3 ファミリーパーティー 陸斗 Ⅲ
「いらっしゃい。りっくん、奥様も。どうぞ上がって。」
「こんばんは。ビールで良かったかな?」
「わぁ~気を使わなくて良かったのに。」
送られてきた地図を見て、最近噂のカフェがあるビルの3階だった。
広いリビングでは外人さんが3.4人居てその中の一人を花音が呼ぶ。
「ショーン。りっくんがビール持ってきてくれたよ。」
「初めまして。花音の夫のショーンです。もうすぐ蓮音も下りてくると思うから今日はゆっくりしていってください。」
何だこのハリウッド俳優ばりの男は…
「は、初めまして。菅原陸斗といいます。」
「つ、妻の彩美です。初めまして。」
「もう。適当で良いからすわってて。」
吃る俺達に花音が笑ってソファーを勧める。
驚いた。
花音は葵と結婚すると思っていたからこんなハイスペックな外人さんと結婚していたなんて訳が解らない。
するとリビング反対側のドアからコレまたハイスペックな瑛兄が出てきた。
「おーっ、誰かと思ったら陸斗じゃないか。久しぶりだね。」
「いつかのイケメン・・・」
嫁がポロリと零す。確かにそこいらには居ないイケメンだよ・・・
その後螺旋階段から蓮兄と妊婦さんが降りてくる。
「陸早かったなぁ・・あっ・・いつぞやの・・・」
「蓮音先輩。お久しぶりです。」
「うん。仲良くやってそうだね。」
そう言うと蓮兄は自分の奥さんを紹介する。
「妻の小百合。来月生まれる予定なんだ。」
あっ・・・何というか・・・蓮兄好みのちっちゃくて清楚な感じの奥さんだなぁ・・・
「初めまして。小百合です。陸斗さんの処は何月の予定日ですか?」
「うちは9月ですよ。でも今彩美の悪阻が酷くて・・・」
「わかるわ~悪阻、私も酷くて8ヶ月迄会ったから体重が9キロも痩せちゃって最後の二ヶ月で元に戻ったもん。」
「え?花音。未來君は本当に花音が生んだのか?連れ子じゃないのか?」
「アレ?私15歳で生んだって言わなかったっけ?」
「いや。聞いたけど・・・冗談だと思ってた。」
「まあ普通は驚くよね~葵もかなり動揺してたもん・・・」
「俺がどうしたって?」
当たり前の様に瑛兄の家の方から葵が入ってきた。
「葵。おかえり~」
「只今。未來は?」
葵も当然の様に花音とショーンさんにハグの挨拶を交わす。
「今あき兄の処で宿題中?」
「酷いな。宿題だったら私が見るのに・・・」
花音の返事にショーンさんが困った様に笑うと
「国語の問題だからdaddyじゃ無理ってパパの所に行ったの・・・」
「成程・・・」
「じゃあ、後はお父さんに任せて・・・未來お土産買ってきたよ~」
「あっ・・・お父さん・・・いつ来たの?・・・おかえり~・・・」
「???daddyにパパにお父さん???」
俺も彩美も訳が分からない。
「りっくん深く考えないで・・・ショーンは実の父親で、瑛兄は育ての父、葵は未來の師みたいな処だけど自分だけ仲間外れは嫌だって未來に無理矢理お父さんって呼ばせてるのよ。」
花音は複雑そうに言うと携帯を確認する。
「7時になったら下に降りるわよ。」
「貸切にしたの?」
「今日は人数多めだったから半分だね。」
瑛兄の質問にショーンさんが答えた。
7時になり1階のカフェへと降りる。最近噂のカフェのオーナーは日本人だが各国のイケメンさんが給仕をしていた。これはショーンのアイデアらしい。
花音は当然自分の家の如く厨房に入っていく。
店には梓兄の家族や花音のお父さん、葵の両親も居た。
「懐かしいメンバーでしょ・・・後でもう一家族来るわよ。」
誰だ?と考えて居ると敬士郎が入ってきた。
「敬ちゃん、なっちゃん久しぶり。」
「こんばんは~嬉しい花音ちゃん此処いま話題のイケメンカフェだよね~・・・友達に話したら羨ましがられちゃった~。」
「いらっしゃいませ。ようこそ。イケメンとか小父さん嬉しいな~」
「そこ。坂口さんじゃ無いから・・・」
「未來~・・・・」
「ごめんね煩くて。春休み明日で最後だから子供達も燥いじゃって・・・」
「ううん・・・未來君明るくなったね。」
花音と敬士郎の嫁が仲良く話す言葉に耳を傾ける。
「私が一番精神的負担を掛けてたから・・・妙に大人びた子になちゃってて・・・本田兄弟にはお世話になりっぱなしだわ」
「瑛さんも葵さんも物凄く可愛がってますよね。」
「うん。感謝してるの・・・ゆっくりしていってね。」
久しぶりに見た花音は教会のマリア様みたいだった。慈愛に満ちてて・・・
多分、子供を抱いた彩美もそうなるのかと思うと嬉しくて隣のにいる妻に目を向けた。
彩美は小百合さんと妊婦にしか解らない相談をしていた。妊娠中の夜の生活とか・・・
2人で顔を真っ赤にしながら小声で話すから聞こえない振りをしたが、
蓮兄・・・あんたやっぱ普通じゃないよ・・・
お願いだ小百合さん、可憐な顔してそんな事を俺の妻に教えないでくれ・・・
