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月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第三章 封印城攻略

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にぎやか『結わえ草』


 東の封印城、っていうとすごい東のほうにありそうな雰囲気だけど、べつにそういうわけじゃない。

 

 東の大陸にある封印城、ってこと。立地はむしろ東の大陸の西端、ほかの大陸も同じように、その大陸内でもっとも中央海域に近いはしっこに封印城は聳え立っている。

 なにを封印してるかって? そりゃもちろん『汚濁』だ──ってのはつい先日、南の大陸の勇者さんたちが攻略に成功したからこその確定情報。攻略組には感謝ですねぇ。


 で、その勇者さんの功績を受けてほかの大陸でも封印城の攻略がプチブームになりつつあり、ここ数日ガチからエンジョイ勢まで多くのプレイヤーが城に挑んでは返り討ちにあってる、らしい。

 いや、なんか勇者さんたちが城攻略した〜ってくらいの情報はもちろん耳に入ってたけど、甘愛(あま)からのSOSを受けて改めて情報収集した。ってか甘愛がすんごい詳しかった。そりゃそうだ、現状、城に住んでるようなものなんだから。


「──明日から、あたしとルミナちゃんは封印城へ向かうわ」


 そういうわけで、少しのあいだ『ナーナ』と『ノクト』から離れがちになってしまうかもしれない……というようなことを、プロミナさんがネネカさんに説明している。ええはい、ここは『ナーナ』の町は『結わえ草』でございます。


「そっか……お友だちの方も、なんだか大変そうだね……」


 店番を“最近雇った二人の店員さん”に任せつつ、店の裏のスペースで三人、顔を突き合わせている。その二人も会計台から聞き耳立ててる気配がしますけどもね。


「封印城? っていうのはよく分からないけど……頑張ってね、触手さん」


 普段は調薬やらなにやらしてる、独特の匂いが漂う空間で、ネネカさんは微笑みながらそう言ってくれた。

 ……けれどもまあ、アレですね、ちょっとさみしげだったり、複雑そうな色がほんのり滲んでいたりして、申し訳なさと……ぇあー、そのぉー……あの、ちょっと嬉しい気持ちが湧いてきたりなんかしちゃったりして……

 いやほら、私のスポーンの性質上、すぐこっちに戻ってこれますしっ。っていうか毎日顔見せに来ますからっ顔ないけどっ。


「まっ、あたしの飛行能力を以ってすれば、到着まではそうかからないはずよっ」


 対して、プロミナさんは腕を組み得意げな様子だ。

 甘愛とのデート後すぐに事情を説明したところ、葛藤の末に一緒に行くと申し出てくれた。そこにはマジ感謝だ。イカちゃんが甘愛にライバル意識めいたものを抱いてるのは知ってたから、一人で城に向かうつもりだったんだけどねぇ。イカちゃんいわく「直接話すいい機会」だそうで。


 ちなみに天使騒動終結後のプロミナさん、昼間は『ナーナ』の見回りをしたり、山岳でステ上げしたりしてるようで、もうすっかりこの町に帰属している。町のみんなとは話しても良いよ〜って言ってあるし。


「…………それはそうとして」


 ──あ、まずいネネカさんがジェラってる。そういうときの声が出ている。

 表情もますますもにゃっとした感じに。


「やっぱり……あちらの世界でいつでもやり取りできるの……すこしずるい気がします」

 

 こらプロミナさん、勝ち誇った顔しないのっ。表情で煽りよる彼女の太ももを、軽くぺちっとやる。「ぁんっ♡」とか言うな。

 

 たしかに今回のように、必要なことはリアルのほうで共有してはいるけども。しかしなにからなにまで委細漏れなく私の考えていること全てを、ってわけでは当然ない。それは『月の触手』としてのゲーム体験を著しく損なうものだから。

 なんて、プロミナさんにキツめの縛りを課してる私が言えた話かと思わなくもないけど。


 ぇあー、まあその、つまり……決してネネカさんに隠れてこそこそやりとりしてるってわけじゃないんですよと、そういう気持ちを込めて、そっと彼女の手を取る。いくつかの触手で、すべすべさらさらな手を柔く包み込む。

