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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
15/22

15 同窓会

前半陸君視点で後半は高校時代葵に振られた高島梨香ちゃんの視点です。



「皆。久しぶり・・・」

 

「本当に・・・13年振りだもん。元気にしてた?」


「ねぇ・・・今日花音が居るわよ・・・」


「え?何処?」


「ほら・・・今キッチンで作業している・・・」


「嘘・・・あの子此処で働いていたの?」


「何か、噂ではあの子あの後子供生んでたらしいわよ・・・」


「わぁ・・・葵君可哀想・・・・」


「でもあの子、付属の高校出てない?転校した後・・・」


「何しても目立つ子だったからねぇ・・・」


彼方此方で花音の噂が耳に入る。


今日は修の13回忌。同窓会を開こうって言ったのは花音。

本当は余り田舎の友達に会いたく無かっただろうに・・・


「えー・・皆さんお揃いの様なのでそろそろ始めたいと思います。」


敬士郎が声を掛けるとシン・・・となる。


「13年前の今日、俺達の幼馴染みである修が天国に身罷れました。

幼き時より中学迄一緒に過ごした皆と共に修のご冥福を祈りたいと思い今回の同窓会を企画しました。

懐かしい顔が略揃った事に感謝致します。今日は心ゆくまでごゆっくり語り合ってください。」


流石、学校の先生はこういう事に場馴れしてるなぁ・・・俺なら何言って良いか分かんねぇ・・・


「陸斗・・・」


呼ばれて振り向くと葵が今来たばかりの格好で立っていた。


「お前今来たのか?」


「丁度敬士郎の挨拶が始まった時入口に居けど、良くコレだけ集まったなぁ・・・」


「此処を何処だと思ってる?今や予約待ち3ヶ月のカフェだぞ・・・見ろ女共のスタッフを見る目を・・・・」


若いイケメンの外国人スタッフの中に未來がいる・・・


「え?未來?何で?何してるの?」


「今日はmomのお手伝いだって・・・」


「良く瑛兄が許したなぁ・・・」


「兄貴もいるよ・・・此処のスタッフだけじゃこの人数こなせないだろ・・・」


「言ってくれれば俺も手伝ったのに・・・」


「最近、陸君(りっくん)頑張ってるからってさ・・・言えなかったんだろ・・俺も今から手伝いに入るし・・・」


一旦上に荷物を置き戻った葵はタブリエを巻いて酒を運ぶ・・・

途端に女子は騒ぎ出す。この年になると流石に独身女性は少なくなってた。


一通り料理を出し終えた花音はエプロンを解いて隣に来た。


「お疲れ・・・大変だったなぁ・・・」


「うん。でも皆が手伝ってくれたから・・・」


「お前、美容師が本業なのに凄いなぁ・・・」


「料理は一通り葵のお母さんに仕込まれたのよ。あの人昔、料理教室の先生だったから・・・」


「だから小母さんの料理美味かったんだ・・・」


花音を労い話して居ると一人の女性が近づいてきた。


「お久しぶり花音。元気そうね。」


「梨香ちゃんも元気そうで良かったわ。」


「あの時は悪かったわ。ずっと謝りたくて・・・貴女があの時既に子供を産んで居たなんて知らなかったし、知っていたらあんな醜い嫉妬なんてしなかったのに・・・」


梨香の言葉に辺りが静かになった。


「ちょっ・・・梨香・・・」


周りの女が慌てて止める。


「ふふ・・・・そうね・・・言えたら良かったのにねぇ・・・未來。ちょっと来て・・・

この子が私が15で産んだ息子、未來です。」


《mom 僕はどうしたらいい?》


《何時も通りでいいわ・・》


「花音の息子の未來です。今付属の中学に通っています。母が何時もお世話になってます。」


全員注目の中、未來は堂々と挨拶をした。花音はよく出来ましたと言う様に頭を撫でる。


「処で梨香は今どうしてるんだ?」


葵が笑いながら聞くが目が怖い・・・


「わ・・私は高校出た後デパートに就職して、外資系企業に就職していた今の主人と24歳で結婚したの・・・」


「そう・・・幸せそうで何よりだよ・・・」


葵の微笑みが怖い・・・


「花音は今何しているの?此処で働いて居るの?」


此処に居る殆どが知りたかったんだろう・・・さっきから静まり帰っている。


「私は今、陸君と同じサロンで美容師をしているわ・・・此処は自宅の下だし今日貸切にして貰ったお礼にお手伝いをしてたの・・・」


「陸斗君って確か・・・サロン・ド・アフロディーテに引き抜かれたんでしょ・・・」


「声を掛けられたと言ってよ・・・何で知ってたの?」


「だって従姉妹が今年受けたけど落ちたのよ・・・トップの成績で卒業したのに・・・其処に引き抜かれる程だなんて・・・ちょっと話題になったわ・・・・・まさか花音が其処に勤めて居たなんて・・・」


