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少女と伊豆と俺

「願い事…?」


「うん、神様が君の事を気に入ったらしくてね。願い事を聞いてこいーって」


御風は変な女の子のオママゴトだと思っていた。


「んー、えっと…家族はどこかな?」


「私に家族はいないわよ。だって、神だもの」


不思議そうな顔で御風を見詰める少女

御風はオママゴトではないのかもしれないと、思い始めていたのであった。


「じゃあ、名前は?」


「私は、愛願(あいね)って言うの。お兄さんは?」


「俺は、御風蓮」


ここから、不思議な2日間は始まったのである。


実家の家には誰も居ない。母も父も最後は東京で過ごしたいらしい。

あんな治安の悪い場所にいたいなんて、意味がわからなかった。


御風は制服のポケットから実家の鍵を取る。

東京の家の鍵と、実家の家の鍵、そしてもう1つ謎の鍵と、犬のキーホルダーがついている。


御風は実家の家の鍵を探していた。


「お兄さんの家、結構豪邸じゃん。」


愛願は家の外観をじっくりと見つめて、話しかける。

白を基本とした田舎では少し洒落た家だ。


「私、ここに住む!!」


「嗚呼、わかったよ。」


御風は、愛願の言うがままだった。

もうどうなっても、2日後には世界はなくなる。

今更誘拐だと言われても、どこも痛くも痒くもない。


だから俺は、愛願と2日間の最後を共にすることになってしまった。


「おっ、御風じゃん。」


そんな傷心している御風に話しかけたのは、御風の幼なじみである佐藤夕(さとう ゆう)だった。


小学校、中学校を共にした仲間で、中学の時より背が伸び肌は焼け筋肉がついているような気がした。

青いスイカの柄が描かれたTシャツに、半ズボンの姿で中学の時から服のセンスは変わっていないようだ。


「夕じゃん、お前は最後の2日間どうするんだ?」


「おれなんも考えてないんだよなー、みんな東京とかに行っちまったしよぉ。」


夕は頭を抱えるのであった。

だが、御風と愛願を見た瞬間なにかを決めたようで


「お前らが良ければ、最後の2日一緒に過ごそうぜ!」


御風も愛願も承諾し、誰の家に泊まるか決める時に家族が東京にいて1人の御風の家に泊まることになった。


「で、最後の2日どうやって過ごすの?」


夕は色々と提案してくれた。

釣りや、手持ち花火、虫取りなどなど_

あとは、みんなで隕石が落ちる瞬間を見ようと言われた。


なんでだろう?と最初は思っていた。

隕石が落ちる瞬間、それは俺たちの物語の終わりだからだ。そんな瞬間を見たいと普通は思うのだろうか?


そんな思考をしつつ、俺は気にしないことにした。


* * *


ゆっくりと、ゆっくりと佐藤夕の人生は終わりを迎えようとしている。


「この問題を貴方なら!解決できると思うんです。」


おれはそれを手放した。


だって、生きていくとしておれは好きな人と付き合えることはない。

メリットがないのだ、反対にデメリットはいっぱいある。

好きな人に彼女ができる、好きな人が結婚する、好きな人に子供ができる、好きな人がおれ以外の人とキスをする。


「…う…ゆう……夕。」


夕は、ぼーっとしていた。

御風に何回も話しかけられてやっと気がついたのだった。


「ご、ごめん!?気が付かなかった。」


夕は慌てて返事をする。

目の前できょとんとしている。夕は、御風になにかを隠している。そのことに、御風も少しづつ勘づいていた。

いや、前々から夕が嘘をついていることを御風は勘づいていたのかもしれない。ただ、夕を知ろうとしなかった。

知ってしまえば、何か亀裂が入る気がしたからだ。


人は、隠したいことの話は避けがちだ。

主に夕が避けていたのは、恋愛の話と御風の話と勉強の話。


夕はテストの点数を見せたことがない。

噂では、1桁の時もあれば2桁の時もあるらしいけれど御風はそんなのは嘘だと思っていた。


中学生の頃、夕は初めて後ろから2番目窓側の席になった。夕はずっと1番後ろの窓側だったのにだ。


その時、ちょうどテスト返しが1回あった。

数学の小テスト、学年の最高点は100点最低点は21点

夕のテストの点数が鏡を反射して見える。


少し大きめの字で100点と書かれていたそのテスト、俺は疑問に思いつつも、夕にも周りにも言わないことにした。

多分、夕は頭がいいことを隠していると思ったからだ。


「慌てすぎ、ぼーっとしてたから不安になっただけ」


御風は無邪気な笑みをする。

夕はそれを見たあとそっぽを向いた。

御風からは見えないその顔、どんな顔をしているか気になった。


御風はその時初めて、夕の秘密に触れた気がした。


夕の顔を覗き込む、そこには少し顔を赤くした夕がいた。その顔に御風はこれまでに感じたことない感覚を知ることになった。


「夕…まさか、俺の顔になんかついてる!?笑うの堪えてたでしょ!?」


御風は嘘をついた。

人生初ではないけれど、夕に嘘をつくのは初めてだと思う。


「そ、そうだぜ!!御風面白いことするなー」


夕も、気づかれてないと思い。嘘をつく。

そして、どこについてるのーと御風が言い、夕が指摘をする。

御風と笑っているのであった。


それを木陰で見ている少女が1人。


「羨ましい…」

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