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月の触手は健全に遊びたい 〜魂の姿がアバターに表れるVRゲーム──え、私の魂って触手の化け物なの?〜  作者: にゃー
第二章 灯る信仰

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『太陽教団』本部 2


 はーいというわけで私は今、『太陽教団』本部に来ていまーす。


 ここは……ぇあー、噂に聞く中央神殿ですかね、善良な教団員の皆さんはもう避難しておりまして、遠目にこちらの様子をうかがっておりますねぇー。

 

 耳からにょろにょろべちゃっと這い出てファストトラベルを果たした私と、その起点となったプロミナさん。そんな私たちの前に立っているのは十を越える『汚濁共生体』ども……なんですけども。


「……なんなのだ。我々は一体、なにを見せられているのだ……?」


 なにドン引きしとるんじゃ。おうお前、お前がここでのリーダーか。なぁに(え、こいつらやばぁ……)みたいな顔しとんのじゃ。どう考えたって『汚濁』なんぞに身を差し出してるお前らのほうがヤバいやろがい。

 こっちは焔の天使お姉さんとイケてる美触手のツーショだぞ。もはや宗教画みたいなもんでしょうがよ。


「──フーッ……♡ ッ、フゥーッ……♡」


 ほらプロミナさんも、そんなびくんびくんしてないでなんとか言ってやりなよ。


「…………成程。太陽は月に隷属した、ということか……星外の輩共の、かくも浅ましき勢力争いよな」


「……っ♡ ふぅ……………………太陽は月だった、ただそれだけの話よ」


 おぉー良いね、なんかすごい深そうなやり取り。甘愛(あま)が好きそう。プロミナさんの足腰がまだガクついてるのに目をつぶれば。


「ああ確かに……等しく忌むべき星外の力という意味では、月も太陽もさほど変わりはない……なんにせよこの状況、あの二人がヘマをしたか」


 この場の『汚濁』の中心っぽい、初老男性の声で話す泥モヤ人形は、ここでようやく状況を完全に察した様子。つまりやはり、こいつらの情報共有能力にはラグがある。それを知れたのも大きな成果だ。


「……こうなれば、ここにいる我らに勝ち目は薄い──」


 しかし腐ってもリーダーということか、察すればもう判断も早く。


「──が、しかし足掻かせては貰おうか」

 

 泥モヤのボスは手を掲げて『汚濁』の塊を生じさせ……それを自らひっ被った。


「うわキッショ……」


 プロミナさんが微妙な表情をするのも無理はなかろう。

 ボスおじさんは完全に泥へと溶けて崩れ、それを起点にほかの共生体が一つに寄り集まっているのだから。


 一体一体は大したことのなかった『汚濁』どもが、一塊に混じり溶け合っていく。ごぽごぽと、粘度の高い液体が泡立つような音。ボスだった泥玉は体積を増して膨らみ、そこへ、半端に泥へと還ったほかの『汚濁』どもが次々に結合する。

 

「──我らが目指す在るべき姿。原初の合一。その縮図をここに」

 

 やがて、大きな泥の塊に崩れかけの泥人形を適当にぶっ刺しまくった、みたいな……泥団子の化け物から人の上半身型の突起物がぽこぽこ生えてる、みたいな……真新しさはさほどもないくせに嫌悪感だけはいっちょ前に想起させる、そんなキショいデザインの化け物が、私たちの前に立ちふさがった。


 

[汚濁共生体 泥濘混合形姿 強度Ⅳ]



 ほぁー……強度Ⅳとやららしいけど、今までに見た侵度Ⅳ侵蝕体と同程度とは思わないほうが良さそうだ。でも一方で、侵度Ⅴのヘラジカほどの異様な圧力は感じない。まああっちは素体が戴冠者だったわけだし、さすがにこんなのとは格が違うだろう。

 サイズ的には……縦はプロミナさんの二倍以上、横もそれ相応にでっぷりずんぐりむっくりって感じ。マジでデカい悪趣味泥団子だ。


 対する私、今は顕界度Ⅰかつ『月光』も秘匿状態に戻っている。いつもの『月の触手』。プロミナさんは看破魔術を私にも当ててくれてるけど、今回は秘匿が暴かれる気配もない。