「花音の方が先輩なんだよ・・・まぁ・・今は余りアフロディーテには居ないけど・・・」


「私、今はパートだからね・・・」


笑っているが此処では言えない。花音の為に用意されたサロンだなんて・・・

他の女子も声を掛けて来た。


「お子さんを見る限りご主人は外国の方?」


「ええ・・アメリカなの・・・」


「どちらの会社に?」


「アメリカに有るフューチャー・エンタープライズって処・・・」


「えぇ?家の夫の親会社だわ・・・」


梨香が話に割り込む。


「此処もそうなのよ・・・だから気になってたの・・・一流のスタッフを置くお店で花音が料理していたから・・・でも手伝って居ただけなのね・・・驚いたわ・・・」


梨香は気付かない・・・フューチャー・エンタープライズもカフェ・フューチャーもサロン・ド・アフロディーテも皆繋がっているとは・・・未來の名前を聞いても尚・・・


俺はこの処の英会話レッスンで大分聞き取りはできるようになった。瑛兄の顔を見てうん、と頷くと瑛兄が未來に何かを囁いて二人で出て行った。きっと避難させたのだろう。

後は俺達に任せてくれた。


「じゃあ今は別居しているの?」


尚も梨香は突っ込んで来る。結構しつこいな・・・と思いながら


「時々帰ってくるわよ・・・」


あえて話を合わせる花音。そりゃ・・・旦那が自分の処の社員と言われれば本当の事は言えないだろう・・・

花音の言葉に半ば同情するような目で見る梨香・・・

そんな梨香の視線を無視して他の友達と話す花音。

自然だなぁ・・・こいつのこう行った処は昔からで、相手のプライドを尊重している。


過去に自分がどんな事をされたかなんて気にしない。


「花音、俺今付き合ってる子がいる・・・同じ事務所に勤める二つ下の後輩。」


「そう。葵からそう言った報告を受けるのは嬉しいわ。夏に連れてらっしゃい。」


「でもお前たち夏はNYに行くんだろ?」


「そうよ・・未來言わなかった?」


「聞いたけど・・・行き成りNY・・・」


「そう。場所が違った方が気持ちも盛り上がるでしょ・・・陸君、貴方も未來の夏休みに合わせて行くから彩美さんと空君のパスポート迄取るのよ」


「マジで?・・・」


「そう。マジ。」


笑って何事も無いように答えるが後一ヶ月も無い・・・明日早速市役所行ってこよう・・・


「宴も酣と成りましたが明日も仕事の方もいるので是にて、閉会とさせて頂きます。」


敬士郎の声が聞こえた。皆思い思いに帰って行く。

俺達は皆を見送ると上で待ってた家族の処へ向かった。

敬士郎の嫁も上で娘と待っていた。俺は寝ている空を抱え彩美と自宅に帰る。


葵は瑛兄の処に泊まるらしい。未來を誘って断られていた・・・


永遠は瑛兄の腕の中で泣き疲れて寝ている。

蓮兄が子守担当だった筈だが、永遠は花音が居なくても瑛兄さえ居ればご機嫌らしい・・・・

二人共居なかったからか・・・先に瑛兄が出て行ったのは・・・

きっと蓮兄が手を妬いて瑛兄を呼び戻したのだろう・・・・


俺は彩美にNY研修とパスポートの話をして帰った。







===============





高校の時、ずっと好きだった葵君に告白をした。

彼は何時も花音の側に居たけど私に『一緒に帰ろう。』と言ってくれた。


それから毎日部活帰りは幸せな一時だった。

花音が葵君の家から出てくるのを見るまでは・・・・・


私は自分が今彼女なんだから葵君に近づかない様釘を刺した。

一ヶ月後『俺何時から梨香と付き合っていた事になるの?』と聞かれた時には耳を疑った。


其れでも意地で一緒に帰ろうと頑張った。その内あからさまに避けられ始める。



腹がたった私は花音を3年のクラスに呼び出し話をする筈だったが、他の女子の手前粋がって花音を叩いてしまった。

周りの女子も自分が好きな男子の殆どが花音に好意を持っていたのが面白くなかった為か一斉に暴力をふるった。


花音は『辞めて。』と言い近くに有った椅子で窓ガラスを叩き割った。

ガラスの割れた音に驚いた女の子は悲鳴を上げ教師は飛んできた。


その後私達は指導室に連れて行かれ花音は病院へと連れて行かれた。


私達は親を呼び出され停学処分となったが、停学が解けて登校すると花音は転校したと言われそれ以来会うことが無かった。確かあの時学校に来たのは葵君のお兄さんだった。



