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第四章

見付かり難い物


4.変わった子


さっきのお話は何処へ...。

くるっと微笑んでそのまま。


「じゃよろしくね♪」

「...よろしく」


本当に同一人物ですかと疑いたくなる程の変わりよう。

あの真剣な顔付きは本当に何処へみたいな。


そろそろ時間がヤバイと時計に目を向けると案の定。

あと1分...ヤバイと日向の腕を掴んでダッシュ。


息を切らしながらに駆け込みセーフ...。

大人しく席につき机に顔を伏せる。走り過ぎて気持ち悪い。

お願いだから先生遅刻して来てとお祈り。


と思う事も虚しく一番嫌いな数学スタート。


たった50分間...もう2時間くらいやってるように思える。

泣き泣きノートを取りながら日向を見た。空をずーと見詰めている。

現世の勉強はそんなに楽なのでしょうか?疑問系。


ボキッとシャーペンの芯が折れる。綺麗に取られてもいないノートの上をコロコロと。

頬杖をつきながら黒板を見る。

訳の判らない数字や言葉がビッシリ並んでいる。新しく芯を出してノートを取るのに集中。

でも彼はまだ空を見詰めていた。ボーと...。

何を見ているのだろう、空なんか見てて楽しいのかな。


彼を見ている間にチャイムが鳴った。集中していたクラス内が一気に復活。

気を戻したかのように日向は立ち上がった。今まで気が飛んでいたのだろうか。



長い長い今日の生活も終了時刻。

鞄にやたら重たい教科書やノートを詰めて帰宅準備完了。


「美奈帰ろ」

「うん、日向も帰ろうよ」

「うん」


私は美奈を誘って彼女は日向を誘った。

本当に運命変えやがったなコイツ...。


学校から家まではそう遠くはない。美奈もそう。日向は知らない。

何処住んでんだろう。てか住むんだろう。

やはり日向の事を考えると?だけが飛ぶ。疑問が多い、質問してもやっかいだから自分で処理をする。


「じゃあ私は此処で。バイバイ千、日向」

「バイバイー」

「じゃあね」


手を振ってくるっと私達に背を向けて家まであと少しの距離を行く。

さて、私達はもう少し歩く...ん?達...ですか。

色々笑わせてくれるねぇー。最悪だよ。


近くの信号機を渡り、右に曲がってずーと歩いて左に曲がって公園の階段を上がって、はい到着。


横を向けば日向の姿...。


「家何処?」

「千と同じマンション」

「室番は...?」

「403だよ」


あっさり言った。

私と同じマンションで、しかも私の隣のお部屋ですか。

もう苦笑いが止まらない...。


朝無愛想な顔で出たマンションに到着...。

エレベーターに乗り込み12階まで。がたと音を立てて12階で止まる。


自分の家にようやく着いたと溜息を吐く、今日は妙に疲れた。


「じゃあね」

「あっ...」


何か言いたそうだった日向を横目にドアを閉める。

ドサッと肩から鞄が落ちた。


「少しは話し聞いてくれてもいいんじゃない?」

「ひっ日向!あんたどうやって...」

「それは聞かないでね」


シーと人差し指を口の前に持って来て微笑む。

もう呆れて言葉すら見つからない、見つけたくない。もう疲れた。

ソファーに凭れ掛かると日向は笑い始めた...何コイツと私は思う。


「そんなに疲れた?今日一日」

「当たり前でしょ。誰のせいだと思ってんの」

「ごめんネ。けど今日から鍵が見付かるまでは大変かもね」

「上等、見付けるまで頑張る」

「よかった君を選んで...」


微笑んでいる日向を見ていて自然に私も微笑んでいた。

ソファーから立ち上がりベッドに沈む。

座っていいよと言うと恐る恐る腰掛けた。何故恐がる?まぁいいけど。


「日向の探してる物って鍵でしょ?見付かり難くない」

「うん...でも彼女の形見の鍵はすごく特徴的だから見付かれば多分判る筈だよ」

「何かの鍵なの?」

「この箱の鍵」


彼が差し出したのは片手に納まる小さな箱。

確かに鍵穴がある。これがその箱...。


「それはレプリカ。本物は無闇に持ち歩けないから...でもこの鍵穴に合って回ればそれが」

「そう...その日向の恋人の名前は?」

「霧椰...」

「綺麗な名前だね...。逢いたい...その霧椰さんに」

「逢いたい...だからずっと探してる」


日向の瞳は切実だった。可哀想だと思えた。

私が持っている箱に合う鍵がきっとこの何処かに...。

あると思うと何故か悲しくなった。不思議。


「あのさ何で一緒に探す相手に私を選んだの?」

「あのね、千って霧椰に雰囲気が似てるんだ」

「はぁ」

「雰囲気って言うか本当に似てるんだ」


今一つ言いたい事は...鍵を持ってなくてごめんね...みたいな。

その分ちゃんと一緒に探してあげるからね。


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