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夏の香り、終焉

作者: 夕焼けの蜩


2020年6月29日、今日という日は暑かった。初夏、という言葉が相応しい。


梅雨明けはしていないが、湿度も低く、大好きな夏の訪れを肌で感じた。腕を焼く昼下がりの太陽、時折吹き付ける一陣の風。


普段であれば田舎であることを最大限活用し、田んぼや川へ散策に行き、季節をこの躯で感じるのだが、生憎、テスト期間中である(なら、こんな文を書かずに勉強しろと言うのだが)。


渋々家に入り、冷房を26度に設定して机に向かう。


部屋には冷房の機械音と、調子の外れた時計二つがカチカチ、カチカチとテンポを刻む音と、俺がペンを走らせる音だけ。



そろそろ午後7時を回ろうという所だが、未だ外は明るい。


換気をしようと窓を開ける。蛙の鳴き声と名も知らぬ虫の合唱、生温い風、どこか遠くで草刈りをする音。全てが飛び込んで来た。


ふと空を見ると、入道雲──と呼ぶにはまだ小さい、雲があった。俺の語彙では上手く表現出来ないが、夏の、立体的で影のある雲だ。


俺はノスタルジーな気分になった。理由はないが、あの雲を見るといつもこうだ。多分、俺以外にもそういう人は居るだろう。



今までの、体に保管されていた引き出しの中から、『夏』とタグのついた本が一気に飛び出してくる。


幼い頃に行ったあの海、去年はなかった夏祭り、部活終わり、校舎に響く蝉時雨。


今年も、あの季節がやって来るのか。と楽しみになってしまう。


今年は何をしようか、部活で休みは殆んどないよな、友達を誘って海に行こうか、夏祭りは無さそうだ。残念、彼女を作って、行って見たかったなと。



しかし、同時に夏の終わりを感じる。夏は命の盛りの季節だが、その分死も色濃く影を落とす。


アスファルトの上で焦げ死ぬミミズ、木から落ちる蝉、枯れた朝顔。


そして、夏は終わっていくのだと。



おっと、長く書いてしまった。テスト勉強をしないと。



放っといても夏は来る。


俺は窓を閉めた。


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[良い点] 爽やかに読めました。
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