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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
20/22

20 椿です。


毎年お盆とお正月に父の実家に帰省しても父の真ん中の弟は居なかった。夏は留学で冬は住み込みのアルバイトとか・・・

だから一緒に住んでいた葵叔父ちゃんとは違って殆ど会った事が無かったけど、色んな教材を送って来てくれる教育熱心な叔父だと思っていた。


そんな叔父ちゃんに会ったのは父が独立し、実家の有る地方に引っ越してからだった。

割と近くに越して来た筈なのに余り行き気がない・・・

それでも花音お姉ちゃんの家に行くと殆どが会える。

何故なら蓮音お兄ちゃんとは幼馴染で、毎日3人でご飯を食べていたから・・・


素敵な優しいお兄さん・・・・其れが第一印象だった。

叔父ちゃんと云うには申し訳ない程綺麗な顔(割とお祖母ちゃん似)をして蓮音兄ちゃんが『瑛』、花音姉ちゃんは『あき兄。』と呼んでいたのでうちのお兄ちゃんが瑛君と呼び出したのが切掛で、私も瑛君と呼んでいる。何と無く瑛叔父ちゃんとは呼びにくい・・・


葵叔父ちゃんは生まれる前から一緒に居たから当たり前に遠慮なく叔父ちゃんと呼べたけどね・・・



アメリカ出張から帰った父が、絵本の中から飛び出した王子様を連れて帰って来た。

お兄ちゃんも私も一目惚れ・・・・・聞くと彼は花音姉ちゃんの弟?らしい。


お父さんは『知り合いの子を預かった。』と言っていた。

そして花音姉ちゃんが『未來、今日からお姉ちゃんと一緒に寝ようか?』という事は弟なのだろう・・・髪や目の色は違うが顔立ちは花音姉ちゃんに似ている。


未來君は私達と同じ小学校に転校して来た。

初日の下校時から女の子が沢山群がって話せそうにない。

其れでも家の近くに来ると途中で待っていた瑛君と英会話をしているが挨拶程度なら分かるけど、早口で何を言てるいのか解らない。


不思議に思ったのは何で2人は花音姉ちゃんより親しそうなの?・・

お兄ちゃんは未來君の隣に居ても不思議じゃ無いの?・・・


未來君が日本に来て一年がたとうとした頃、葵叔父ちゃんは花音姉ちゃんにプロポーズをした。

葵叔父ちゃんはずっと花音お姉さんの事が大好きで花音お姉ちゃんしか見えてない。

そんな二人を数歩下がった処で見て居る瑛君・・・


慈愛に満ちた優しい目・・・だけど・・・寂しいみたいな・・・・

未來君を見る目は愛おしそうに・・・私達には優しい眼差し・・・

小さい頃から余り人付き合いが得意では無い私は色々な物を観察する癖が有る。

瑛君の容姿はお祖母ちゃん似だと思うが中身はお祖父ちゃんだ・・・・・

そしてお祖父ちゃんに似たお父さんと葵叔父ちゃん。中身はお祖母ちゃん。

瑛君の眼差しの意味が分かったのは私がもうちょっと大人になってからだった。


その後、一部の記憶を無くした花音姉ちゃんが記憶を取り戻した事により、葵叔父ちゃんは振られ、花音姉ちゃんは未來君のお父さんと結婚した。花音姉ちゃん本当は未來君のお母さんだった。

だからか・・・未來君はずっとお姉ちゃんの事を『mom』と呼んでいたのは・・・


未來君と瑛君は聞かれたく無い話をする時英会話で話す。

3歳から送られた教材のお陰でゆっくり話していると解る。

私の反応で理解している事を知られてしまった。だってその後からフランス語に変わったもの・・・

それが何なのか?知りたい事が多すぎて英語とフランス語の猛勉強を始めた私はお兄ちゃんにはヒントをあげた。


「お兄ちゃん。未來君とずっと一緒に居たかったら今の侭では居られないよ・・・・」


「何で?・・・僕は未來君と一緒に居るために何から始めたら良いと思う?」


「取り敢えず英会話・・・瑛君にフランス語のプログラムも貰って来た方が良いと思う。」


「何でそう思ったの?」


「瑛君と未來君は秘密を共有しているの。それを知りたくない?でも私達は出来て英会話位って思わせとかないと会話をフランス語に替えられてしまうの・・・だから私達も秘密の特訓をしようよ・・・未來君に英会話を教えて貰えたらお兄ちゃん嬉しいでしょ?」


