独りの旅立ち
「ふん♪ ふん♪ ふっふふーん♪」
「上機嫌だなセリオ」
「僕と趣味が合う帽子が手に入ったからね~」
「あっという間に十四時ね」
ミカノが病院の方角を向く。
「いいんだよ、ミカノ? ムロの所に行っても。刑事さんに事情を話して出発を遅らせてもらえば」
「いいわよ別に。ムロに二度と会えない訳ではあるまいし」
「ミカノが言うなら良いんだけど」
三人が待ち合わせ場所に着くと、刑事が車を停めて待っていた。
「時間ぴったし! もうちょい街を探索しても良かったんだぞ?」
「もう十分、街を満喫しました!」
そう言いながら、セリオが帽子をかぶり直す。
「そうなのか? じゃあ車で家まで送ってやる!」
刑事の車に三人が乗り込み、車は発進した。
※ ※ ※
「四八……四九……五十!」
「いけませんよ! まだ完全に傷口は塞がってないんですから!」
「来てたの!?」
ムロは看護師の目を盗んで腹筋をしていた。
「そうやって無茶をする患者さんを見張るために巡回をしてるんです!」
「オレは平気だよ。それよりも他の患者の心配をしたらどう?」
「わたし以外にも看護師は居ますから安心ですよ」
看護師が胸を張って言った。
「オレ、いつ退院出来るの?」
「そうね? 無茶をしなければ一週間で退院できるはずよ……だから無茶は駄目!」
「分かったよ」
数分後、看護師は病室を出た。
「一週間か……」
※ ※ ※
ミカノ、セリオ、カズマの三人は、夕陽が照らす見慣れた風景を眺めていた。
【とうとう着いたわね】
【言い訳はどうするんだい?】
【旅行で構わないだろう】
三人は、それぞれの家の前から電話でやり取りをしていた。
【そうね。連絡はしてたし、事件に巻き込まれた事は内密にしてくれてるし】
【そこは感謝だね、刑事さんに】
【さあ帰ろう! 我が家へ!】
カズマの声で、一斉に扉を開けた。
※ ※ ※
一週間後。
「もう、決めたから」
「ハッキリ言って無謀だ。退院したばかりで、しかも独りでなんて!」
「この一週間で、何か情報や手がかりは得られたのかよ!」
「……いや何も」
「捜査協力だ」
「?」
「捜査協力なら良いだろポリスさん!」
ムロの瞳が本気を伝える。
「約束してくれ。必ず定時連絡を寄越すこと。決して深追いはしないこと。それから……」
「それから?」
「……生きて帰ることをだ!」
刑事がムロの肩に手を置いた。
「当たり前だぜ!」
ムロが、肩に置かれた手を握りしめた。
「無事を祈る」
「行ってきます!」
ムロが、握っていた手を離した。
(ボウズのやつ、おもいっきり握りやがって)
刑事が背中を見つめる中、ムロは独りで旅に出た。




