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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
12/22

12 店長です。 Ⅱ

花音ちゃんが出産しました。それによってお店に顔を出さなくなりまして・・・


替わりにデカイマッチョ君が本宮君にヘッドハンティングで入って来ました。

まるで『フレイヤ』の店長(本宮君)みたい・・・ってお客様にも言われます。

名前を菅原陸斗君といいます。この街でそこそこ有名な『アトリエ・桃』の売れっ子スタイリストさんでした。

仕事の休憩時間にコミニュケーションを取ろうと思い話しかけます。


「転職しようと思ったきっかけって何?」


「きっかけは『フレイヤ』の店長に声を架けられたんです。花音が産休に入るから家に来ないかって。」


「えええっ・・・花音ちゃんとも知り合い?」


「あっ・・・田舎の幼馴染なんです。蓮兄も・・・」


「もしかして此処の大元のオーナーも知ってる?」


「はい。ショーンさんですよね。引越し祝いで紹介されました。」


「そうだったんだ・・・」


「此処、頑張ればそれだけ評価されるって有名だけど、入るのも難しいって言うのも有名で・・・まさか採用されるとは思って無かったんですけど・・・」


「うん。でも君。まさかコネ入社とか思って無いよね?・・・此処はコネで入れる程甘くはないんだよ・・・」


「そうですか?・・・俺てっきり花音か蓮兄が口利いてくれたと思っていました。」


「花音ちゃんは経営に関して一切口を出さないし、本宮店長は君の実力を最、伸ばしたかったから誘った筈だよ。君今日から僕と話す時は英会話にしてね。」


「何故英会話ですか?」


「うん。直ぐに分かるよ。取り敢えず僕のラーニングセット貸すから今日から頑張って。後、帰りに花音ちゃんの処に寄ると良いよ。」


「はぁ・・・・」


意味が分からないと言った風にスタッフルームを出て行きましたね。まぁいいでしょう。

花音ちゃん家に行けば相手を見て何語で話さなきゃいけないか瞬時に判断する子供達も居るし、今なら秘書様も居る筈です。

本宮店長直々のお勧めという事はかなり期待出来そうですね。僕もそろそろ本腰を入れて語学を勉強しよう。

花音ちゃんがこの間未來君をカットに連れて来られて、いきなりフランス語で話し掛けられた時はかなり焦って英語で答えてしましたが・・・

と言うか、何を聞かれたかが分かりませんでした。

他分あれはフランス語っぽかったですよね?「ポジユール』だったし・・・イタリア語ではないはず・・・『チャオ?』取り敢えず挨拶を交わしたけど、フランス語で話したって事は僕、次はフランス研修が待っているに違いないですよね・・・不安しか有りません。


この春中学生になったばかりの未來君が父親のビジネス内容を知っていることが怖いですね。

僕も今日一緒に花音ちゃんの処に寄って帰った方が良いですね。




実際に陸斗君は、ずばぬけてセンスが良かった。体格に似合わず女性客の心を掴むのも上手いです。

『アトリエ・桃』でNO.1と言われたなはずです。

接客中の会話に聞き耳を立ててみました・・・


「そうなんだ・・・俺小さい頃はこれでも身体が弱くて、曾祖母さんから女の子として育てられたんですよ・・・実家も田舎のパーマ屋さんでね・・・子供の頃から店のウイッグで遊んでいたし、かなり器用な子だったと思うよ。」


「編み込みとか出来るんですか?」


高校生位の女性客です。


「うん。自分の髪は自分でセットしていたね。其処ら辺の女の子より可愛かったと自負していたし。」


「えーじゃあ・・・男の子が好きとか無かったですか?」


「あっ・・・それ知ってるBLってヤツ?だよね・・・残念ながら俺の初恋って今産休に入ってる花音だったよ。」


「花音さんの髪綺麗ですよね・・・じゃあ花音さんの髪もセットとかしていました?」


「花音の髪はサラサラすぎて・・・勿体無くて頭を撫でるとかが限界だったよ。そもそも花音は逞し過ぎて纏めるのも嫌がったし・・・俺が触ると他の信者が許さなかったから・・・」


さらっと今彼は驚く過去を話しましたよ。彼にとっての失恋はもう過去なのですね・・・

花音ちゃんモテた事無いって言っていたけど本当に凄かったんだなぁ・・・知らぬは本人ばかりなり・・・


「やっぱり花音さんモテてたんですね・・・」


「花音を嫌いな奴はいなかったと思うよ。中学の文化祭でも着物を着た花音と皆一緒に写真撮りたがって、俺達はそれを阻止してたし・・・でも学校の写真販売で、殆どの男子が花音の写真を欲しがるから先生も沢山撮りたがって、本人は嫌がったけどね。精々1.2枚しか無いアップ写真を皆こぞって買うんだ。終いには展示されていた写真まで盗まれる始末で・・・」