2人でヒソヒソ話していたので俺は葵と敬士郎の処へと移動した。
「よう。久しぶりだな。お前デキ婚したらしいな。」
「まあね。授かり婚と言ってくれ。そう言う葵は花音を諦めたんだ。」
「今でも花音の事は好きだよ。だから花音の望む事は叶えてやりたい。未來も傷つけたくない。」
何処かさっぱりした葵に敬士郎が言った。
「俺は高校三年の時花音が転校して来たのを期に告白して振られたよ。
花音ね、葵は自分の分身だから彼が幸せにならないと安心して付き合えないってな。」
「憖一緒に居すぎると家族より深くなってしまった事にも気づかなくなってくのな・・・
花音は俺の物とか普通に思ってたし。今でも思ってる事も有るけど花音の大事な未來だけは傷付けたくない・・・よって溺愛してしまうからショーンにも叱られる、と言うよりアレは俺に対する嫉妬だな。」
不適の笑みを浮かべる葵に呆れる敬士郎が言う。
「お前帰ってくる度に羽田でお菓子山盛り買ってるだろ・・・この間うちまで夏希が持ってきたよ。」
「ああ・・・東京ば○○ パンダとかメープルとか10種類買って帰ったら花音がドン引きしてた。」
「此処にバカが居る・・・」
ついポロっと言葉が漏れた。
「お前でも可愛い子供が居るとそうなるんだな・・・自分の子が出来たらどうするんだ?」
「俺そこはあんまり考えてないんだ。出会いなんていつ来るか分からないだろ?」
「俺もな・・・まさか夏希と結婚するとか思ってなかったし・・」
俺,葵、敬士郎の話は盛り上がる。
「俺だって、蓮兄に振られて泣いてた彩美とデキ婚とか想像もしてなかったな・・・」
「授かり婚じゃなかったのか?・・・・ははは・・・」
結局俺達の初恋の女の子はアメリカ人の男に中3で孕まされ横から刈っ攫われてしまった。
攫った男は今奥さんの横で手伝い基『邪魔?』をしながらくっついて居る。
時折頬にキスをしながら・・・
外人て本当に人目を気にしないんだなぁ~と感心する。
「それにしても、良くここに家を構えたな。」
敬士郎の言葉に葵は淡々と答える。
「ショーンは見た目以上にやり手だよ。仕事柄付き合いもたまに有るから日本の法律的にどうかと相談される事も有るけど・・・基本は俺じゃなく梓兄のクライアントだから・・・
この店だって坂口さんが幾ら腕の良いシェフでも経営が難しかった処を彼がプロデュースして予約待ちの店にのしあげたくらいだよ。」
「スタッフって日本人はいないのか?」
経営の事は分からないので何気に聞いてみた。
「日本人は坂口さん1人、今はね。
韓国、中国、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ人が1人ずつ。
全員日本語完璧だし、研修はアメリカの某ホテルで一流の研修をして来てるから質も良いよ。
レディ受けも良いし個室は接待にも使われる。その内厨房にシェフを増やす予定らしいね。」
「偉くバイリンガルなメンバーだな?」
「未來の為にもなるだろ。あの子はこの春の誕生日で12歳に生るけど、日本語、英語、フランス語は殆ど完璧だよ、漢字が苦手だから中国語に偉く苦戦しているけど簡単な挨拶や自己紹介なら各国で軽くできるよ。」
「俺より凄いな・・・俺英語もイマイチだし・・・」
「花音だって英語ならヒアリング位ならほぼ聞き取れてるよ・・・都合の悪いことは解らない振りしてるど・・・・・これからあの子はまだまだ伸びるよ・・・先が楽しみだ・・・」
「おまえ、すっかりお父さんしてるなぁ・・」
「父親3人もいれば賢くもなるだろ?・・・はは・・」
「何男三人で盛り上がってるのよ・・・」
俺達の会話が気になったのか花音がエプロンを外しながら旦那と向かい側に座った。
「ん?未來が良い子だって話」
「ふふっ・・・未來?私に似てイケメンでしょ?とってもモテるのよ・・・」
「親馬鹿・・・」
葵の突っ込みに花音が言い返す。
「葵が一番親馬鹿じゃん・・・」
「仕方ないだろ・・俺が一番会えないんだから・・・瑛兄なんて毎朝、朝御飯一緒になのに・・・」
「俺?朝だけじゃないよ。夜も殆ど一緒だし・・・」
「あき兄、葵を煽らないで・・・」
突然の瑛兄の乱入に花音が慌てる。
「だって俺パパだし・・・」
小さい・・・瑛兄もだが葵ってこんなキャラだったか?
高校時代ヤリチン野郎(花音が再度現れる前まで)だったのに?・・・
「未來。今日はお父さんと寝ような。」
「あら・・・いいわね・・・」
「花音も一緒に寝る?」
《花音は私の妻だーっ・・未來は貸せるが花音はダメだっ》
「ショーン葵の冗談本気にしないで・・・」
優秀なイケメンCEOも花音の前では余裕ないなぁ~と思いながら帰る事になった。
うん。俺やっぱ普通が一番だな。
ここまで読んで下さって有難うございます。
りっくん編は此処で終わりですが、時々は出てくると思います。




