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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
14/22

14 陸斗 Ⅴ


二週間経つと『アフロディーテ』に移動になった。其処で店長に今日から日本人の接客以外は英会話で話せと言われる。


最初こそ新種の虐めかと思ったが、此処の系列のサロンは日本だけでなく世界に支店が有り、定期的に研修が有るらしい。


店長の悲惨な渡米初研修の話を聞いて同情した後直ぐに他人事じゃないと気付かされた。


「この間僕未來君にフランス語で話しかけられたんだ・・・英語で返したけど・・・」


「え?・・ええっ・・・俺最近ずーっと未來に英語で話し掛けられてましたよ・・・・」


「未來君は優しいからね・・・いきなりだと可愛そうだと思ったらヒントをくれるんです・・・

3年前は気付かなくて・・・携帯片手に本宮君を、あっ・・お兄さんの方ね、を頼り放しだったんですよ。今思えば時差とか気付かない位テンパっていましたね。」


最後に入ったお客様がパーマの後カラーの追加が有ってお店を出たのが遅くなってしまった。


「こんばんは。遅くなりました。」


本宮家を訪ねると今日も未來が出迎えてくれるけど・・・

書き慣れた名前しか聞き取れない。


《パパ、・・・・陸斗・・》


《やぁ、陸斗。・・・・花音・・・・》


《こんばんは。・・・・・・。》


「え?瑛兄。何言ってるか全く分からない・・・瑛兄だよね?・・・」


顔と声は瑛兄だけど言ってる事が全く理解出来ない。


「店長、りっ君いらっしゃい。空君もうお風呂もご飯も済ませて寝ちゃったわよ。取り敢えず入って。」


花音の日本語を聞いてこの上なく安心する。

瑛兄と店長が英語で何か会話しているけど・・・俺にはGood eveningしか聞き取れて無い・・・


店長は瑛兄から幾つかのDVDを受け取るとじゃあ・・・と言って早々に帰っていった。


其処へ女性が1人訪ねて来る。俺等より少し若いかなぁ・・


《こんばんは・・藤沢・・・・・・瑛・・未來?》


「いるわよー。未來、優ちゃん呼んだの?」


《・・・陸斗・・・》


「俺?ごめん。俺何言ってるかさっぱり分からない」


「りっ君最初は皆、そんなものよ・・・」


苦笑いの花音を横目で見て通訳をお願いする。


「下のカフェで働いている藤沢さん。元々は葵のお客さんだったんだけど、彼女もイタリア語の勉強中で一年前は英会話も話せなかったのよ・・・」


《はじめまして。藤沢です。よろしくお願いします。》


《菅原です。此方こそよろしくお願いします。》


「そうそう・・・りっ君ゆっくり話されると分かるでしょ・・・」


「花音。今のは小学生でもわかるだろ?」


「同じよ・・・藤沢さんが日本人だからと彼女が最初にゆっくりだと聞き取れると分かって話してくれたから分かっただけで、さっきあき兄と未來の会話だって落ち着いて聞いたら分かった筈よ。・・要は慣れ・・・月曜日の夕方なら梓兄の子供達も居るから暇ならおいでよ。」


それから瑛兄に英会話ラーニングキットを貰って帰った。


翌朝空に《Good morning dad》っと言って起こされた。彩美が笑ってる。仕込んだな・・・


「はいはい。グッド・モーニング空ママに言わされたか?」


「本当はね。昨日早く貴方が早く帰ったらA dad welcome homeって言う練習していたの。

でも寝ちゃって・・・月曜日が楽しみね・・・」


そういった彩美は朝から子供用英会話ラーニングのDVDを空に見せながら洗濯物を干していた。


空はABCの歌を俺より綺麗な発音で歌ってた。これ作ったの瑛兄だって・・・あの人天才

ていうか、瑛兄って何者?ただの付属の臨時講師じゃないよな・・・



約束の月曜日。何時もの様に洗濯や片付けを済ますと買い物に出掛けた。ここ最近家族で出掛ける事の無かった我が家は大型のショッピングモールに来ただけでテンションが上がった。

玩具屋さんで何か買おうと思ったが空は何故かジグソーパズルコーナーで動かない・・・


「これ欲しい・・・」


「本当に?コレ?」


「うん。伊吹(イブ)とお揃い。」


「あぁ・・・伊吹君ずっとやっていたのよね」


99ピースの何の絵も書いてないパズルを3歳の子供がするのか?値段は500円程度だが

子供向けのパズルならこっちのヒーロー物がよくないか?

