サンタクロースのプレゼント
とても寒い冬の夜のことです。
みーちゃんはふと目を覚ましました。
寝室の小さな灯りが、まだ眠っているママの頬を優しいオレンジ色に染めています。
ママを起こさないよう、みーちゃんはそうっと窓辺の椅子に立って外を覗いてみました。静かな空から雪がたくさん落ちてきて、お外の世界を白く染めていました。
「わぁ…」
みーちゃんは大きな目をぱちくりさせました。
あとからあとから、ふわりふわりと雪が落ちてくる様子はいくら見ていても飽きません。みーちゃんがまぁるいほっぺを窓にくっつけて黒とグレーを混ぜたようなお空を一生懸命眺めていると、お空が一瞬キラリと光りました。
みーちゃんがびっくりしている間に、キラキラとしたものはこちらへ近づいてくるではありませんか。
キラキラしたそれは立派なトナカイさんが引く金色の空飛ぶソリで、ソリには赤い服を着た男の人が座っています。
音もなくふわりと地面に着地したソリを見て、みーちゃんは急いで外へと飛び出しました。
「サンタさん!」
サンタさんはみーちゃんに驚くこともなく、にっこり笑って手を振りました。その顔には白いヒゲはなく、髪の毛は黒くてメガネをかけています。
優しそうな顔でしたが、みーちゃんの大好きな絵本のサンタさんとは全然似ていません。みーちゃんはちょっとガッカリしました。
「こんばんは、みーちゃん。これからサンタのおじさんはお仕事で大忙しなんだ。一緒に手伝ってくれるかい?」
「うん!いいよ!」
みーちゃんは元気に言いました。
でもすぐに『ママに言わなくちゃ』と思いましたが、ぐっすり眠ってるママを起こすのは可哀想と思ったので、サンタさんに
「でもママが起きるまでだよ!」と言いました。
サンタさんはにっこり笑ってみーちゃんをソリに乗せると、自分も隣に座ってトナカイの手綱を握りました。
「しゅっぱつ、しんこう」
サンタさんが号令をかけると、4頭のトナカイ達は空を滑るように走り出しました。
冷たい風の中を飛んでいるのに、みーちゃんはちっとも寒くありません。でもサンタさんはブランケットをみーちゃんの肩にかけてくれました。にっこりして「ありがとう」と言うと、サンタさんもにっこりしてくれます。
夜の街は街灯の灯りでキラキラとしていて、まるでママが見せてくれた宝石箱の中みたいでした。白、赤、緑、黄色…たくさんの光が通り過ぎていきます。
サンタさんが大きな白い袋からプレゼントを引き出すたび、白い大きな鳥が飛んできてはプレゼントをくわえてどこかへ降り立っていきます。
みーちゃんは心配になりました。
「サンタさん、みーちゃんのおしごとは?」
サンタさんはそれを聞くとにっこりしました。
「プレゼントが最後の1つになったら、みーちゃんのおうちに届けて欲しいんだ。お願いできるかな」
「うん!わかった!」
みーちゃんは元気にお返事しました。
たくさんのプレゼントを配り、みーちゃんがうとうとし始めた頃。サンタさんがみーちゃんに「これが最後の1つだよ」と白い小さなお手紙を差し出しました。
みーちゃんはその封筒を抱きしめると、サンタさんに笑いかけました。サンタさんはみーちゃんの頭をぎゅっと抱きしめたあと、にっこりしてみーちゃんをよしよししました。
サンタさんはみーちゃんをよいしょっと地面におろし、ソリに乗り込むと手を振りながらお空に消えていってしまいました。
みーちゃんもサンタさんが見えなくなるまで手を振って、封筒を抱きしめたままおうちへ帰り、ぐっすり眠っているママの隣にもぐり込んでぬくぬくと眠りました。
次の朝、みーちゃんは昨日あったことをママに一生懸命に話しました。ママはにこにこしながら聞いてくれました。
でも、みーちゃんが白い封筒を出すとサッと顔色を変えて震える手で封筒を受け取りました。
封筒の中には、銅色の鍵が一本入っていました。
ママはそれを見るとパパの部屋に入り、引き出しの1番上からとても綺麗な箱を取り出して鍵穴にさっきの鍵を差し込みました。
カチャという音と一緒に蓋が開き、ママがそっと蓋を開けると中には「めりーくりすます!ママ、みーちゃんだいすきだよ!」と書かれたクリスマスのカードと、小さな袋が2つ入っていました。
ママへと書かれた袋には白いお花がついたネックレス、みーちゃんへと書かれた袋には白い鳥さんのブローチが入っていました。
ママはブローチをみーちゃんのお洋服につけてくれて、鏡の前で自分でネックレスをつけるとボロボロ大きな涙をこぼしました。
みーちゃんのパパは、ある寒い冬の夜にお空の天国に行ってしまいました。みーちゃんはまだ赤ちゃんでした。
「パパったらママが知らない間にサンタさんになってたのね」とママは笑いました。それから、ネックレスについた白いアザレアの花言葉は『あなたに愛されて幸せ』なんだよと教えてくれたので、みーちゃんは「この鳥さんはみんなにプレゼントを配ってるんだよ」と教えてあげました。
次のクリスマスにまたサンタさんと会えたら、今度はパパって呼んでみようとみーちゃんは思いました。
外はお日様の光で雪がキラキラと輝いています。
メリークリスマス!
どうかあなたが幸せでありますように。