「凄い・・・そんな人居たんだ・・・」


これ聞いてていいのか・・・CEOが聞いていたら怒りそうだな・・・


そう思っていたら本人が子供を連れてやって来た。


「こんにちは。お疲れ様です。店長これ差し入れ・・・みんなで食べて・・・」


「こんにちは。花音ちゃん。もう出歩いて良いの?」


「病気じゃないですよ・・・お散歩がてら出てきました。今日からりっ君が此処に居ると聞いて・・・」


「うん。今接客中。」


「こんにちは。麻衣ちゃん。りっ君は上手にカットしてくれてる?」


「あっ・・・今花音さんの話ししてたんですよ。」


「私の?・・・ちょっとりっ君、私の黒歴史話して無いよね?」


「黒歴史ってなんだよ・・・話してないって・・・」


「そう?・・・ならよかった・・・」


そう言ってスタッフルームに入っていきました。

あっ・・・僕花音ちゃんにお願いがあったんだっけ。







「分かりました。じゃあお店終わってからだから遅くなるね・・・彩美さん一人で空君のお世話大変でしょ・・・家に夕方おいでって言っといて・・ご飯も用意しとくからって・・・店長の所は?大丈夫ですか?」


「うちは親と同居だから遅くなっても大丈夫だよ。」


「うん。彩美に連絡しておくよ。花音の携帯に電話させるから・・・」


「じゃあ・・・待ってるね。」


そう言って帰りました。随分親しそうですね・・・

僕は何故家の会社に英会話が必要かの理由を陸斗君に話し、閉店後花音ちゃん家に向かいました。


「こんばんは。遅くなりました。」


《パパ、陸斗が来たよ。》


未來君が本田さんを読んでくれる。 


《やぁ、陸斗。花音のサロンに替わったんだってね。店長さんもいらっしゃい。》


本田君は英会話で陸斗君に声を掛け僕にもきちんと挨拶してくれます。 


《こんばんは。お世話になります。》


「え?瑛兄。何言ってるか全く分からない・・・瑛兄だよね?・・・」


陸斗君は何故英会話で話し掛けられるかも分からず戸惑ってますね。


「店長、りっ君いらっしゃい。空君はもうお風呂もご飯も済ませて寝ちゃったわよ。取り敢えず入ってて。」


花音ちゃんだけが日本語で連絡事項を伝えてくれました。

中に入るとリビングの子供スペースには永遠君と空君は寝ていて陸斗くんのお嫁さんを僕に紹介され、本田君が僕にフランス語の教材を持って来てくれました。


《小岩井さん。これ未來が5歳の時に使ってたフランス語の教材なんですけど、なかなか面白い出来なんですよ。アニメをフランス語にした物ですけど・・・

それとこちらが簡単な会話や、挨拶から収録した視聴用です。》


《有難う御座います。今日から頑張ります。》


未來君が5歳で使っていた教材をアラサーの僕が譲り受け猛特訓とか・・・何か虚しい・・・

そこへ最近カフェに入った女の子が訪ねて来ました。


《こんばんは。藤沢ですけど・・・未來君か瑛さんいらっしゃいますか?》


「いるわよー。未來、優ちゃん呼んだの?」


《陸斗が来るから、紹介しとこうと思って・・・》


カフェの新人さんは未來君か本田君と尋ねながら永遠君達の方へと近づく。

とうとうパニックを起こした陸斗君が根をあげる。


「え?、俺?、ごめん。俺何言ってるかさっぱり分からない」


「りっ君最初は皆、そんなものよ・・・」


花音ちゃんはいつもの様子で励ますけれど、フォローにはなってませんよ・・・


彼はかなりでテンパって頭を抱えてます。

分かるなぁ・・僕もいきなりNY研修の時は苦労したよ・・・・・

取り敢えず混乱している陸斗君を置いて自分の勉強の為にさっさとお暇する事にします。

ごめんね、うちの会社は其々がライバルなんですよ。油断しないでくださいね。


彼はこの後英語責めになるに違いないですね・・・

僕も実際一人でNYの空港迄飛んで入国審査はしどろもどろで答えたのに、そこからどのバスに乗って良いのかも分からず、携帯片手に本宮君に電話してタクシー乗り場を案内してもらい、タクシーの運転手さんに行き先も告げて貰ってやっと着いたホテルでもチェックイン等、全て頼りっぱなしだった過去を思い出し、苦いものがこみ上げて来ました。


2.3日経つとスタッフ全員がゆっくりと話してくれた事や、日本語の話せるスタッフに通訳して貰いながら2週間を過ごしちょっとだけ惨めでした。

当然お客様との会話なんて殆ど無く、始終愛想笑いで過ごしたダメな日本人スタッフと思われたに違い無いですね。


あれが悔しくて必死に英会話に取り組んだのは日本に帰って来てからですよ。世界に通用するスタイリストになりたいと思いました。

僕は二度と同じ過ちを犯さないように今日から我が子と一緒に子供向けフランス語アニメを見ようと思います。


もう寝てるかなぁ・・・・・寝てるだろうな・・・・

偶には『パパおかえりなさい』って言って欲しいですね。





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