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第二章

何もない筈なのに...


2.変わった記憶


はっとすれば私はもう学校に着いていた。しかも下駄箱の目の前。

まだあの不思議な男子にぶつかった事しか頭にない。如何したんだ私。

靴を履き替えて長い長い廊下を歩いて職員室へ...朝っぱらから職員室とは。

昨日出しそびれた英語の宿題を提出。今日の授業に時間にでも提出すればいいものを。

挙句の果てに出勤して来た担任に見付かり『これを教室まで...』...あっさり『ハイ』。


積み上げられたノートにプリントに...重たい紙切れをたくさん抱えてこれまた長い階段を上がる。

運悪く、誰一人としてクラスメート及びてか誰もいない。残念。

渋々階段を上り終え教室へと入る。


ザワッと一瞬みんなの行動が止まってまた動き出す...誰でもいいから助けてよ。


「千、おはよっ!」

「お...おはよ...」

「手伝ってあげる、大変だったね」


美奈は何も言わなくても私がしてほしい事を理解してくれる。

いい友達だと何時もながらに関心。机の上にノートとプリントを分けて置いておく。

きっと先生も少しは感心する筈。しなきゃ如何してやろうか。


考えるのも疲れて自分の席へと向かう。窓際。一番いい席。

鞄を横にかけて回りのクラスメートに挨拶をする。

このクラスは一切敬語ナシ。但し先生達の前では普通に敬語。

当たり前だけどクラス内で敬語使われると虫唾が走る。


「おはよう御座います、翠咲さん」


はぁ?誰...?敬語ですか...。

恐る恐る声のする横を向く。

さてこの人は誰でしょう...と頭の中で?が飛び交う。


誰でしょうじゃない、私の真横にいてニコニコ笑顔を振り撒いているのは。


「...君は...」

「千、日向の事忘れたの?」

「え?だってこんな子...」

「酷いな翠咲さん...僕の事忘れちゃった」

「いや...忘れる前に」


知らないしっ!

何で朝ぶつかっただけの子が何食わぬ顔で私の隣に...クラスに馴染んでるの?

訳が判らない、理解不能。

私がいない間に何が...。


「だって敬語を...!」

「冗談だよね日向」

「冗談に決まってるじゃん、千」


微笑んで私の腕を掴んだ。


「ちょと話が」

「えっちょっと待てっ!美奈っ!」

「いってらっしゃい」


いってらっしゃいと手を振る美奈を見詰めながら屋上へ。

もういっそ泣いてやる。


私は今目の前に立っている彼とは今日の朝唯偶然にぶつかっただけの運命。

なのに如何してクラスでは何食わぬ顔で生活しているのか。

昨日は居なかった。私の隣は空席だった。


もしかして知らないのは私だけ?今まで私だけ違う夢でも見てたとか...。


沈黙。彼は口を開いて沈黙を破いた。


「初めまして、翠咲千さん。僕の名前は雅紀日向です」

「......あの...」

「如何して朝ぶつかった見知らぬ子が何食わぬ顔してクラスにいるのって」

「...」


何故それを...。何も言えない。

くすくす笑って言った。


「君以外の人達の記憶をちょっと変えさせてもらったんだ、君だけはちょっと不便かもしれないけどね」




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