 

 え、なに、昼間でその状態なのに『暴く月導』使えるのかって? 使えるんだなぁそれが。私も気付きを得たのだよ。月は常にそこに在るという気付きをね。さすがにフルパワーとはいかずとも、昼もなく夜もなくできることは、決して少なくないのだと。

 見たまえよほら、白昼の晴れ空にだって月明かりは射しているじゃないか。


 つまりなにが言いたいかって、負ける気がしないって話。怒ってるからねっ。


 先ほどの二人の共生体に対しては、ネネカさんの『月光魔術』でもって“『ナーナ』は自衛能力を身に着けつつある”と示した。

 そして今この場、この醜い泥の化け物に対しては、“『ナーナ』と『ノクト』に害を及ぼせば『月の触手』が報復に来る”と知らしめてやる。ぶっ倒されたあとで精々、情報を共有するがいい。

 

 ……まあ、プロミナさんにも手伝ってもらいつつなんですけどねー。


 それにほら、ネネカさんを置いてきてしまったし。さっさと倒して『ナーナ』に戻ろう。帰りはそのぉ、ネネカさんに植え付けた『月輪草』でぇ……!


「……この際、もうなんでもいいわ。とにかくひとまずぶっ潰すッ!」


 おっとプロミナさん的にも、今まで自分を欺いていた偽信者どもはやはり許せないみたい。爆炎を足と背から惜しみなく噴き出し、彼女は空へと舞い上がっていった。そうここは天へと開けた太陽神殿。太陽の擬似天使にとってはなんの窮屈さもあるまいて!


「ふん、忌々しき『陽焔魔じゅ──ぬぉぉ!?」


 そしてそして! ここは屋外であると同時に建造物内でもある! つまり柱やら調度品やら祭壇やらなにやら、フックできそうなものはいくらでもあるってわけよ!


「く……『月の触手』……!」


 そしてそしてそしてェ! 『泥濘混合形姿』だかなんだか知らんが全身からそんなに人型(でっぱり)なんぞ生やしよってからに、私にインファイトしろって言ってるようなもんだぞ愚か者めがァ!!


 接近してェ! 張り付いてェ! 前、上、左に飛び跳ねてェ! 触手鞭で手近な人型の顔面を引っ叩ァくッ!!


「ええいちょこまかと鬱陶しい……!」


 ……ってもまあ、私以上に不定形なぶよぶよってことで、さすがに打撃は通りが悪いんだけども。そのかわりに、こいつ自身はほとんどその場から動けないっぽい。

 生えてる泥人形のほうはといえば、個々の意識は一応まだ残っているらしく。こちらが掴んで利用できるのと同じく、あちらも私を捕らえようと一つ一つが蠢き手を伸ばしてくる。

 だもので調子に乗りつつも慎重に、隙を晒さないように立ち回らなきゃならず、倒すの地味に時間がかかりそう──


 ──なぁんて、私ひとりだったらなァ!


「──ラァッ焼き切れろォッ!!」 


「ぐ、ぅ……!」


 上空から高速で飛来したプロミナさんが、私を掴もうと躍起になっていた泥人形の一つをぶった切った。ジュッとキレの良い音を鳴らして、人型の胴が泥団子と泣き別れ。


 大理石の床に落ちたそれは、再生することも本体と再合流することもなく溶けて消えていく。

 どうやら、混合形姿とか言っても完全に一つになってるわけじゃなさそうだ。


「ちぃ……やはりこの程度では、厳しいか……ッ」


 怨嗟と諦念の入り混じるくぐもった声が、泥団子から漏れてくる。 

 そもそもこいつらは正体を隠して活動していた個体。元の戦闘能力自体がさほど高くない可能性もある。そんなんが下手に融合したところで私とプロミナさんに勝てる道理もなし。


 私が貼り付いて気を引き、プロミナさんが高速突進と焔剣で確実に相手の体を削ぐ。プロミナさんに気を取られ過ぎれば、今度は逆に私が『月光波』で同じことをする。それを幾度も繰り返し、泥人形を削ぎ落としていく。


