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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
16/22

16 今日も未來君の心配事が尽きません。 Ⅰ

未來視点です。




約12年前の夏。

僕の父は当時15歳だった母に一目惚れをし、半ば強姦する形で母を手に入れた。


そう言うと外聞も悪く可哀想な子認定をされやすい僕だが、父や母、両祖父母に伯父さん、周りの使用人にも愛され恵まれた環境で育った。


正式に言えば母に愛されていたのは生まれる前から生後一切半迄の間。

それから約10年間は忘れられた存在となった。


物心付いた時にはもう母は居なかったが変わりに祖母が厳しくも優しく慈しんでくれた。

物を大切に使う事、野菜や花を育てる事、他人を思いやる事は人として当たり前の事だと教わった。

たまに祖父も訪れては魚釣りや駒回しなど日本の伝統的な遊びを教えてくれた。


夏休みになると日本から伯父である蓮音と友達の瑛が遊びに来てくれる。

それでもmomだけはやって来ない。届くのは自分を忘れたmomの動画と写真のみ・・・

一度daddyに


「momは僕の事が嫌いで忘れたの?」


って聞いてみた。daddyは悲しそうな顔をして違うと否定した。

その後daddyは自分の犯した罪を8歳の僕に告げた。吐き気がして暫くはdaddyを拒絶する。


でも伊織はそんなdaddyをmomは愛してたと言った。

もう少し、momの記憶が戻るまで待って居て欲しいと・・・

事故に遭ったのは偶然だけど僕を守る為に自分の命を賭け産んだのだと教えて貰った。


その後カイルが自分を守る為にmomが事故に遭ったと泣きながら教えてくれた。

カイルは僕が小さい時から凄く大切に可愛がってくれた。

未來の力になる為に自分は存在すると言う。

大袈裟だと思っていたが、それが彼なりの贖罪だったのだろう。事故もカイルのせいだと思った事はないのに。

自分の勉強もバスケの練習も頑張って僕の遊びの相手までしてくれた。


小学校の送迎も毎日伊織が来てくれて学校の友達に未來は日本人かとよく聴かれた。

どう見ても日本人に見えないけど、名前だけは日本人・・・

だけどハーフだと知るとチョッとした虐めに合う事も失くなった。


それもその筈。daddyは結構大きな会社のCEOだったから学校へ多額の寄付もしてたし、先生達も成績の良い僕には一目置いていた。僕自身小学校に入った時点で三ヶ国語以上話せたし周りの人達にも一目置かれていた。


カイルがいたお陰で運動神経も良かったし、蓮音のお陰で喧嘩も強かった。

瑛は僕がまだ小さい時からスカ〇プで動画授業を使って色んな事を教えてくれる。

daddyは出来る限り僕と時間を作る形で尽くしてくれた。


10歳になった時、伊織が亡くなった。突然の事で混乱したが、梓がやって来て日本に連れて行くと言った。


当然ディランの祖父母は反対したが、僕の戸籍は本宮花音の長男だと梓は主張したし伊織の遺言が日本で花音が育てる事だった。


daddyは何も言わなかった。緊張したまま飛行機に乗って14時間、日本に着くまで眠れなかったが、空港に迎えに来た葵が時差ボケで疲れた俺を自宅に連れて行ってくれた。


その時葵はmomの赤ちゃんの時からの写真を見せて色んなmomの話をしてくれた。

話の途中で眠ってしまった僕は次の日上野動物園でパンダを見た。葵が多分花音は生のパンダを見たことがないはずだと言ってた。


その日の午後の便でmomの居る地方へと移動すると梓の家族が空港に迎えに着ていた。

梓には小学二年生の男の子と一年生の女の子がいた。二人共僕を見上げ中学生かと聞いてきた。

後になってこの国の子供たちは皆小柄なんだと知った。


次の日とうとう本物のmomに会えた。僕の顔を不思議そうに見ている。


梓も敢えて息子とは言わなかった。momは僕の事を弟と思ったらしい・・・

daddyと梓に自分から息子だとは名乗らないようにと言われた。記憶を混乱させたくないからと・・・


僕は自分の事を拒絶されるのが怖かった。でもmomと呼んでも嫌な顔一つしない。



1年経ってもmomはまだ思い出さない。そんなある日、葵がmomにプロポーズした。未來のお父さんになりたいと言われ動揺した僕はdaddyに電話を架けた。

慌ててdaddyは日本にやって来て、伊織の手紙とmomの日記を見せた。


日記を読んで動揺したmomは伊織の墓参りで気を失い、記憶を取り戻す。




記憶を取り戻したmomはdaddyと入籍した。daddyがこの後気持ち悪い程にmomにくっついて離れない・・・・

こうなると、それはそれで面白く無い・・・やっとmomと本物の親子になれたのに・・・


僕はよく周りの友達にマザコンと言われる。momが何処でも僕にキスするからだ・・・

だけどmomは本当に綺麗だと思うし、可愛い処も沢山ある。

そして僕の事を『世界で一番愛してる。』と豪語する。学校の参観日に来た親の中では1番クールだ。


周りの友達は楓と椿が花音姉ちゃんと呼ぶから自然と俺の姉と勘違いしていた。

だから、この前担任の先生に『お姉さんは独身なのか?』と聞かれ『正真正銘の母です。』と答えた。

先生はmomの歳を聞いて驚き僕に架ける言葉を選ぶ・・・


もう慣れたよ。その反応は・・・

でも此処で僕がもし嘘を付いて姉ですとか言った日には家庭訪問とか言って家に来るだろ?