「お前だって近くに居たいんだろ・・・」


当たり前よ・・・学校では一緒に居られない処か登下校でさえ近づけないのに・・・




月曜日は少し早めに未來君の家に帰る。少しでも長く未來君と一緒に居たくてお兄ちゃんを急かした。

インターホンを鳴らしても誰も出てこない・・・暫く経つと未來君が帰って来た。


「あれ?誰も居なかった?」


そう言って未來君はドアを捻ると空いていた。


「ただいま・・・mom居ないの?」


「お帰り未來・・・静かに・・・」


優しい瑛君の声。リビングに行くと花音お姉ちゃんは瑛君の膝枕で寝ていた。


「久し振りに蓮音と試合して疲れたみたいだよ。」


未來君は仕方ないと言ったふうにため息を付く・・・

テーブルに座り宿題から済ませる事にした。瑛君はPCで膝枕をしたまま仕事をしている。時折花音お姉ちゃんの様子を気にしながら・・・30分経った頃花音お姉ちゃんが目を覚ます。


「おはよう。」


「うん。ゴメンあき兄、痺れた?」


「あと30分起きないなら起こそうと思ってた。」


「ありがとう。未來ゴメン。お帰り・・・」


「ただいま。mom・・・パパの足が潰れそうだよ・・・」


「大丈夫よ。あき兄の膝枕は2時間迄持つから・・・」


「分かった2時間ね。僕も今度試してみるよ・・・」


「俺はお前らの枕じゃないよ。」


なんだろう瑛君は自分の身内だけど花音お姉ちゃんや未來君の方が家族みたい・・・いつも思っていた。





ゴールデンウイークに未來君がダイビングに行きたいと言ったことが切っ掛けで私達は沖縄に連れて行って貰えた。でも未來君はお兄ちゃんが独り占めして私は余り構ってもらえない。

それでも船の探検で見つけたジャグジーには誘ってくれた。


この旅行で私は瑛君の涙を見てしまった。花音お姉ちゃんの歌を聞いて・・・

瑛君に何が有ったのか夜お父さんに聞いたけど教えてくれない・・・お父さんは黙って海を見つめていた。

大人達には苦い秘密が有ったのだろう・・・


翌年未來君の弟、永遠君が生まれた。生まれる前からお祖母ちゃんが来て張り切るから・・・

毎日おやつを用意してくれるので学校帰りは未來君の家に帰った。

永遠君は6ヶ月を過ぎた辺りから瑛君にべったりだった。

私にも慣れてくれたが、蓮音お兄ちゃんには余りなついていない・・・瑛君さえいればご機嫌だった。


ショーン小父ちゃんや花音お姉ちゃん未來君と瑛君だけに永遠君は抱っこされる。

一度葵叔父ちゃんが抱っこした時は大泣きしその日はコアラの様に瑛君の首から離れなくなってしまった・・・葵叔父ちゃんは相当凹んで帰ったけど・・・・

なんか何処で見た光景・・・・あっ・・・花音お姉ちゃんが瑛君に甘えてる感じとそっくり・・・・・

ずっと感じていた違和感がストンとなくなった。


私と瑛君は似ているかも知れない。私の未來君への恋心が成長と共に大きくなるに連れて瑛君の気持ちが痛い程分かった。瑛君はもうずっと花音お姉ちゃんが大好きなのね・・・きっと愛しているのよ・・・


私の中学の入学祝い。未來君から貰った瓶底眼鏡・・・意味が解らない・・・


「椿は可愛いから変な男が近づかないように外では何時も身につけて・・・」


お父さんは大爆笑でお母さんは微笑んでいた。

約束通り毎日おさげに瓶底眼鏡。付属の中学で担任は矢野先生。学校帰りはカフェのスタッフが交代で買い物帰りに待っていてくれた。これって全部未來君?

気になって蓮兄ちゃんのサロンでカット中に聞いた。


「お前は未來の特別だからな・・・大事にされてろ・・・」


確かに私は大事にされて来た自覚はあるけど・・・自信は無い・・・


「未來って、本当にショーンの子供だと思わないか?」


「まぁ・・・あれだけ似ていれば・・・・・・」


「椿も大人になったら分かるよ・・・素直が一番だぞ・・・」


そう言ってくれた。


大人になったらか・・・・・先の事は分からないけど素直さは無くさないように心がけよう。








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