「く、そ……がぁッ……!」


 やがて気がついたときには、泥団子with泥人形ズはただのデカい泥団子に成り下がっていた。


「はいぃトドメェッ!! …………は、あの、もし良ければ、こう、連携技みたいな感じでいきたいなぁって……っ♡」


 がめついなプロミナさん。いや良いけども。


 実際、泥人形という手足を失ったこの泥団子野郎は今、ろくに動けないくせに物理耐性だけは高いとかいう派手に一撃ぶち当てるのに丁度良いマトと化している。タンブルウィード走法を会得しておくんだったなァ『汚濁』のアホめが!!

 

「──っしゃァいくわよッッ!!」


 ってわけで私のマルのポーズに大興奮なプロミナさん、これまで以上に高く飛び上がり、大きく旋回して距離を稼いでいく。直線での突進、その加速を最大のものにするために。

 

 逃れ得ぬ死を空に視てか、『汚濁共生体』は身を震わせている。

 

「……クッ……! 我ら滅びれども、それは『汚濁』への回帰に過ぎない……! 世の原初へと、我らは立ち返るのみ……!」


 確信ではなく祈り。そんなふうに聞こえる叫びが、この泥団子野郎の最期の言葉だった。


「──オォオオッラァァアアアアッッッ!!!」


 焔の天使が最高速で突撃。

 この質量の敵を大きく後ずさらせるほどの勢いで、焔剣を深々と突き立て。


「『陽焔反応(プロミナリアクター)! ──放射熱風(ソルフレア)』ァ!!」


 さらに第二撃、密着状態から派手に自爆。


「けほっ……さあ──やっちゃってッ!!」

 

 大きく抉れた泥団子の腹に第三撃──私が飛び込む。

 もはやクレーターのようになったそこへ触手を当て、三重『月光波』。今日は満月、衝撃力は十二分。


「────ッッッ!!!」

 

 そうすればほら。

 内側から弾け跳ぶ形で、泥団子野郎は爆散した。

 


「……くたばったら綺麗に消えるのだけは、こいつらの良いところね」


 べっちゃり飛び散った『汚濁』片がそのまま溶けてなくなって、神殿は陽光の映える真っ白空間へと元通り……いやあっちゃこっちゃ砕けたりはしてますけどもね。そこはまあしょうがないということで。


 砕けた大理石の床を踏んで、プロミナさんが近寄ってくる。光輪も焔もない、そのまんまの姿で。


「ノソ……つ……ル、ルミナちゃんっ。あたしたちその、けっこう良い感じだったわよね? ね?」


 言葉は交わさずとも、二人で息を合わせて戦えた。それはさっき有線テレパスで繋がったからか、それとも私と彼女がノソラとイカちゃんだからか。分からないけども、まあ、気分は良かった。だからはい、マルのポーズ。


「……びぇへへ……」


 すんごいだらしない顔で笑うプロミナさんに、配信見てるときのイカちゃんもこんな感じなのかなぁなんて思ったりした。




 ──と、まあそんな感じで、本件は無事解決。

 あとはノソラとしてイカちゃんをどうするお仕置きするかとか、その辺を考えるだけ〜……なぁんて気分でいたのだけども。

 立て続けに色々ありすぎて私も、そしてプロミナさんもすっかり忘れてしまっていたのだ。


 

 ……この一連の出来事、プロミナさん視点でずっと配信されてたってことを。


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― 新着の感想 ―
配信垂れ流し(笑) 大丈夫かな?放送事故になっていないかな? BANされたり? いやカメラの視点しだいか。 しかしこれでたいぶゲームシナリオの重要な部分が周知されるかな?
よくよく考えれば、プレーヤーの情報を覗き見る程度で収まらず、プレーヤーを介して移動できるっつー、いいのかそれ?ってことが起きてんだよな(よくある手法は町に設置されたポータルへの移動 原初の合一が混沌…
>「──我らが目指す在るべき姿。原初の合一。その縮図をここに」 最終目標は星との合一かな? 最後の合一とは、俺自身が星になることだ――
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