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月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第三章 封印城攻略

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細月の導べ


 さてでは封印城攻略、第二夜。

 

 プロミナさんには昨日と同じく封印城の最寄りの町、一部屋押さえたままの宿屋にスポーンしてもらって、町を出てから彼女の耳からにょろりと合流。

 城につくまでの少しの丘陵を二人で進む、その最中にふと、プロミナさんが声を漏らした。


「……あの女」


 それが甘愛(あま)を指す言葉だというのは、さすがに声音で察せられる。

 

「幼馴染 兼 親友って言ってるけど、実際のところどうなの?」


 ぇあー、どう、と聞かれましても。


「配信でたまに聞いてるだけでも、そいつがノソ……ルミナちゃんにべったりなのは伝わってくる。なにかきっかけとかあったのかなって」


 甘愛への純粋な興味、というには声も表情も硬い。まるで敵の弱点を探ろうとしているかのよう。


 残念ながらそれに答えることはできない。

 だって今の私しゃべれないし。


「……なんて、今聞くことじゃないか」


 問うた本人も、次の瞬間には笑っていた。いつもの勝ち気なそれよりも幾分か柔らかい、ふっと脱力するような仕草で。



 ……まっ、実際のところ私と甘愛のあいだに劇的なエピソードなんてないから、仮に喋れたとしてもなにも言えないんだけどねっ。

 

 初めて会ったのは小学一年生の春、たまたま隣の席同士だったから。

 ほかの子たちと比べて妙に、いっそ異様なほどに大人びていた甘愛に、名前がイケてるって理由で話しかけたのがキッカケだったと思う。当時の彼女がどう感じていたかは知らないけど、ともかく私としてはなんだか馬が合う気がして、で、そのまま今に至る、と。


 我ながらびっくりするほど山も谷もない。

 でもいいのだ。初対面のフィーリングってやつを、私はわりと信用しているから。

 それに、こっちの世界ではロマンティックな邂逅を果たせたわけだし。


 ね?


「あひゃっ♡」


 同じく初配信から馬が合ったリスナー第一号さんの脇腹をつつく。これくらいの反応なら情けなかわいくて良いんだけどね。耳から出るときは相変わらず、誤解を招きかねない声を出すのだから困りものだ。


 

 ──とまあ、そういう戯れをする少しのうちに、城の門前のキャンプに到着。

 やはりプレイヤーたちで賑わっていて、そしてやはり私たちの姿にみんなびびっていた。とはいっても、昨日ほどではないけれども。


「……昨夜は“亡霊”と睨み合ってたらしいが……」


「ああ、『汚濁』狩りにきたってのは間違いなさそうだな……」


 昨日の探索の様子はすべて共有していいと、プ鱗隊長に許可は出してある。プロミナさん経由で。というよりも、べつに隠し立てするほどのことは起きなかったという話。私とガーベラのあいだで起きた事象は、私たちにしか認識できていないのだから。

 

 てか一応言っておくけど、私はほかのプレイヤーさんたちと積極的に敵対したいわけじゃないからね? みんなが私を怖がってるってだけで。プ鱗隊長の同行を許したのも同じく、強いてまで拒絶する理由がなかったというだけ。

 逆に言うと、積極的に交流を深めようって気持ちもあんまりないけど。もう少し怖がらずにいてくれると嬉しい、って話。


「──昨日は世話になった」


 んではい、件のプ鱗隊長、今宵もお出ましです。

 表情は、昨日同じシチュで顔を合わせたときよりはほぐれている……のだろうか。どうだろ、あんまりよく分からない。


「その感じ、今日も同行させてくれーってわけ?」


「ああ。差し支えなければ、また勉強させてもらいたい」


 昨日も言っていた気がする、勉強させてもらうというフレーズ。

 プロミナさんいわく、まがりなりにもトップ層である私たちに同行して名をあげたいんじゃないか、あわよくばボス戦とかに参加して──的な意味だろうってさ。実際にはもうちょっと悪しざまな物言いだったけど……さておき、理由としてはありがちかつ納得いくものだ。

 

 ……ぇあー、そのー、なんかあれらしい。東の大陸、触手の化け物と天使が悪目立ちしすぎててほかのプレイヤーがいまいちパッとしない? みたいな問題を抱えてるらしい。だからこそ誰もが名声を欲している、と。

 自分でも多少なり情報収集はしているつもりだけど、その辺の空気感は全然感じ取れていなかった。私自身のこのアンテナ感度の低さも、明 ノソラチャンネルが伸びない理由のひとつなのでは……? とか考えてちょっと凹んだのは内緒。

 