取り敢えず値段も高くないので両方買って花音の家に行った。


「こんにちは。お邪魔します。」


家に入るとケーキの焼ける良い匂いがした。

俺は伊吹と空の前で買ってきたヒーローパズルを開けてやる。最初の絵を見せてバラバラにしたピースを息吹は3分と掛からず組み立てた。

空は10分位掛かった。もう一度崩すと息吹は自分のパズルを持って来た。


「こっちが良い。」


「あぁ・・・伊吹にはつまらなかったか・・・」


絵を見て一瞬で理解出来る伊吹に感心した。


「空も、コレ要らない・・・面白く無い・・・」


ヒーローより真っ白のパズルが面白いのか?・・・分からん・・・

瑛兄が帰ってきたので説明すると、そりゃーそうだろと言われた。


「この真っ白いパズルな・・・NASAの宇宙飛行士の試験で使われる物と同じなんだよ。だからたったの99ピースしか無いのに500円もする。」


「500円ならやすいだろ?」


「俺ならA4の紙、鋏で似たようなカットして遊ぶ。コレには作る側の夢があるんだ。

子供の想像力を無限に引き出してくれるから飽きない。お前もやってみたら分かるよ。」


はぁ?・・・・結局空もホワイトパズルを始めたが、途中で出来ないと泣き出す始末・・・

其処に未來が部屋から出て来た。未來は泣いている空を抱っこしてパズルを握らせる。


「空は何が好き?」


「ひこうき。」


「じゃあ・・・飛行機を作ろう・・・」


適当に握ったパズルで飛行機を形取る。もう一方には長方形のパズルの中に飛行機の抜けた跡が在る。抜けた長方形の四隅なんてそんなに大きくないし接点の長さや穴の形をジッと見つめて似たような物から合わせていくと空でも二つ三つと合って、未來が見ているように空も一つ一つのピースを観察し覚えている。その内枠が完成した。それだけで空は大喜びだ。その内梓兄の子供達が帰って来た。


「あぁコレ僕達もやったよね。地味だけど面白いんだ・・・」


《楓。・・・・・》


《ごめんなさい。・・・・》


早口で会話している。後でカイル君と藤沢さんが着てリビングに集まった。

チーズケーキを食べながら、ゆっくりと話してくれる。時折分からなくなった俺に未來はゆっくりジェスチャーを交えて説明してくれる。

未だ自分から話は出来ないが簡単な返事や何を言っているかは少しずつ分かった。

花音もこの時だけは英会話に参加した。でも彩美には日本語で通訳をしてくれる。

夕方から帰るまで約4時間英会話を続け帰り着いた時は精神的に疲れた。

空は今日も本宮家のお風呂に入りグッスリと寝ている。



「ねぇ・・・改めて未來君って凄くない?空が癇癪起こして泣いても冷静に対処出来て、しかも空にあんな難しいパズルの楽しみ方まで教えれるなんて・・・」


「正直俺にもあれは出来なかったと思うよ。只、未來は瑛兄に育てられているから出来たんだろうな・・・」


「瑛さんどんな風に育てたらあんな天才が育つのかしら・・・」


「瑛兄だけじゃなく花音の血もショーンさんの血も上手く作用してるんだろうね。」


「ねぇ・・・私も英会話やってみようかしら・・・」


「じゃあ・・・家でもなんちゃって英会話から始めよう・・・」


「何?なんちゃって英会話って・・・」


「先ず知っている英単語は英語で話す。単語から覚えなきゃな・・・後はくっつけて話して間違ってたら指摘されるから・・・自信を持って話してみよう。明日から・・・・・」


今日はもう脳がフルスロットルでアイム・ソォ・タイアド・・・で良いのか?

明日実家から辞書送って貰おう・・・これじゃぁ、まるでタレントの『出〇英語だ』・・・

耳にイヤホンを嵌め聞きながら寝たけど1分で記憶が無かった。







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