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第1話 ポンコツ王子(2)
アドニスは城から出て行ったあと、たった一人で森の中に入っていった。
ここは安全な世界。何も自分を傷つけるものはいない。
それなのに……。どうしてだろう?
なんだって、こんなに苦しくて胸が痛いのだろう?
魔物と戦ったわけではない。それなのに……。
アドニスは草の上に寝転んで、木々の隙間から見える空を見上げた。
すっかり日が落ちて、満点の星が輝いている。
「僕……ひっく…。なんで……こんなに…ダメなんだろう…? 何にもできなくて…。魔法だって……グスッ」
もう15歳だというのに、どうしてこんなにも心が幼いのか? 自分でも自分がわからない。
「……どうして…涙が出るんだろう? 誰か…教えてよ…」
アドニスは、森の中で瞳を閉じ、そのまま眠ってしまった。