story #001 プレゼントって何?
八色真美は小学五年生。最近クラスでは「新しいもの」が話題の中心。
「ねえ、見て、今人気のキャラのペンケース!」
「うち、タブレット買ってもらった、塾の動画にも使えるのっ」
「えーーーっ、良いなぁー、スマホもない、タブレットも持ってない・・・」
そんな声に、真美もつい、合わせて、
「もうすぐ誕生日だから、何買ってもらおうかな?」
って言いながら、ちょっと焦っていた。ほんとは何をねだったらいいのかも、分からない。でも、話題のために、「何も持っていない子」にはなりたくなかった。
放課後
今日は交流学習の日
真美たちは特別支援学級の生徒と一緒に活動するその中に、湯棚 聡という男の子がいた。
聡君はお喋りがあまり得意じゃない。いつも静かに、周りを見て観察している、そして、何かの変化を感じるのが敏感で、早いのだ。
ほとんどの時間を画用紙と色鉛筆で過ごしていた。
みんなが風船バレーで盛り上がるけど、聡君は一人静かに絵を描いていた。
その姿はなぜか楽しそうに、真美の瞳には映していた。
「さみしくないのかなぁ?」
そう真美が呟いた。
「聡はね、空気を大事にする子なの、何よりも雰囲気の変化に敏感」
特別支援学級の担当の筒洞先生はそう答えた。
「空気???」真美は首をかしげた。
「それを感じると聡はとってもいい顔になる、楽しい空気、優しい空気、明るい空気・・・」
真美にはちょっと不思議でわからないけど、心にじんわり残る言葉だった。