■前編
吾輩の名は、ア=スター・ゾロ。
宇宙を統べる野望を叶えるため、闇の世界で暗躍している魔王だ。
エム七十八星雲を掌中に治めた吾輩は、続いて銀河系を侵略すべく、太陽系に足場を設けることにした。
ここには水星から海王星まで八つの惑星があるが、中でも第三惑星の地球には、実に興味深い。
他の惑星に存在しない知的生命体の息吹を、ヒシヒシと肌に感じることができる。
こいつは、吾輩の手駒として利用価値がありそうだ。
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とはいえ、ひと口に侵略といっても、そう簡単になせるものではない。
ローマは一日にして成らず、だ。
入念な下調べをした上でなければ、いくら優秀な兵を率いたとて、勝算は五分五分になる。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず、である。
初歩として、まずは偵察と洒落こもうではないか。
ただ、怪しまれてはことであるので、この地の人間に扮することにしよう。
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ひとまず、ヒロシという小さき人間の身体を乗っ取ることに成功した。
悪く思うな、少年よ。
それでは、さっそく偵察をはじめよう。
お誂え向きに、何やら邪悪なオーラを感じるぞ。
これは、手下の候補として期待できるかもしれぬ。
現場に急行しよう。
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こいつは、計算違いとしか言いようがないぞ。
吾輩が公園に着いたとき、少年たちは、ちっとも獣性を感じさせない動物が描かれた巾着袋を投げていた。
そして、その少年たちの手から袋を取り返そうと、一人の少女が非効率的に放物線を追いかけていた。
少年たちに用がある吾輩としては、愚鈍な少女の存在は邪魔でしかない。
そう思い、地球時間で五秒ほど時を止め、少女の手に巾着袋を押し付けてやったのだが、それが誤算だったらしい。
あれほど邪悪なオーラを発していた少年たちは、吾輩を気味悪いと言って逃げ、挙句の果てに、少女から感謝されてしまった。
*
家に引き入れて歓待しようとする少女に辟易し、吾輩は再び時を止めて公園を離れた。
偵察は、まだ始まったばかりだというのに、前途多難である。
気を取り直して再開するとしよう。
と、思った矢先、先ほどより禍々しいオーラを感じた。
今度こそ、吾輩の手下にしてやろうぞ。
そうと決まれば、グズグズしていられぬ。




