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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
8/22

8 藤沢さんの片思い。 Ⅲ

再び片付け終えるとラウンジから葵さんが外を見ていた。

視線の先にはショーンさんと花音さん。腰に手を回され寄り添っていた手を離した。


すると花音さんが歌いだす。「アメイジング・グレイス」なんて綺麗な声・・・


振り向いた瑛さんの目から一筋涙が溢れた。瑛さんは慌ててラウンジを出て行く・・・

葵さんは切なそうに佇み歌を聴いている。


未來君が二人を呼びに行くとミニコンサートが始まった。この時には皆が笑顔が戻っている・・・

この二家族は奥が深い・・・またもや自分の家族を思い出し疎外感を抱くことになる。


翌日は沖縄本島に着き、花音さんとショーンさんを残し皆でダイビングに向かう。


此処のインストラクターは瑛さんの後輩だそうで・・・やはりイケメンの周りはイケメンが集まるのか?・・・

元彼だって其処まで容姿が良かった訳ではないが友達には羨ましがられたのに今は極上のイケメンパラダイスだ・・・葵さんをかなりイケメンとして、その上を行く瑛さん、ショーンさんと息子の未來君。

カイルさんに蓮音さん、梓さんに楓君・・・しっかりとした眉に大きな二重の目、シュッとした鼻にきゅっとしまった口、其々が整った顔をしている。


香織さんと小百合さんは普通に可愛い奥さんたちだが花音さんは其処ら辺には絶対いないタイプの美人だよ・・・芸能人と言われても違和感ないし・・・只本人は容姿の事を全く気にしていない。


この中に居ると自分も馴染んでいる様な気になっていたが夜鏡の前でガッカリした。

私よくあの人達と一緒に居られたなぁ・・・自分の神経の図太さに感心する。


今日も葵さんは色々気を遣いエスコートしてくれる。青の洞窟に入りあまりの綺麗さに怖くなって葵さんの手を掴んだ。葵さんはそっと手を引いて連れてってくれる。


その日の夜はショーンさんがホテルでディナーを摂ろうと言ってくれた。私殆ど働いてないけど良いのかなぁ・・・

絶対飛行機代と宿泊代の方が高い筈だ・・・しかもあんな大型クルーザーで旅行とかもう二度とないと思う・・・

明日からの4日間全力で作ろう・・・


船で決意新たに食材の確認をしていると花音さんが未來君のココアを作りに来た。

私は自分の中のモヤっとした感情をはっきりさせたくて花音さんに訪ねる事にした。


「花音さん、葵さんと何の関係も無いんですよね?」


「葵との関係?ふふっ・・・血の繋がりは無いわよ。」


「そうじゃなくて・・・私が言いたいのは・・・」


「肉体関係が有ったか聞きたいのよね?・・・無いよ・・・安心した?」


「・・はい。でも、葵さん何時も花音さんを気にしています。」


「そう?・・・そうよね・・・私も何時も葵の事は気にしているもの・・・」


「それはどういう意味ですか?」


「う~ん。深い意味で?・・・かなぁ・・・」


「ハッキリ聞いていいですか?花音さん素敵な旦那様いますよね。それでも葵さんの事好きですか?浮気とかにならないですか?」


感情の侭にぶつけた。


「ふふふっ・・・浮気って・・・私が?・・・私とショーンの始まりは普通じゃなかったけどそれでも今、彼を愛してるわ。私や息子を守るために様々な努力をしてきた人よ。それだけ価値のある男だと思ってる。愛さずにはいられないでしょ・・・葵はね。生まれた時から隣にいたの、誕生日も一緒、幼稚園も小学校も中学校も家も何をするのにも一緒。思春期で周りが少し距離を置いて来た時も私の隣にいたの・・・余り近くに居過ぎて喧嘩もしたけど寝る前には仲直りしてた・・・自分と同じ位大事な人よ。彼の幸せは私の幸せでも有るの。簡単な気持ちなら近づかないで・・・・・覚悟を決めて全力で幸せにして欲しいの。貴女にその覚悟が有るのなら私は反対しないわ・・・葵を落とすには一筋縄では無理だから・・・がんばって・・・」


そう言って出て行った。残された私はどうしてあんな言い方を花音さんにしてしまったのかと落ち込む。


そこへショーンさんと葵さんが現れた。一瞬花音さんとのやり取りを聞かれたのかと気になったが2人は何事も無かった様子なので聞こえてはなかったのだろう・・・


「ちょっと良いかな?」


「えっ・・は・・はい。」


「君、葵のカスタマーだっけ?辞めた理由聞いて良いかな? 葵も掛けて・・・藤沢さん今無職ですよね。再就職は考えていますか?」


ショーン氏は私に仕事の確認を取ると葵さんにも声をかける。


「ショーン何が言いたいの?」


「うん。担当直入に言うとね、腕は悪くないけどプロとしては通用しない。でも若いし努力と経験次第では良いシェフになれると思うんだよね。そこで、葵のカスタマーに勝手にスカウトするのもどうかと思って来て貰ったんだ。」


「成程・・・」


「勿論話したくないなら話さなくても良いし断ってくれても構わない。」


これは・・・さっきカイルさんが言っていたチャンスとやらでは無いか?正直元彼の事は思い出したく無いけど言ったほうが良い様な気がする。


「・・・私は前のお店でオーナーの息子、マネージャーと付き合ってました・・・彼は私がお店に居る時は凄く真面目な人でしたが、帰った後にウェイトレスの女の子と関係を持っていたようで、ある日その子に分かれてくれと言われました。どういう事か彼に詰め寄ると、誘われて断れなかったと・・・お前の事も好きだと・・・オーナーの手前喧嘩する事もなく円満に別れたんですけど、職場は同じなのでそれから嫌がらせが始まり日に日にエスカレートしてきたので辞めました。友達に相談した処、セクハラやパワハラで訴えたほうが良いと言われ葵さんの居る事務所を紹介されたんです。」


「葵、それはもう片付いたのかな?  君は今後どうしたいの?」


「相手が示談金を払う形で収まったよ。後、接近禁止命令ね。」


「私はこの仕事が好きです。だから、またお店を探すつもりでした。」


「私が紹介するとしたら君は頑張る気持ちは有るのかな?」


「紹介して頂けるなら、其のつもりです。」


「東京を離れても?」


「えっ?・・・・」


「私はねビジネスに関しては少し厳しいんだよ。だから使えない人材は直ぐに切る。その覚悟が無いなら断りなさい。」


《カイル・・・・・・・・》


私に話した後ショーン氏は何処かへ電話する。 何やら英語で話しているが全く私には聞き取れない。


「カイルが来るから、詳しく説明を聞いてそれから返事をくれても構わない。では先に失礼する。」


そう言ってショーンさんは出て行った。葵さんは


「これからは君のビジネスの話だから僕も失礼するよ。」


そう言って立ち上がった。何となくだが葵さんの表情は硬くやんわりと突き放された気がした。






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