憶夢
この物語はフィクションです
作者が物語を描きたくなったのでかきました
列車の夢を見ていた、列車の中に居る夢。
そこでは思うように動けない、体がなにかに包まれているから、意識はあるけど呼吸ができないそれに瞼を動かせない、だから暗闇を見つめている、音は聞こえる列車の走る音、風を切る音、車輪が揺れる音。
いつも気づいたらそこにいて気づいたらいつもの布団にいた。
家には誰もいなかった、母が死んだ直後に私は生まれたから、私のせいで死んだから。私のために父は早くに働きに出た。
よく「寂しくはないか」と聞かれた、私が寂しがっていいのか疑問に思った、私は「寂しくない」と答えた、強がっているわけじゃない心から思っていた。
私は生まれる前は母の子宮にできた腫瘍でしかなかった悪性の。でも母は私を10ヵ月近く守っていた。母の声は聞いたことがないが優しい声であったと聞いた。母の顔は写真でしか見たことがない、でも私は母によく似ていると言われた。少し嬉しくなった。
列車の夢を見なくなった、父が私の新しい母になる人を連れてきた日のことだった。列車の夢のかわりに色々な夢を見るようになった、小さい頃の夢、怖い夢、今日に似た夢、脈絡のない混沌とした夢、そのどれも私にとっては新鮮な物だった。私の性格は明るくなった、「表情が表に出るようになったね」と言われるようになった。楽しい日々だけど喪失感を感じていた。
16歳になった日、母の17回忌の日、夢のことを思い出していた。父に列車の夢の話をした、そしたら父が教えてくれた、母は「私を産んだら大きくなるまで一緒に寝てあげたい」と言っていたそうだ、その時私はあれが列車の夢でないことに気づいた、ずっと私は胎内にいた直感的にそう思えた、生まれる前からの母を覚えていた、気づいたら涙が出ていた急なことに一瞬戸惑ったが涙の訳をすぐに悟った初めて母のことで泣いたと思う。受け止めきれない感情を前に嗚咽を抑えきれず声を出してしまった、声を出して泣いたのは何年ぶりのことなんだろう。
私は二回うまれた一回目は母が死んだ日、二回目は母の夢を見なくなった日、父が新しい母を連れくるまで母は夢の中だけでも私を守っていてくれたずっとそばに居てくれていた、もうそこには居ないけど私は母を忘れない。
目が覚めた、気づかずうちにねむっていて痺れる腕に畳の跡がついていた、もう日は沈んだそうだ、今の母が私を夕飯に呼んでいる
濡れた頬を袖で拭って家族のいる所に向かうのだった。
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