 有線テレパス以降はこういうスキンシップも、私のほうから取れるようになってきた。いやもちろんまだ気恥ずかしいというか、多分にドキドキしちゃいますけれどもね? でもその、ほら、お互いの気持ちが一度筒抜けになっちゃったわけですから、こう、ちょっとくらい勇気を出したってバチは当たらんでしょうよと。

 

「ん、ふふ……ありがとう、ルミナさん」


 なにがどこまで伝わったのか確信は持てずとも、嬉しそうな声と握り返してくる感触だけで幸せいっぱい。ネネカさんの表情からも、もやもやとしたものが薄れていくのが見て取れた。

 同時に横から野太い呻き声が聞こえてきたけど……すまんプロミナさん、私はネネカさん優先触手なのだ……


「…………じゃあ、えっと。聞いていたとは思うけど、二人ともそういうことだから」


 と、いうわけで話も一段落。

 落ち着きを取り戻したネネカさんがお店に繋がる暖簾の向こうへと声をかける。すると──


「──遠くの城にまで、銀色様の威光を知らしめにいかれるのですね……!」


 待ってましたとばかりに顔をのぞかせてきたのは、最近この『結わえ草』に加わった店員さんその一、ラナちゃん十六歳。よくお店に来てくれていた、そばかすがキュートな私のファンだ。へへ。


「──知らしめるのは天使様との繋がり、でしょう」


 続けて新人店員さんその二、元『太陽教団』メンバーのフロウさん。

 ほらあの、プロミナさんとの決闘に立ち会った教団員のうち、唯一『汚濁』とは無関係だった女性。あの直後はひとまず『ナーナ』で保護していたんだけど、教団が壊滅して行き場がなくなっちゃったってことでそのまま町に居付いた。

 ……というよりも、その、なんか私とプロミナさんの有線テレパスを見て“目覚め”ちゃったらしい。本人曰く。あんまりなに言ってるのか分かんないけど、まあ、熱心に働いてくれてるので良いのかなって。


 フロウさんは私と同じバイト的なポジ。

 ラナちゃんはネネカさんの知識と技術を本格的に継ぐことまで視野に入れて。

 シャツにズボンの上からお揃いのエプロンをつけた、『結わえ草』の新しいメンバー二人……なのですが。


「な、なに言ってるんですか、銀色様は店長と仲良しなんですから……!」


「天使様との“アレ”を見ていないからそんな事が言えるのです」


 やいのやいの。

 この二人、五歳くらい年の差があるはずなんだけど、なんというか……“争いは同じレベル同士でしか〜”って言葉が脳裏に浮かんでくる。いっつもこんな感じ。まあ仲悪くはないし、仕事は上手く連携してやってるからいいんだけども。

 ああプロミナさんっ「もっと言ってやりなさい!」とか煽らないのっ。あ、なんかネネカさんの手の力が強くなった。


「ラナちゃん、気持ちはうれしいけど……その、ほどほどに、ね?」


「はいっ……!」


 

 ──『INTO:deep anima』の世界はゲームだから、基本的にNPCのみなさんは最初に設定された役割に沿って行動する。だからこそ少し前までは、『結わえ草』はネネカさんが一人で切り盛りしていた。

 しかしそこはあり得んくらいよくできたゲーム。プレイヤーの介入次第でNPCの行動原理も変化しうる。それこそ『ナーナ』で『月光讃華』なんて教団ができたこととか、ネネカさんがその司教になったこととか。

 で、そうなるとネネカさんも色々やることが増えて手が足りなくなるってんで、お店に携わるNPCも自ずと増えたというわけだ。

 

 こうしていろんな意味で賑やかになった『結わえ草』から離れがちになってしまうのは、少しさみしいけれども。

 しかし他ならぬ甘愛のためですからね。封印城だろうがなんだろうが突撃してやりますよ。


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― 新着の感想 ―
汚濁に汚染されるのと触手プレイの良さに目覚めるの、どっちがマシなんだろうな!
おいおい健全な一般人をどんな沼に落としてんだこの触手はよォーッ! フロウさんもアレで目覚めるとか実は素質あったのか。嬉しくない素質だがな。ここがお月様だったら自分からローパーの群れにダイブしそうで…
触手の百合が封印城にせめてくるぞっ 助けてくれウルトラマン
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