もっと悪くなってやる
むかしむかし、日本のどこか山奥の森に、いろいろなどうぶつたちが仲良く暮らすどうぶつ村がありました。
が、どの集団にもかならず性根の悪いものがおります。このどうぶつ村だって例外ではありません。自分より弱い動物たちをいじめるおおかみがいました。
ある日どうぶつ村の会議で、この件が取り上げられました。
しかし村長のさるは言いました。「おおかみだって根はいいやつだ」
副村長のらいおんは言いました。「怨みは怨みによってはしずまらず、ただ怨みを捨てることによってのみしずまる」
もう一匹の副村長のぞうは言いました。「目には目をじゃ村中のものが盲目になってしまう」
会議の結果は、もっとおおかみにもっとやさしくしてやろうというものでした。
おおかみに日々ターゲットにされてるどうぶつたちは しぶしぶうなずきました。
おおかみは木陰にかくれてこの結果を聞いて満面の笑みをうかべました。
「悪いことをすればやさしくしてもらえるのか。なら、もっと悪くなってやる!」
次の日からおおかみのいじめは日に日にエスカレートしていきました。
さすがに嫌気がさした当事者のどうぶつたちはふたたびこの件をどうぶつ村の会議で取り上げました。
会議の結果は、おおかみをどうぶつ村から追放しようというものでした。
その日のうちにおおかみはどうぶつ村のいぬの兵士に引きずられて村から追放されました。
おおかみはどうぶつ村から追放される間際に、声をあらげて叫びました。
「おれは何も悪いことはしていないのに追放される!なら、もっと悪くなってやる!」