『因みに父親はその他のお父さん達と変わらない年齢の、アメリカで会社経営してるCEOです。ネットで調べてもらったら直ぐに分かります。僕と似ていますので・・・』

面倒だったので一緒に答えといた。


家に帰って宿題をしながらパパ(瑛)に話すと爆笑してた。


まぁウチが普通の一般的な家庭と違うのは分かっているけど他人にアレコレ言われるのは面白くない・・・


《嫌らしい目で僕のmomを見るな》


英語だと理解される可能性が高くなるので、ポルトガル語辺りでにこやかに呟いてやった。


パパは只、笑い転げる。僕の腹黒さがdaddyにソックリだって!!


ウチの人間は殆どが英語だと通じる。momは話さないが完璧に聞き取っている。

都合の悪い所は分からない振りをする。

本当に分からないって感じの笑顔だから皆良く騙されてるよ・・・


そんなmomの性格も蓮音と、パパ()お父さん()は知っている。


daddyだけが今でも良く騙されてるよ。僕でも分かるのに・・・

でもdaddyは世界の中心がmomだから騙されても嬉しいみたい。

それもどうかと思うけど、幸せそうだからそっとしとこう。


僕の校区内にdaddyが家を建てた。一階は元の地主さんがカフェをしている。

その名も「Café future」


スタッフはオーナー以外(中年の・・・mom曰く。あれはあれで人気が有るのよ。私の好みじゃないけど)イケメン外人。5人実際は僕の語学家庭教師兼スタッフ・・・


其々の国の人とその国の言葉で話さなければならない。課題は山積みだ。友達と外で遊びたいとは思わないけど(遊ぶ中に女の子が居ただけで騒ぎになるし)遊んでる暇は無い。

結局は楓と椿の世話で精一杯だし。


momが引越し祝いをしようと言った。


本宮家と本田家、それとmomの幼馴染も来た。momもdaddyも楽しそうだ・・・


楓は煮込みハンバーグが美味しいと言って3個も食べて椿に怒られている。

きっと椿の分まで食べちゃったのだろう・・・仕方ない・・・


「椿、おいで・・・僕の分を食べて良いよ。」


「でも未來君の分が無くなっちゃう。」


「大丈夫momが未だ作っているから・・・先に食べて・・・」


「有難う。」


嬉しそうにお皿を持っていった。楓は梓に似ているが、何処かオットリしていて、椿は香織に似て小さくてフワフワしているがかなり賢い。人の事をよく見ている処は(パパ)に似ている・・・

血の繋がりはないけど10歳で出来た可愛い弟妹だ。僕によく懐いてくれる。

カイルが自分にしてくれた様に面倒見る。お兄ちゃん気分・・・


パーティーが終わり部屋に帰ると久しぶりにあった詩音に海に行きたいとねだった。

詩音は沖縄に行こうと言った。アメリカでダイビングに連れてってくれた時に日本に青の洞窟が有ると教えてくれて一度行きたいと思っていたら家族旅行で行く事になった。


旅行の前日mom達とアメリカにある大手スーパーに買い物に行くと楓と椿が喧嘩しないように沢山お菓子やジュースをカートに入れたけど、梓には僕も驚いた。

一週間の旅行で誰がそんなに食べるんだ・・・


大きなカート5台分、全て梓が支払ってくれた。帰りの車は僕の膝の間にmomを座らせてパパの膝には大きなピザとケーキが載っていた。笑いながら梓は『チョット買いすぎたね。』と言った。

ちょっとじゃねーよ・・・この大きなワンボックスカーが滅茶苦茶狭いし・・・

港で詩音が待っていて、トランクを見た詩音も苦笑い・・・ほらね。

僕たちはバケツリレーするように冷蔵庫へと運んだ。


次の日、朝からお父さんとシェフの藤沢さんを迎えに空港へに行く。

別に僕が行く必要は無いと思ったけど「「未來君が行かないなら僕・私も行かない」」

と楓と椿に言われ梓に『未來が行かないと葵がガッカリする』とまで言われたら行くしかなくなる。

お父さんはまた大量にお菓子の土産を買ってきた・・・これまたmomに怒られるレベルだ・・・

案の定momに怒られてるし・・・懲りないな・・・


出港した後、一通り子供たちだけで色んな場所を探検した。

此処はヘリポート・・・・・こっちにはジャグジーもある。

詩音が居る操舵室に蓮音もいた。センサーが沢山有って面白い。

色々説明を聞いてラウンジに戻った時、パパの携帯が鳴った。

携帯を切ったパパは一瞬目で僕を探すと慌てて出て行った。僕も直ぐにおいかける。

パパはmomを抱き上げると甲板のソファーに運んだ。

青い顔したmomが辛そうで心配するとパパは


「未來に兄妹が出来たみたいだ。」


と言った。僕は嬉しくてmomの隣に潜り込む。


藤沢さんが夫婦みたいって言うから、調子に乗って『パパが本当のパパでも良いよっ』て巫山戯たらお父さんが拗ねた。仲間外れは寂しかったらしいね・・・


アメリカにいた時より日本に来てからの方が皆僕を甘やかそうとする。最近僕は面倒な事を後回しにしがちだった。

そんな僕にmomは指摘した。痛いところを突かれ逃げ出したけどお父さんが追いかけて来てくれた。


momが何を言いたかったのか説明してくれる。こういう処がお父さんの凄い処だ。

momが感じている事を会話もしないで分かってる。僕はお父さんとmomの元に帰る事にした。








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