コーヒー
小さな街灯に照らさられて、ぼんやりとした影がゆらゆら揺れる。それ一緒にキィキィと金属が揺れる音が夜闇に響く。
なんてことは無い。日常の一片。私が知らなかっただけなのだ。
彼は、年上で、私なんかよりも大人で。そして大好きだった。
そんな彼が見知らぬ女の人と、お洒落なカフェで楽しそうに話していた。
テラス席で飲むブラックコーヒーの香りが近くを通ってただけの私の鼻をかすめた。
「ブラックだなんて珍しいね」
傷心に浸って、自分の子供っぽさに惨めに思いながらブランコに揺られてるところを案の定目撃されたらしい。
手に持つカフェオレから白い煙が細く上がってる。
ーーー昼間はブラックだったくせに。
「なんとなく、だよ。」
そう呟いて、手持ちの缶コーヒーをひと口すする。
苦くて苦くて、この感情特有の甘酸っぱさなんてありゃしない。
感情の正体は知ってる。現実は残獄で苦くて、伝えることは出来なくて。
ぐじゅぐじゅと今にも飛び出そうな言葉とこの感情を、残りのコーヒーと一緒に飲み込んだ。