第3話 ドラゴン、激おこぷんぷん丸になる
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時刻は午後5時。俺はリリアと呑む約束をしていた行きつけの居酒屋に向かっていた。
「その、イザカヤって何をするところなんですか?」
「酒を飲んで料理を食べながらワイワイやる場所だ。きっとリーヴァも気に入ると思うぞ」
「お酒ですか…。私も40年くらい前にワインを浴びるほど飲んだ覚えがあります。まあ、実際に浴びたんですけどね」
「意外だな。リーヴァってお酒呑んだことあったのか」
「失礼ですね。私だって子供じゃないですよ。人間でいえばまだピチピチなくらいですけど、もう60歳なんですからね」
「そうか。もう還暦か」
「何ですか!?私はババアじゃなくてロリババアですよ?ルークさん、あんまりイジワルなこと言うと私でも泣きますよ!?」
「悪かった。ほら、もう居酒屋についたぞ」
「ここが居酒屋ですか。なんかもうちょっとギルドの酒場みたいなところだと思ってました」
「多分、もうリリアが予約してた席に居るはずだけど…。あ、いた」
*
あのリリアという少女は私の敵ではなかろうか。ルークさんに対する恋心は一切として表れてないけど、もしかすると本当は好きで、それを表面上に出さないようにしているだけかもしれない。
ぐぬぬ…。それにしても“君”呼びは羨ましい。正直言うと私もしてみたいけど、ルークさんとは主従関係であって、“君”呼びは失礼に…。いや、でもルークさんも私のことを好きって言ってくれてるし、そのくらいは許されるのでは?
座敷に上がり、机のリリアがいる反対側に座ってすぐに、私はこう訊いた。
「リリア…、リリアちゃんって、ルークさんのことが好きなんですか?」
「好き…、か。友達としてはだけど、ルーク君は恋人にするタイプじゃないかな。ただ、酒の趣味が同じで、出身地が互いに近い集落だったから付き合いはまあまあ長いかな」
「それでも、恋愛対象としては好きじゃないんですか?」
「そうだね。たまにこうやって一緒に酒吞み交わすくらいがちょうどいいかな、って思ってたから」
「そう、ですか。なら、ルークさんは有難く私が貰いますね」
「どうぞ。まあ、幸せになれることを祈るよ。私ももしもの時は団長としての権利を少し横暴してサポートさせてもらうよ」
リリアちゃん、いい娘だな。正直、ルークさんを恋愛対象として見てなかったにしても、横取りした感じで何か罪悪感するな…。
*
「…って風でさー、んもホントリーヴァは自慢の俺の相棒だよ~。可愛いったらありゃせんの」
「へぇ~、マジか~。私もそうされたいわ~」
「…どうしてこうなった?」
飲み始めておよそ1時間と40分くらいが経過した頃だろう。2人は完全に酔ってさっきから大声で話している。
ルークさんはさっきから今日1日の私との出来事を自慢しているけど、正直本音で話してるのかどうか分かんない。
そういうことは正気の時に言ってくれるのが一番嬉しいような気がする。私はもう300mlを十数杯飲んだけどまだ酔う感じがない。
早いところ私も酔っぱらって一緒にバカ騒ぎしたい。けど、私には相棒兼彼女としてルークさんとリリアちゃんをしっかり部屋まで送り届ける義務がある。だから、今回は我慢しよう。
「あ~、俺としてはさー、早くリーヴァと結婚して家買って2人暮らししたいわ~。けど2000万ヅロじゃ家買えねぇわ」
「おぉ~、やっぱ結婚したい?男ならそう来なくっちゃなぁ~」
大丈夫、大丈夫ですリーヴァ。よく落ち着いて聞きなさい。これは酔っぱらった勢いで言っているものだから真に受けてはダメです。
でも、ああ…。顔が熱い。頭から本当に湯気出るんじゃないの、これ?やっぱりちょっと真に受けちゃってる!?
「しっかりしてください!!それ本気で言ってるんですか?正気で言ってるんですか?」
「ホンキホンキ~。大好きだよ~」
うう、酔っ払いめ。本気で言ってないのが丸わかりで少し悲しい。こうなったら…。
「<クシープナ>!!」
酔いから覚まして本気かどうか聞いてやる!!
もう怒ったぞ。ヽ(`Д´)ノプンプン
「あれ?さっきまで酔ってたはず…。一体何が?」
「ルークさん?(圧)」
「ひっ…」
「本当に私のことが好きなんですか?本当に結婚したいとか思ってるんですか?」
「なんでそのことを…。あ、俺酔った勢いで言ってた?」
「やっぱり酔った勢いだったんですか!?…で?本当に好きなんですか?」
「す、好きだし、まあ、結婚もいずれしたいとは思ってるけど…」
「じゃあ、今から罰を受けてもらうので、それでしっかり反省してください」
*
俺は今、人生最大のピンチにいるかもしれない。酔った勢いで好きとか結婚したいとかを言ってしまったらしく、それが気に障ったらしい。
罰ということは、俺は今から半殺しにでもされるのだろうか?いや、物騒なドラゴンとは言えどそうはしないか。
だとすれば、リーヴァ以外の女性に近づけなくなる呪い!?そんなもの掛けられたらリリアとも呑めなくなるってことじゃん…。
さて、どうなるのか。俺が恐ろしさのあまり目を瞑っていると…。
左右の頬を手が包んだ。そして、唇に熱いものが押しつけられた。
目を開けると、リーヴァが俺にキスをしていた。
それは、何十秒もの間だったのか、数秒だったのか。
「罰として、私以外の女に恋しないでくださいね?破ったら心中しますよ?」
「ヤンデレかよ。分かった、俺はリーヴァだけを愛するよ」
「約束ですからね」
リーヴァって意外と積極的なんだなぁ。俺はそう思いながら帰る為に料理を食べ終わった皿をまとめ始めた。
続く
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