戦闘人形はどう生きるのか
勇者とは何か、力とは
世界は戦争と平和を循環することにより自浄していく
勇者として戦線で絶大な戦果を獲得していた勇者は当然、戦犯として処刑されるものと本人すら思っていた。
ここはノルヴァージュの丘と呼ぶらしい。
対岸に見えるお城は美しく、いま見晴らしのいい場所にいるのだろう。
長年、追い求めていた場所へ後一歩というところまで来ている。
勇者とは
勇ましいもの、勇気あるもの
なんて当たり前の言葉ではなく、この世界においてもっとも特別な存在である。
4000年前に邂逅した人族と魔族は必然的に衝突する。
それは至極あたりまえのことだった、二大大陸を統べる両者は世界の覇権を奪取すべく争った。
勝っては負け、負けては勝って4000年間戦い続けた。
そして、時代の節目には必ず勇者と魔王がいたのであった。
人族に勇者がいれば人族が勝ち、魔族に魔王がいれば魔族が勝つ、そんなバランスブレイカーが数百年に一度は存在した。
しかし、今回は初の勇者と魔王が存在する時代となった。
それは魔王が勇者の存在を罪と認めない初の試みだったからだ。
なぜなら勇者に負けた魔族を魔王とは呼ばず、魔王に敗れた人族を勇者とは呼ばれないからだ。
「そこそこ疲れたな」勇者は呟く、初めての労働に汗を流す姿は神々しくすら見えた。
「助かるよ、これだけあれば数ヶ月は楽できる」魔族の青年は語りかけるが勇者は黄昏るだけだった。
勇者の傍付きを命じられてから3ヶ月になるがやっと彼の感情を読み取れるようになった。
彼との出会いは王城だった。
「汝 サクタ フェノムを無罪とする」そう王自ら審判を下すと謁見の間はザワツクが王の咳払いで静寂を取り戻す。
「無罪放免で開放したいところではあるが、居住場所の制限と見張りを付けさせてもらう」
王の指示に従い兵士に軽々と連れて行かれる勇者を私も後を続くのであった。
「ロニ君は除隊後の生活は決まっているのかい?」世話好きの上官が尋ねてきたので正直に定まっていないことを告げる。
「ちょっといい話があるんだが」と怪しさ満点の展開が始まる。
なんでも、新たな村の開拓管理を行う者を探しているとのこと家と土地を与えられ給料も出るとのことだった。
「まじっすか!?めっちゃいいじゃないですか!」そんな話にまんまと乗っかってしまうのがロニという男だった。
そこから担当の文官に紹介され、簡単な説明を受けるが好条件にしか頭に無いロニは話半分で聞いている。
「・・・であるからして、その男がもし逃げ出した場合には軍に連絡の義務がある。以上、なにか質問はないか?」ぜんぜん聞いていなかったが、聞いてませんでしたなど言えるはずも無くありませんと伝える。
「まぁ、助手もつけるし開拓なんか分からないこともあるだろうががんばってくれたまえ」
勇者の後を追っかけるように小走りになるロニは後ろを振り返る、そこにはあのときの文官がこぶしを掲げ「がんばれよ」と言わんばかり見送ってくれた。