告白ってこういうの?
なんとなく気分で15分だけ早く家を出た。
早く到着した教室はいつもよりも人がまばら。あとほんの数分もすればいつもの光景に変わるのだろうけど。
「あれ? 増岡。おはよ、早いね」
「うっす、チョトだけな。ん? あゆみ。髪型変えたのか、いつもと違うじゃん。化粧もか」
こいつは鬼塚あゆみっていうクラスメイトの女子。1年の時も同じクラスだったので2年連続で同クラなたぶん高校で一番仲のいい女の子。
「よく気づいたね。少ししか違わないのに」
「ま、あゆみ以外の女子相手じゃ気づかないかもだけどな。なんとなく気づけたって感じだし」
それだけ仲良くしてもらっているっていう証拠なのかもしれないけど。本当の理由なんて言えないだろ。
「ふーん。それでなんだけど、今日の放課後って暇だったりする?」
「それでってどれでだよ? 放課後か。特に用事はないな。まっすぐに帰宅するだけだよ」
話の繋がりもなく話題がコロッと変わる。髪型や化粧の話はどこ行った? だけどあゆみの話はいつもこうなので気にしてはいけない。真面目に聞いていたら疲れるもんな。
今日はバイトも休みだし、他の友達とも遊ぶ約束はしていないので完全にフリー。うちに帰ってお菓子食いながらダラダラとゲームするくらいか。
「ふーん。そうだ、増岡さぁ。わたしと付き合ってよ」
「おっけ、ぜんぜんいいぞ。それに俺も付き合ってほしいし」
英語の参考書が欲しいんだけど何がいいかわからないんだよな。あゆみは英語が得意だし本屋で選ぶのにアドバイスが欲しい。
「言質取ったからね」
「そこまでいうことなの!?」
やがて教室には他のクラスメイトも続々と登校してきて程なく担任もやってきてSHRが始まる。いつもと変わらない日常の始まりだ。
「では、今日はここまで。日直さん」
「起立、礼、着席」
教師から日直に声がかかり6限目の授業が終わりを告げる。今日のお勤めはこれにてすべて完了。帰りのHRだけこなせば放課後、解放となる。
「さてと、帰るか……おっと」
あゆみに放課後付き合ってくれと言われたいた事を思い出した。今日のあゆみは休み時間などに絡んでくることがなかったな。ま、たまにはそんなこともあるだろう。
「だーりんっ」
「うおっと! びっくりした。あゆみかよ、いきなり何すんだよ」
机の中のものをバッグに仕舞っていたら後ろから首に抱きつかれた。いわゆるあすなろ抱きってやつだ。でも何なんだろうあすなろって? なんて冷静にしている場合じゃなかった。
「いいじゃない、尚弥。もうわたしら恋人同士だし」
「ダーリン呼びといいいきなりの名前呼びといい、いったい恋人同士ってなんだよ? いつから俺たちが恋人になったんだ?」
いくら友だちでもこんなに身体を密着させるのはよろしくないと思われるのだが。首のあたりに柔らかな何かが当たっていてどうにも落ち着かない。
それに何と言っても、そもそも、俺にはあゆみと恋人同士になった認識がない。
「今朝告ったばかりよね?」
「今朝? 今朝は放課後にどっかに付き合ってくれって言われただけだろ」
「違うよ。わたしと付き合ってよって言ったじゃない。そしたら尚弥が、俺も付き合ってほしいって言ってくれたよ」
「…………ちょっと待て。今なんて言った? わたしと付き合って、だと。にじゃなくて……。もしかしてあれが告白だったのか?」
朝の何気ない会話の中に告白を織り交ぜてくるとはまったく想定していなかったのでぜんぜん気づいていなかった。放課後暇かって話と付き合っては別の話だったのかよっ!
そんな、あのタイミングで告られるなんて分かれって方が無理なくね? つっか俺もしっかり付き合ってほしいって言ってるし! 違う意味でだけど!
「それともあれは嘘だったの? あんなににこやかにおっけーしてくれたのに」
「ウソなんかついてねーし。そもそも俺はイヤだなんて一言も言ってない」
「それって、どういう?」
「えっと、付き合うのは今朝言った通りおっけーだよ。お、俺もあゆみのこと、その、好きだし……」
ザワザワザワザワ……
「あっ……」
ここはまだSHRが終わったばかりの教室内。周りにはクラスメイトがほぼ全員いるわけで。
「増岡ぁ、いちゃつくのは他でやってくんないかなぁ~」
「そうだよ、尚弥。お前らがくっつくのはどーでもいいけど、見せつけられるこっちは甘すぎんだよっ! 砂糖ドバドバだっつーの」
友だちに揶揄われてものすごく恥ずかしいけど、それがかえってあゆみと恋人同士になったと実感するわけで。
とりあえず、初デートは参考書を買いに行くことかな。