 ……まあ、まあ。なんにせよ、変に込み入った裏があるよりはよほどいい。

 私もプロミナさんも調子乗りがち勢い任せなところがあるから、冷静に堅実に立ち回ってくれる人がいるなら、マイナスにはならないでしょう。プ鱗隊長、良くも悪くも変なことはしないタイプの人って感じらしいし。昨日私たちに同行したことすら、SNSとか見る限りでは“触手の化け物を見張るため”って思われてるっぽい。人徳ってやつですかね。

 

 そもそも私たち、ボス目指すつもり自体とくにない……ってのは、おあいにくだけど。それこそ強いてまで明かす必要のないことだ。お互いほどほどに黙して、ほどほどに利用し合いましょう。


 ってわけでマルのポーーーーズッ!


「寛大なルミナちゃんに感謝することね」


「ああ、恩に着る」


 ……あのね、お二人さんが大仰にやり取りするせいもあると思いますよ? 周りの人たちがちょっと遠巻きなの。いっそ触手()でも振ってみるか。目に入った軽鎧のお姉さんへ向けて、にょろにょろと無害アピール。


「ヒッ……!」


 なにもなかった。私はなにもしてないしお姉さんはなにも言ってない。そういうことで。

 

 よーし城探索がんばるぞー……と、肩で風を切って(肩ないけど)キャンプを突っ切り、城の前まで一直線。

 外門もささっとくぐり、庭園の只中、見上げればまだ城全体がうかがえる位置で止まる。


「……?」


 おそらく不思議そうにしているだろうプ鱗隊長を尻目に、思い描く。

 『暴く月導』のテキスト、そこに籠められた意味を勝手に解釈する。

 

 秘されたものを暴くと書かれていた。

 ステータスという文言はおろか、対象の指定すらないに等しい。ただ純粋に、隠されたものを、月の光が暴き立てるのだと。だから私と甘愛は昨日の夜、もう寝る直前くらいのタイミングで、冗談半分に思いついたのだ。


 ──この城そのものも暴けるのでは?


 なんて。

 東の封印城のランダム転移機能は、城の全容そしてボスへの道筋を秘している。なによりも、甘愛をその内に隠し閉じ込めている。いや後者は個人的なお気持ちだけども。でもとにかく、城それ自体が内部のものを秘匿しているのは間違いない。


 ならばここで、この場所で。

 城全体に対して意識的に、『暴く月導』を使う。


 わざわざ城に入って、転移に悩まされながら彷徨いに彷徨って、それようやく会えるか会えないかというのも運命的ではあるけれど。その運命を待たずして彼女を外に出せるのなら、当然それに越したことはない。


 潮の気配漂う丘陵にそびえる城。言うまでもなく月明かりに照らされる廃墟。条件は満たしている。出力は……知らん。ものは試しだ。


 さあほら、お前が隠しているものを曝け出せ。

 細い月の淡い光は、けれどもたしかに、お前にあまねく降り注いでいるだろう。

 

「…………」


「…………」


 …………


 …………なぁんて、さすがにそんな上手いこと──



 ドッッッカアァァァァァァァァァァンッッッッ!!!!! 



 なんの音ォ!? とか叫ぶ間もなく、封印城が爆発した。


 ……いや、炎はあがっていないから爆発じゃないんだろうけど、ともかく派手に、木っ端微塵に、城そのものが吹き飛んだ。


「…………へぇ、そういうパターンもあるのね」


 びっくりしすぎて逆に冷静になっちゃってるプロミナさんはまだマシなほう。プ鱗隊長は呆然と立ち尽くしてるし、外門を隔てた後ろのほうからは、なんかもう阿鼻叫喚というほかない騒ぎが聞こえてきてる。


 当然、私もびっくり。


「……これが…………まさか、こんな形でお目にかかれるとは……」


 どうにか言語を取り戻したプ鱗隊長のおっしゃる通り。まさかまさかだ。



[戴冠者:『封印巨骸』ヴェグレラの左腕 汚濁侵蝕体 侵度Ⅴ]



 降り注ぐ瓦礫の雨の中。

 地下から突き出し、城を一撃で粉砕した巨大過ぎる左腕が一本、私たちの前に聳え立っていた。



 ……たしかに、隠しているものを曝け出せとは言ったけどさ。

 

 スゥーーーーーッ──


 

 ──お前じゃねぇ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!


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― 新着の感想 ―
無害アピールってもうルミナちゃんたら 三又までにしときなさいなw ホラそんなことしてるから四人目? がハーイって立候補してきたじゃん さあ(ど)つきあいの開始だー
ヴェグレラの左腕「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーーン」 ルミナ&プロミナ「古いわ!!!」
「封印されしエクゾディア」じゃねーかw
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