新大陸の発見
この世界の国は史実の国とは一切関係がありません。
なんか似てても偶然です。
本当です。
信じてください。
統一暦1820年6月
メルト連合王国首都メルトタウン
メルト宮殿
この世界に存在する5つの大国のひとつであり、
世界最強の海軍力を誇るメルト連合王国では緊急の会議が行われていた。
「それで、その新しい島というのは?」
「はい、昨夜、我が海軍の第6艦隊より、未知の小島を発見したとの通信がありました。
さらに、その数時間後には、小島の向こうにかなりの大きさがある島もあるとの報告も上がってきております。」
「未知の島か…確か極東の方は島がたくさんあったはずだ。そのいずれかと間違えた可能性は?」
「コンパスにも魔導測量器にも異変は見当たらなかったとのことで、未知の島であると見てまず間違いないかと。」
「そうか。報告ありがとう。」
「新しい島か。その島は既に他の大国が領有してるということはないのか?」
「それについてですが、少々問題がありまして…」
「問題?」
「どうやら原住民がいるようでして。」
「?それのどこが問題なんだ?原住民など大砲を撃てばたちまちこちらにひれ伏すだろう?」
「いえ、我々が管理しているような他の場所と違い、独自の国家を形成しているようでして。」
「なるほど、国としてまとまるレベルの文明があるということか。」
「そのようです。」
「まぁ、なにはともあれ、まず最初は原住民と接触するところからだろう。
あぁ、あとそれと、これは最重要級の国家機密だ。くれぐれも他国に漏れないようにしろ。
情報を我々だけで秘匿し、この大国間の闘争を有利に進めるのだ。」
統一暦1820年6月
極東海上
メルト連合王国海軍第6艦隊
メルト連合王国の誇る世界最強の海軍、その極東方面での主力が王国海軍第6艦隊である。
そして現在、第6艦隊の旗艦である魔導重装甲艦『プリンス・アトム』の艦橋では、本国への報告のため、発見した島についての詳細な情報共有が行われていた。
「艦長!『ニュークリアス』から通信です!」
『ニュークリアス』はメルト連合王国の最新技術の粋を集めた最新型の測量艦であり、新型の魔導測量器を搭載している艦である。
新しい島を発見したのもこの艦である。
「艦橋に繋げ。」
「はっ。」
ザザザザザ
『こちら『ニュークリアス』、『プリンス・アトム』聞こえているか?オーバー。』
「こちら『プリンス・アトム』、通信良好だ。オーバー。」
『原住民の都市と思われるものを発見した。
現在、双眼鏡を使っての観測を行なっている。オーバー。』
「都市の規模は?オーバー。」
『風車や灯台らしき物が見える。
建築技術や航海技術が高いようだ。オーバー。』
「なに?…原住民程度など簡単に支配できると思ったが…これは少し骨が折れそうだな。オーバー。」
『ん?…………そうか、わかった。』
「何かあったのか?オーバー。」
『どうやら向こうの船がこっちに向かって来ているらしい。かなりの大きさの帆船だ。オーバー。』
「何か機関が積んでるあるようには見えるか?オーバー。」
『いや、純粋な帆船のようだ。接触するべきか?オーバー。』
「…いや、接触はまだいい、反転して艦隊に戻れ。オーバー。」
『了解した。反転する。オーバー。』
『ニュークリアス』が得た情報は『プリンス・アトム』を経て本国へと伝送された。
統一暦1820年6月
メルト連合王国首都メルトタウン
メルト宮殿
「…灯台や風車を持つほどの技術力、か。」
「しかし、『ニュークリアス』に接近した船は帆船だったという話だろう?多少技術力があったとて我が国の敵ではないのではないか?」
「いや、艦船の技術だけを見て決めるのはいささか早計だろう。もしかすると既に銃火器の技術も持っているかもしれない。それに、奴らの魔導技術も分からないしな。」
「確かにそうだが、あまり悠長なこともしてられないぞ。」
「何かあったのか?」
「ノートル共和国の奴らが何やら嗅ぎ回っているようなんだ。」
ノートル共和国はメルト連合王国のあるメルト島の対岸に位置するユーロア大陸西部にある大国の一つであり、メルト連合王国と海峡を挟んだ隣国である。
メルト連合王国と長年に渡って勢力争いを続けているライバルのような国であり、過去にも何度も戦争を起こしている上に、ほとんどの戦争で負けているため、メルト連合王国とは非常に仲が悪い。
国民感情も両国共に最低であり、政府としてもその感情を利用しているため、友好関係が築ける日ははるか遠くになってしまっている。
「またノートルか。本当に厄介な奴らだ。」
「昨日も何人かノートルのスパイを捕まえたという話を聞いたな。」
「我が国のスパイからの情報によればノートル共和国の極東艦隊にも何かしらの動きがあるらしいぞ。」
「あのハイエナどもめ、一刻も早く勢力を確保しなければ、またノートルと戦争になるぞ。」
「いきなり侵略で時間をかけるわけにはいかない。
まず何としても早急に原住民との接触をしなければならない。」
かくしてメルト連合王国政府は極東の原住民との接触を目指し、外交使節団の派遣を決定、使節団は第6艦隊と合流し、『ニュークリアス』の案内のもと、原住民の都市へと向かっていった。
メルト人は、初めて見る人は取り敢えず原住民と呼んで蔑んでおくナチュラル差別スタイルを取っている(自覚なし)。