第一話・邂逅い
初めての拙作なので、どうぞよろしくお願いします。
あなたと邂逅った日から、あなたの姿が僕の頭から離れなくなりました。恋の呪文にかかったかのように、目を閉じても、あなたの面影が浮かんできます。物語の始まりはあの日の出来事から話しましょう。
「ちょっと暑いですね」僕は一人でポツリと呟きました。僕の名前は日出実と申します。とても普通の男子高校生なので、これといったものはありません。黒い短髪に黒縁メガネ。顔はちょっとだるそうにみえるってよく言われます。夏休み中、僕は家の手伝いをしています。僕ん家は花屋さんなので、家のそばに花園があります。そこで、手伝いというのは水やりしたり手入れしたりすることです。
今日もいつもどおり花園の中に入り手伝いをしています。誰もいなかったはずなのに、突然後ろから声をかけられました。
「うぁッ!」呆気に取られてつい声が上擦りました。
「おおげさだな君」振り向くとケラケラと笑っている女の子がひとりいます。
とてもキレイな女子ですねと心の中でそう思いました。透き通るように白い肌に大きな目。茶色い長髪が夏のそよ風の中でサラサラと揺れていることに見惚れましてついじーっと見つめています。
「失礼なやつだな。そんな目でジロジロ見てくるなんて、エッチじゃない?」呆れたような口調でそう言われました。
僕は慌てて目をそらして彼女に対して素直に謝りました。そして、あの子はまたケラケラと笑い出しました。
「ど、どなたでしょうか?」気になりまして疑問を口に出してみました。
「他人の名前を聞く前に自分の名前を言うべきじゃないか?」揶揄うようにそう言われました。
「す、すいません。僕は日出実です。」
「あたしは池内綾花っていうの。あッ!そうだ、ちょっと気になるけど、なんで敬語を?だいたい同い年だろう」池内さんが困惑しているように眉をひそめました。
「口癖というかなんというか、小さい頃からずっとこのままで、僕もよくわかりません」
「変なやつ」池内さんが吹き出してまた笑顔になりました。その笑みは鮮やかなツボミが綻ぶようにとても美しいものでした。
バカにされている気がするけれども、その笑顔を見てどうにも腹が立てません。
「池内さん、どうやって僕ん家に入ったんでしょうか」
「綾花って呼んでも構わないよ」池内さんがさり気なくそう言い出しました。
「えぇッ!」つい大声を出してしまいました。丁度そのときに母親が家から出て僕に問いかけてきます。
「実、誰と喋っていたかしら?」
「池内さんと話していましたのです」僕は池内さんがいるはずの位置を指差しました。
見ると母親が首を傾げました。
驚いたことにそこには誰もいません。ど、ど、どういうことですか!
お読みになっていただけて嬉しいです。次話もお楽しみに。