決着
ムロの闇の力とザンの光の力がぶつかり合い、空間に亀裂が入り、遂には大気を震わせていく。
「神に歯向かう愚か者が」
ザンの髪がムロの首に掛かる。
「神なら……早く悪魔を殺してみろよ?」
「望み通りに殺してやろう」
ザンの髪がムロの首を絞め付ける。
「……くっ……うっ……」
「どうだ。首を絞め付けられる苦しさは?」
「…………あ……うぇ……」
「俺は神だ。なら、この苦しみから解放してやる」
ムロの首が更に絞め付けられる。
(……意識が……とおく……に)
「首を折るのは、さっき殺ったな」
(……感覚、身体の感覚……)
「このまま窒息させてしまおう」
ムロの呼吸が止まる。
「所詮は人間だったな」
ムロが地面に落下した。
※ ※ ※
(此処は……)
ムロの意識は真っ白い空間に在った。
(オレはザンに首を絞められて)
(そうか……死んだのか)
ムロの意識は真っ白い空間の更に奥に進んでいく。
(あの世なら色々な人達に会えるかな)
真っ白な空間は光を帯びていた。
(さあて!)
ムロが進み出す。
(あれ? 進まねえ)
身体の感覚は無いが、ムロは誰かに掴まれてる気がした。
(誰だ……)
(何をしておるのかの?)
(……爺……ちゃん!?)
(驚いておるのはこっちじゃよ)
(どういうことだ?)
(お前さんは死んで天国に行こうとしていたんじゃよ)
(ここは天国じゃないのか)
(此処は通り道じゃよ。今なら引き返すことができるぞ?)
(マジかよ!? ……あー、でも……このまま死んでしまってもいいかな)
(なんじゃと!?)
(いろいろあってさ。オレ以外にも……ミカノたちも殺されちまった)
(本当かの!?)
(ああ。だから、もう……)
(じゃがの……。まだ若いんじゃ、生きれるときに生きとかんと後悔するぞい)
(でもよ……オレ)
(お前さんを天国にも地獄にも行かせるわけにはいかんの)
ムロの意識がジンから遠退いていく。
(爺ちゃん!?)
(…………オレ、どうしたら……)
ムロの意識が真っ白い空間から真っ黒い空間に移る。
(……黒い空間!?)
(何をしに来た?)
(……誰だ!)
(久しぶりだな)
(……ガイ、なのか!?)
(覚えていたか)
(此処は何だよ!)
(簡単に言えば地獄への道だ)
(こっちは地獄か)
(こんな所に居るって事は死んだのか?)
(まあな)
(……誰に殺された)
(……ザンだよ)
(やはり生きていたのか!)
(ああ)
(おとなしく殺されてやる気か?)
(皆、殺された……オレにはもう生きる意味が分からないんだ)
(皆か。小僧にとっての〝皆〟は全て殺されたのか)
(?)
(これから先、まだまだ出会いがあるんじゃないのか?)
(……さあ)
(悪いが……地獄には進ませない)
(……ガイ……)
ムロの意識が別の空間に飛ばされる。
(……今度は何処だ)
ムロの意識に拡がるのは、まるで世界の果ての様な空間だった。
(宇宙みたいだ)
(そうか、オレは宇宙になったんだな)
ムロの意識が宇宙を漂う。
(……今ごろ、ザンの奴は……)
(気になるのか?)
(誰だ!?)
(誰、とは失礼だな)
(いや……知らないよ)
(そうか)
(諦めが良いんだな)
(意外にショックを受けていてな)
(んーー、やっぱり知らない)
(知りたいか?)
(焦らされるとな)
(教えよう……我は武装石だ)
(武装石!?)
(主が我を発動してから四年も経つのに、この体たらくとは)
(悪かったよ。分からなくて)
(まあいい)
(てかなんで武装石が喋るんだ? 武装石にされた人達とは、さっき話せたけど)
(それは知らん)
(なんだそりゃ)
(……とにかく主は生きて決着をつけなければならないな)
(無理だよ。オレは死んだんだ)
(死んでないとしたら?)
(……なに言って!?)
(我を使え。そうすれば主は生き返れる)
(デタラメ言うなよ)
(使えば解るさ)
(そこまで言うなら……)
ムロは武装石を意識の中で発動した。
※ ※ ※
(……)
(……うっ……)
ムロが目を開ける。
「……生きてる……のか!?」
ムロは手足を動かす。
「動く。皆は!?」
ムロは辺りを見渡した。
「オレだけか」
「何故、生きてる?」
「!?」
「驚いているのはこちらの方だ」
「神でも倒せない悪魔だぜ?」
「シブトイ悪魔だな。今度こそ殺してやる」
ザンが手をかざす。
《奴の武装石を吸収するんだ》
「……武装石!?」
《それが最短ルートだ》
「……分かった。やってみる」
ムロはザンに立ち向かう。
「神の前では悪魔は無力だ」
「ぐっ」
ムロが吹き飛ばされる。
「首をはねよう」
「今だ!」
ザンが手をかざした瞬間、ムロはテレポートでザンの懐に飛び込む。
「何のつもりだ」
「こういう事だ!」
ムロがザンの心臓と同化している武装石に触れる。
「発動しても、そのまま形が残るのが命取りだったな」
「くっ!?」
ムロがザンの武装石を吸収していく。
「神を……ナメるな!!」
ザンが抵抗する。
「殺れよ! 腕を斬り落とされようが、首をはねられようが……オレは何度でも戻ってくるぞ!!」
ムロがザンに言い放った。
《今だ主よ。我にザンとやらの武装石を併せるんだ》
「神が……神があああ!!」
「神なんか……居るもんか。人間が、神以上の事を起こすからな」
ムロの武装石とザンの武装石が融合した。
《主よ。武装石を発動させるのだ》
「もう、してるぞ?」
《今一度、全ての武装石が融合した我を発動すれば、死んだもの達を生き返らせることが出来る》
「何、言ってんだ!?」
《ザンとやらの命も合わさっている。もちろん他にも理由が有るがな》
「なんだよ?」
《主の寿命を頂くのだ》
「寿命?」
《そうだな……ざっと……1/4程か》
「それで良いのかよ!?」
《武装石を生成するのに多くの若い命が犠牲になってしまった。その命が言っているのだ、〝命を使って〟とな》
「……分かった」
《寿命が惜しくはないのか?》
「何時まで生きられるのか分からないのに、寿命が減る心配なんかしてられないし、そもそも生き返るんなら惜しくないぜ!!」
《面白い男だ》
「そうか?」
《……話はこれぐらいにしておこう。では発動するのだ》
「武装石はどうなるんだ?」
《何の事だ》
「ただの武装石の発動じゃない、だろ?」
《勘が鋭いな》
「よく言われるよ」
《発動したら武装石は消滅する。甦生の代償にな》
「良いのかよ……せっかく自我が持てたのに」
《そもそも武装石などという代物は在ってはならんのだ。この世界には》
「分かった。有りがたく使わせてもらうよ」
「完成形武装石、発動」
ムロが武装石を発動した。イグラズを不思議な光が包み込む。
《肉体が完全に消滅した者や寿命を全うした者、病気等で死した者は、生き返らない》
「……爺ちゃんは無理だし、ポリスさんもアキねーちゃんもガイのおっちゃんも肉体が無いから無理だな……」
《すまないな》
「ミカノ達が生き返る。今のオレには充分すぎる褒美だよ」
《そうか》
武装石が消えていく。
《さらばだ……主よ。我の主が主で良かった》
「オレの武装石が〝あなた〟で良かった。それと……ありがとうな」
ムロの姿が元に戻る。




