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第3話 覚醒(1)

 地球とは別の世界、シャングリラ。


 ラ・フェスタ王国の第一王子こと、アドニス・ラ・フェスタは不思議な夢を見ていた。

 こことはまったく違う場所の草木がたくさんある家で、3歳くらいの小さな男の子が庭で遊んでいる。


「みのり。何をやってるの?」


 みのりと呼ばれた男の子は、石をどかして、下にいた虫を拾うと、嬉しそうに女性に見せた。


「ぎゃーっ! ちょっと! みのり!!

 そんなものを持って……!」


 青ざめる女性は…、この男の子の母親だろうか?

 父親がかけつけて、差し出したてのひらの中を見た。


「へぇ…! ダンゴムシか!」


「ダンゴムシ?? これ、ダンゴムシっていうの?」


「ああ。コイツ、びっくりして丸くなってるだろ?

 でも、しばらく待ってみてみろ」


 父親に言われるがままに、掌のダンゴムシをしばらく観察した。

 すると、丸まった体がモゾモゾと動き出して…。


「うわぁ! すごい!! 戻ったよ!!

 ぼくね、動かないから、死んじゃったかと思ったの!」


 父親は息子の頭を優しくでて微笑ほほえんだ。


「あははっ。コイツはタフだから、そう簡単には死なないさ。まったく、みのりは優しいなぁ!」


「お父さん! もう! そんなもの、さわらせちゃダメでしょう!」


 たしなめる母親に父親はムスッとした顔で反論した。


「母ちゃん。子供はなぁ、自然で遊ぶのが一番なんだぞ。健康っていうの? いいじゃねぇの。ダンゴムシくらいで」


「だって……何だか、気持ち悪くて……」


 母がうつむきながら言うのを見て、みのりは優しく笑った。


「母さん! 大丈夫! ぼく、かまれていないよ!

 だから、ね? 母さん、心配しなくて大丈夫だよ」







 ……遠い昔、なぜかそんな事を体験したような…。

 アドニスは瞳を開けた。

 不思議と視界がハッキリと見える。まだ夜なのに、隅々まで細部を確認することが出来た。

 遠くに見える小枝の葉。その葉脈ようみゃくでさえも、しっかりと一本一本の線を確認できる。


「……僕は…どうしたんだろう?」


 ぼー……っとしていると…。


「うわっ!! な、なんだ!? アレは!?」


 いきなり空が真っ暗になった。

 夜なので元々暗かったのだが、満点の星が徐々に消えていくのが見えたのだ。


「えっ!? 何?! ど…どういう…??」


 アドニスは今まで感じた事のない恐怖に震えた。

 空に丸く開いた大きな穴から、バサバサバサッ! とコウモリの大群が現れた。


 一匹のコウモリがアドニスに襲いかかってきた。

 みつかれる! 


「うわっ!!」


 アドニスが大声をあげて、身を防いだ瞬間。

 ……不思議なことに、コウモリの姿が消えていた。


「……な…なんだったんだ? 何が起こっているんだ?」


『グワッハッハッ!! 我が名は魔王デストゥルイール!

 このシャングリラを暗黒の世界に変えてやろう!

 私の欲望と願望において、世界の破滅はめつを願う!!』


 低く響き渡る声は、姿が一切見えない。

 だが、この日から……変わってしまった。

 世界が。平和な世界が、再び暗黒の世界への始まりを迎えようとしているのだ。


「大変だ!! お父様とお母様に知らせないと!」


 歩き出そうとした時に、足元に何かが当たった。

 それは、先ほどのコウモリであった。

 何故なぜかコウモリは目を丸くしてのびていた。


「あ……」


 アドニスは、そのコウモリを見ると、おもむろにひろいあげて、その頭と耳を優しく指先ででた。


「驚かせちゃったんだね。ごめんね」


 コウモリはバッチリと目を開くと、大きく口を開けてキバをき出しにした。


「お腹がすいてるの? ちょっと待って!

 確か……コウモリって、虫とか好きだったよね。

 えっと、闇の中から現れたコウモリでも……虫は食べるのかな?

 でも、見た感じ、口が小さいから……。

 あまり大きなものは食べるのが大変そう」


 近くに手頃な虫を探すと、アドニスは指をじゅうのように立てて、小さな衝撃波しょうげきはった。

 ここで、一つ断りを入れておこう。衝撃波といっても、アドニスの衝撃波はBB弾のような威力しかないため、全く実践では役に立たない。

 ゆえに、彼の衝撃波は、この世界において魔法としては認定されていないのである。


「キュイッ!!」


 衝撃波に驚いたコウモリが、アドニスから素早く離れて木の影に隠れて逆さまに止まった。


「ごめん! 驚かせて。あの……これ! よかったら、食べて。

 僕を食べるよりは……君の口に合うと思うから…」


 アドニスは、とらえた虫をてのひらに乗せてコウモリに差し出した。

 コウモリは、アドニスに近づいて、その虫を美味おいしそうに食べた。

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