ありがとう
(……ミカノ! 死ぬな! ミカノ!)
「……!?……」
魘されたムロが飛び起きた。
「ここは!?」
ムロの視界に白いシーツが入る。
「……病院……なのか」
ベッドから降りようとするが身体が動かない。
「腕と足が凄げえ痛てえ!」
ムロは状況を知るために看護師を呼び出した。
「はい」
「意識を取り戻したんだね」
「……説明してくれ! 状況を知りたいんだ!」
「落ち着きなさい。話すから」
看護師はムロを落ち着かせて話し出した。
「キミは二日前に運び込まれたんだ」
「……オレのほかには!?」
「キミのほかに男の子が二人、女の子が一人、男性が二人、運び込まれたよ」
「全員無事だよな!?」
「……残念だが、男性の一人は心臓を撃ち抜かれて即死だったよ……」
「誰が!?」
「……フルという人だよ」
「そ……んな……!?」
ムロが顔を埋めた。
「大切な人だったのかい?」
「……うっ……う……わぁ……オレの……オレにとって父親のような兄貴のような……うわあ……!!」
ムロが嗚咽をあげながら話した。
「すまないね。医者も全ては治せないから。ただ、キミの怪我を治すことはできる。心のキズは、悲しみは、涙を流して癒せばいい……泣くことは恥ずかしいことではないんだ」
「うわあああ……!!」
ムロの泣き声が病室に響いた。
※ ※ ※
「セリオ!? カズマ!?」
「生きてるかい?」
「よう」
セリオとカズマがムロの病室に来た。
「僕とカズマは銃で撃たれたけど、弾は貫通していたから手術は安易だったらしいよ」
「ミカノは!?」
「集中治療室だ」
「え!?」
「俺たちは手術後、直ぐに意識を取り戻したけど、ミカノは傷が深いらしい」
「傷痕は残るのか!?」
「それは俺も気になって聞いたんだが、完全に傷痕が消えることは無いそうだ」
「……そうか……」
「ミカノはムロを責めないさ。意識が戻ったら、とびっきり笑顔を魅せてくれるはずさ!」
セリオがムロを励ました。
※ ※ ※
3日後。
「意識が戻りました!!」
「そうか!!」
看護師たちが集中治療室に集まり、さまざまな確認をした。
「ミカノちゃん? 病院よ? 分かりますか?」
「は……い」
ミカノが返事をした。
※ ※ ※
「ミカノ!!」
意識を取り戻してから、ミカノは通常の病室に移った。
「ムロ。無事だった……」
「それはこっちの台詞だぞ」
ムロがミカノの頭を撫でた。
「でも、ごめんね。お腹の傷痕、多分消えないって言われちゃった」
「別に気にしないぞ?」
「アタシは気にするよ。ムロに綺麗なお腹を見せられなくなっちゃうんだもん」
「何言ってんだ!?」
ムロが顔を赤らめる。
「……アタシのことが嫌いになっちゃった?」
「傷痕が有るからって、好きな気持ちが無くなるわけがないだろうが」
「面と向かって言われると照れるじゃない」
「……言わせたくせに」
二人が揃って微笑んだ。
「そういえば、フルさんの葬儀が終わってしまったみたいだ……」
「俺たちが入院している間に終わってしまったか」
「お墓参りには行かないとね」
「ああ」
二人がミカノの病室の前で止まる。
「ムロの声がするよ?」
「俺たちが入ったら邪魔者だよな」
「構わないさ」
「セリオ、カズマ」
「なんだいムロ? お邪魔だったかい?」
「邪魔なわけあるかよ!」
「心配かけてごめんね、セリオ、カズマ」
「俺たちに出来ることは心配することぐらいだからな。お安い御用だ」
「ミカノは余計な事は考えずに、しっかり静養するんだよ?」
「いまのアタシに出来る事は静養だからね」
「ムロもだよ? 分かってるかい?」
「おう!」
「まっ、元気そうで何よりだ。退院したら、フルさんの墓参りに行くんだから、さっさと怪我を治そう」
「僕らは病室に戻るね」
「うん。ありがとう」
セリオとカズマは病室を出た。
「さてと。オレも自分の病室に戻るか」
「安静が一番だからね」
「……笑ってくれよ? 」
「え?」
「オレは笑ってる時の、お前が好きだからな」
ミカノに背を向けてムロは言うと病室を出た。
「まったく。みんな辛いハズなのにアタシのために無理しちゃって……」
ミカノは窓を覗く。
「フルさん……」
ミカノが涙を流す。
「必ず、お墓参りに行きます。だから待っててください……必ず皆で行きます」
ミカノが涙を拭った。
「生かしてくれて、ありがとう」
夕陽が窓を照らした。