葵君とはあれ以来、目も合わなくなったし他の男子も私達を敬遠している。

居づらいながらも地元の高校を卒業しデパートに就職した。


花音はどうやら付属の高校に転校したらしい。

自分で調べようと思った訳では無いがカリスマ高校生とかミス付属とか・・・噂は耳に入って来た。


何度かウチのデパートイベントに招待する企画が上がったが全て断ったらしい。

あの日の事を謝れない侭時は過ぎた。



13年後、同級生の追悼同窓会が催される葉書が届いた。

修君の追悼なら花音はきっと来る、そう思った私は場所の確認をし驚く。


『カフェ・フューチャー』?此処を貸切に出来るなんてどんなコネ?


此処は夫の勤める外資系レストランのチェーン店、今話題で予約待ちの筈。

夫は企画だがこの店に限っては全て特別で秘密が有ると言っていた。



当日参加すると花音はキッチンで料理をしていた。洒落た店内にイケメンスタッフの優雅なエスコート。女性がうっとりするには充分だ。今日はビュッフェスタイルになったと言われた料理も上品な味がし、美味しく頂ける。



中半過ぎるとエプロンを解いた花音が座っているのに気付く。

謝りたかった。それなのに・・・


「あの時は悪かったわ。ずっと謝りたくて・・・貴女があの時既に子供を産んで居たなんて知らなかったし、知っていたらあんな醜い嫉妬なんてしなかったのに・・・」


口から出た言葉は傲慢で、なんて意地悪・・・自分が嫌になる・・・


花音は笑って自分が15で産んだ子供を紹介した。ハーフ?・・・でも恐ろしくイケメンの息子は花音に何か囁くと皆に自己紹介をした。


それから旦那さんの事を聞いたら、なんと家の夫の親会社に勤めているらしい。

大きな会社だから多分お互いに知り合うこともないだろうけど・・・




会が終わった頃珍しく夫が迎えに来てくれ友達には散々冷やかされた。


「どうだった?此処の料理は?」


「とっても美味しかったわよ・・・でも良く此処を貸切れたわよね・・・」


「上からの情報だけど此処の建物自体が本社の社長婦人の物らしいよ。そのコネじゃないかなぁ・・・・」


「そうなの・・・でも驚いたわ・・・10年振り?に会った同級生が中学生の母だったりましてやハーフの子供なんだもの・・・」


「・・・・・そのハーフの中学生って、もしかしてシルバーヘアーにグリーンの目をしていた?」


「何で貴方が知ってるの?」


「・・・マジで?・・・」


「本当よ・・・中学生とは思えない落ち着いた子だったわ・・・」


「君、KANONと同級生だったの?」


「何で貴方が花音を知ってるのよ?」


「ウチの会社に勤めていてKANONを知らない人間は居ないよ。帰ったら会社のパンフレットを見せてあげるよ・・・そうか・・・日本に居たんだ・・・しかもこんな地方に・・・」


ブツブツと呟く夫の勢いに呑まれ自宅に帰った。


「コレ。今年の採用パンフレット。毎年色んな写真が使われている。コレクターが結構多いんだ。

この地方だけ系列のサロンにポスターが貼られていないのが不思議だったんだ・・・」


「花音ってモデルのバイトもしていたのねぇ・・・まあ・・美人だしね・・・」


夫の仕事に無関心だった私は自分の家に花音が乗った資料が有った事さえも知らなかった。


「KANONは本社の社長の愛妻だと言われてるよ。君が逢った中学生はジュニア・・・未來君。

この本社も、俺が勤めている会社もサロンが入った会社も全てKANONと未來君の為に作られたと言っても過言では無いらしい。」



え・・・

花音そんな事一言も言わなかったわ・・・でも会社の名前は言ったけど勤めてるとは言ってない。

此処の上に住んでるって言ってたのも大家だから・・・・貸切をお願い出来たのも社長夫人だから・・・そうね、嘘は言ってないわ。詳しく言わなかっただけで・・・私も詳しくは聞かなかった。何処かで私の方が貴女より幸せだと思いたかったから。




葵君や陸斗君は知っていたから何も言わなかったのね。

敬士郎君も・・・黙って司会を務めた。


私達の気分を害さない為に・・・だって今日は修君の13回忌だったから・・・







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