」


「……しかし夏郷。まさかこっちの世界でも雪が積もっていようとはな」


「雪用の格好で歩いてるときで良かったな」


「「こっちの世界?」」


「信じられないかもしれないが、俺たちは別世界から来たんだ」


「別世界……どうやって?」


「それが今も全然解ってないんだ」


「え!?」


「こっちの世界に来たのも偶然なのだ」


「……それじゃあ、どうやって戻るんですか!?」


「一定の期間が経つと、身体が光だして勝手に戻るのだ」


「それは大変じゃないですか! あの良ければアタシの家に来ませんか? 両親が暫く不在でアタシ一人だけなんで!」


「いくらなんでも世話になる訳にはいかんぞ」


「それに今日会ったばかりの男女を招くのは色々とまずいんじゃ……」


「お二人は信じても大丈夫だと思います。それにどうせムロも来ますし」


「ムロとは誰なのだ?」


「オレがムロ、ムロ・クライムだ。オレも何だかアンタらは信じれる」


「アタシはミカノ、ミカノ・クライスです。遠慮は要りませんから!」


「どうするのだ夏郷?」


「……御言葉に甘えようか」


「うむ。わたしも構わんのだ」


「そうと決まれば早速、立ち話もなんなんで家に行きましょう。すぐそこなんで!」


 四人はミカノの家に向かった。


※ ※ ※


「……これしか無いですけど」


 ミカノがコーヒーを出した。


「ありがとう。頂くよ」


「いい香りだな」


 夏郷と破耶がコーヒーを飲む。


「飲みやすいな!」


「ほう……主張し過ぎない苦味に程よい酸味、香りに負けない濃くもある……ミカノ、君はカフェが出せるんじゃないか?」


「誉めすぎですよ~」


「破耶がコーヒーを誉めるのは珍しいから自信もって良いよ」


「えへへ。嬉しいです!」


 ミカノがエプロンを着けてキッチンに立つ。


「ムロ、気になってるんだが」


「何ですか?」


「ミカノちゃんとは付き合ってるのかい?」


「え……ええ。付き合ってます」


「まったく夏郷は! そういうことは訊いたら迷惑であろう」


「うーん。ただ気になってさ……ただの友達を誰も居ない家に泊めるかなって」


「構いませんよ、別に隠しておくことでもないし」


「よし出来た!」


「何が出来たんだ?」


 ミカノがテーブルにパンケーキを出した。


「いつの間に準備してたのかよ?」


「早く食べたかったからよ。あ、お二人共、口に合うか分かりませんが、良かったら食べてください」


「美味しそうだ」


「どう、ですか?」


「うん美味しいよ!」


「良かったあ」


 ミカノが笑みを浮かべた。


「ほほう。……ムロがミカノに惚れた理由わけが分かったのだ」


 破耶がパンケーキを食べながら言った。


「……むっ!?」


「落ち着いて食べなさいよ」


 ミカノがコーヒーを渡す。


「急な発言に驚いたんだよ」


「んー。ムロの反応が夏郷に似ていて面白いぞ」


「からかわないでくれよ!」


「すまないな。破耶は思ったことをズバズバ言ってしまうことがあってな」


「気にしないでくださいよ夏郷さん。もっとノロケてもバチは当たらないのに、なかなか素直にならないんだもん! いい薬です」


「ミカノちゃんはムロのことが本当に好きなんだな」


「……は、はい」


 ミカノが照れる。


「まあ、わたしも負けないくらい夏郷のことが大好きだがな!」


「素敵です! 破耶さん!」


「ははは……もっと称えてくれても構わんのだ!」


 破耶が誇らしげにしている。


「……夏郷の彼女は凄いな」


「ああ。楽しそうにしている破耶は色々凄いけど、そこも魅力かな」


「お互い様ってことか」


「彼女に言ったら喜ぶんじゃないか?」


「〝今は〟言わないよ」


「そうか」


 ムロがコーヒーを飲み終わり、カップを下げようと立ち上がる。


「そうだ。夏郷、色んな世界を渡ったことがあるのか?」


「あるよ」


「それじゃあ……こういうのを見たことある?」


 ムロがポケットから赤い欠片を取り出した。


「これは?」


「武装石の欠片だと思うんだけど、武装石は透明で赤くはないし……そもそも存在する物は消滅したはずなんだけど」


「武装石っていうのがどういう物かは分からないけど、似た物なら持っているよ」


 夏郷がポケットから赤い欠片を出す。


「ある世界で貰ったんだが、そこの住人の人から〝持ち続けていれば必ず幸と不幸が訪れる〟と言われてな。一応、持ち歩いていたんだ」


「不幸もかよ!?」


 二つの赤い欠片が光だす。


「どうしたの?」


「どうしたのだ?」


 ミカノと破耶も見に来る。


 欠片が光を増す。


「見てられねえ!」


 全員が欠片から目をそらす。


「きゃっ!?」


「何なのだ、指に感触が!?」


 光が消え、ミカノと破耶をムロと夏郷が見る。


「あれ……ミカノ、指のそれって!?」


「破耶、それは?」


 ムロと夏郷は気づいた。


「……綺麗な指輪!!」


「しかも左手の薬指なのだ!!」


 ミカノと破耶がはしゃぐ。


「一体……何が」


「さあ……」


 ムロと夏郷は呆然としていた。


「お! この指輪、光るぞ」


 破耶の指輪が赤く光ると、破耶が光に包まれる。


「何なのだ!?」


「アタシも!?」


 ミカノも光に包まれる。


「ミカノ!」


「破耶!」


「ムロ!」


「夏郷!」


 光に包まれたまま、ミカノと破耶が消えてしまった。


「……消えた……だと」


「何処に消えたんだ!?」


 二人が家中を探し、更に外に出て見渡す。


「夏郷。もしかして元の世界に帰ったとか!?」


「あの感じは違ったよ。もし戻るなら俺も戻るはずだし」


「そうか……」


 ムロが考え込む。


「アテはあるか、ムロ?」


「……夏郷、一緒に来てくれるか?」


「もちろんだ」


「よし、早速出発だ」


「何処に行くんだ?」


「この国、イグラズの首都……クラッティスだ」


 ムロと夏郷が歩き出した。

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