story #003 心が満たされる贈り物(最終話)
週が明けて、クラスでは新しい話題でにぎわっていた。
「見てー、誕生日に貰ったの、最新のゲームソフト!」
「CMで見たよ、これっ」
「でも、ステージ13で、その先に進めなくて、すでに飽きてきている・・・」
みんなの声が真美の耳にも届いていた。同時に違和感を覚えていた。
"欲しかったものを貰って、もう飽きる・・・って"
その日交流時間に聡が真美のそばに、寄ってきた。
何も言わず、一枚の画用紙を差し出し、そこには大きな木の下で笑う真美の絵が描かれていた。隣には聡の姿も描かれていた。
その絵はまるであの日の校舎裏みたいだった。
「これ私?」と真美が聞くと、聡は、こくりと頷き、真美の胸は熱くなった。
言葉より深く届くものが確かにある。
その日帰宅した真美は、その絵を引き出しにしまった。
"この絵は一生捨てない"と呟いた。プレゼントって、値段でも形でもない。
心が満たされたとき、それが本当の本物の"贈り物"になる。
真美はそう、思えた自分がちょっと、誇らしく、ちょっとだけ成長した気がしていた。
・目に見えるプレゼントは、その時のうれしさは、極上・最高であるはず。しかし、いつか壊れたり、劣化したりして、物の使命は終わりを迎えるものも、あるかもしれません。
一方で、心に届いたやさしさや、まなざし、あたたかさ、笑顔、思い出は、壊れることはありません。
それが、「非物品」が持つ、極上の価値と私は思う。
あなたにも、きっと見えないけれど心を育てる"贈り物"があるのではないでしょうか?
最後まで、拝読ありがとうございました。
じゅラン 椿