2話 ローレン男爵令嬢
『国は未来を担う優秀な人材の保護に努める』
そんな理念のもとに建てられた国が管理する学園は、王都の城からそんなに離れていない場所にある。
在籍している生徒は貴族から平民まで幅広い。
とはいってもこの学園に入れるような平民は学園全体の人数から見ればほんの僅かだ。
ウエスト家の屋敷から学園へは少し遠いが、徒歩で登校している。
私が学園に着くとき、他の生徒はほとんどいない時間帯だ。
遅刻なんてしたらあとでお嬢様と男爵からどんな罰があるか分からないので、授業が始まる30分前には必ず着いている。
けれど私は意図的に早く学園に着くように、ローレン令嬢として学園にいる時間を長く取るようにしている。
なぜなら、お屋敷にいる時は使用人として働かなければいけないからだ。
私はバックの中から図書館で借りている本を出し、前回の続きのページを開き読み進めていく。
しばらくの間読み進めていくと、ようやく他の生徒が登校してくる時間帯になってきたようでちらほらと教室に入ってくる。
「おはようローレン、今日も朝早いんだね」
「ちょっと読みたい本があって、朝の教室が一番集中できるの」
「何を読んでいるんだい?」
私は今読んでいる本の表紙を見せた。
『暦と星座の関係』
「また授業と全然関係なジャンルだね」
「学園の図書館はなんでもそろっているから、つい面白そうで」
ウエスト男爵から言われている私への条件はいくつかある。
一、目立つ行動はしない
一、周りの貴族と波風を立てない、特に高位の爵位の者には注意
一、ウエスト家として品を欠く恥をさらすことは許されない
一、学力を落とさず、教養を身に着ける
一、つねに淑女としてふるまう事
判断の基準は男爵家の人間であり、破った場合は罰が与えられる。