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カノンを捜して~Ⅱ  作者: 塘夜 凛
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1 初恋は実らない。 陸斗 Ⅰ

今回は幼馴染の1人。りっくん編です。

なんとなく切ない思いをずーっとこじらせてるりっくん。

どうなることやら・・・

俺の名前は菅原陸斗。こんなに男らしい名前の俺は早産の未熟児で生まれ何ヶ月も保育器に入って体も弱かった。


あんまり弱かったので、曾祖母さんから女の子の服を着せられ外遊びもせず、近所では色白の可愛い女の子と思われていたらしい。


父親は会社員、母はこの田舎でヘアーサロンをしている。


今日もお客さんに『お人形さんみたいね。』と言われた。


周りの大人達が何時もちやほやするから自分でも当然の様に可愛いと思っていた。


4歳から幼稚園に通い年上の男の子に何度かキスされた。

その度にぶっとばし先生に言いつけてやった。

『俺は男だ。』どんなにそう訴えても格好が女の子だからよく間違えられのも事実。


幼稚園には男の子の格好をした女の子もいた。それが花音だった。


いつも笑顔で明るく、優しく、逞しく花音の側には王子様が3人もいる。

やんちゃな彼女の行動を時には一緒に、時には諌めたりと、何をするにも4人は何時も一緒だ。


お遊戯会の劇の配役を決める時、『王子様は葵君で』と先生が言った瞬間女の子は皆揃ってお姫様役に志願した。

花音以外は・・・


困った先生に『はい。お姫様はりっくんがいいと思います。』と言った花音に彼女以外の女の子達は騒然となり先生は一番無難だからと俺に押し付けた。


葵は『花音が良い』と言い張ったが女の子だと喧嘩になるからと先生が却下。


結局葵も王子様を嫌がり王子様は敬士郎になった。俺は敬士郎にキスをされるのか・・・振りだろうけど・・


花音と葵と修は、小人役に決まり早々と三人で手を繋いで遊んでる。するとあと4人の小人役も女の子が競って成りたがりジャンケンで争っていた。

先生。小人って男の子の配役では・・・?


先生はさっさと決めたかったのだろう。そこら辺は全部無視した。


当日、フワフワパーマにドレスを来た俺に皆メロメロだったが、俺は小人の花音達が羨ましかった。

セリフも少ないし。


お遊戯会の後暫くは又男に追いかけ回される日が続くと、

ある日その中の1人が幼稚園の近くで蛇を捕まえて俺に持って来た。俺は爬虫類が大嫌いだ。


泣きながら逃げ回る俺を花音は背中に庇うと男の子から蛇を取り上げそいつの背中に入れた。


パニックになったそいつは先生の所に逃げたから、先生も悲鳴を上げて逃げ回り園の中は一時騒然となった。


泣き叫ぶ男の子を見て仕方が無さそうに背中から蛇を取り出し園の外に逃がした花音は先生達に凄く叱られた。


言い訳をしない花音の変わりに葵と敬士郎が説明する。


眉間に力を入れて口を尖らせながら泣くのを我慢している花音を見た時は俺が泣きそうになった。(正直に言うと泣いた。)


翌日葵に手を引かれ渋々あいつに謝りに行く花音を見た俺は先生に本当の事を言いつけた。


先生も俺も花音には誤ったが


「りっくんが悪いわけじゃないよ。誰にだって怖い物はあるもん。」


まるで気にして無い素振りで笑うから俺が元気になる。


「花音は何が怖いの?」


「あのね・・・お兄と葵が怒った時。内緒だよ・・・」


葵に隠れてこっそりと耳打ちされた。

この時俺は花音と友達になりたいと言う。


幼稚園で七五三のお祝い会が有った日、毎年の如く俺は振袖を着せられると俺の周りに男が群がる。少し得意気な俺の後ろでザワザワと声がしたので振り向いた。


紫の着物が本当に綺麗で薄らとお化粧を施した姿がガラスケースの人形のようだと思う程可愛い花音。

隣で羽織袴姿の敬士郎と並ぶとお雛飾りだ。

ちっちゃい紳士ぽいスーツを着た葵が不機嫌顔でいたが、花音の手をしっかりと握って離さない。


「りっくんも着物だぁ~良かった~」


ぱぁーっと綻ぶ花の様な笑顔で花音に声を掛けられ自分が見とれていたことに気付いた。


「花音、可愛い。僕は・・偽物だ・・・」


自分の格好に恥ずかしくなり真っ赤な顔で走って逃げた。その日家に帰った俺は親父にバリカンで髪を切って貰った。


当然、親父は母や祖母、曾祖母に叱られたらしい。


翌日から男物の服を着るようになり(と、言っても女の子の服しか無かったので少ない半ズボンを引っ張り出した)お袋が花音の母に愚痴を零し蓮兄のお下り服を沢山貰って帰って来た。


花音愛用のarmy・・・2人でお揃いを着て登園したら次の日から葵も敬士郎も揃えて来た。


修は拘らなかったが、次の日幼稚園でお揃いを着替えさせられた。わざわざ持ってきたのか・・・


どうせスモックで隠れるじゃないか。



俺は少しでも花音の視界に入りたくて葵や敬士郎、修と一緒に行動する。


彼等といると自然と体は鍛えられてる。走って山を昇り草スキーしたり、早朝から木に登って甲虫や鍬形虫採ったり。

広場で一日中サッカーして倒れた事もあった。


これまで男友達と遊ぶ事の無かった俺には新鮮で、日焼けして逞しく育つ俺に両親も心配しながら喜んだ。



時折花音は1人で教会に向かって居なくなる。

一度着いて行こうとして『終わったらお出で』とやんわり断られた。


4人麓の港で待ち耳をすますと歌が聞こえる。どっかの爺ちゃんや婆ちゃんも聴いてる。


もうすぐ歌も終わる頃3人が立ち上がったので着いて行く。


教会の丘からは綺麗な海にキラキラと夕日が反射し此処で時々歌っていると言った。

お腹を抑え上手に息を吐きながら歌うと声が響くそうだ。

歌い終わった花音は真っ赤な顔をして笑った。

そんな花音が愛おしくて争う様に手を繋いで帰った。


何の変哲も無い田舎で大切な友達に出逢えたこの時はただ毎日が楽しくて俺達は一生このままだと思ってた。


中学に入り花音のセーラー服姿を見た時に彼女が女の子だったと意識した。

すると何故だか上手く話が出来ない。


隣で平気な顔をしてる葵や敬士郎を見て感心すると彼奴らは恥ずかしいより、花音と話せなくなる事を嫌だと言った。

その通りだ。折角近くにいるのに無視する方が勿体ない。


年々綺麗に成長する花音を少しも見逃すもんか。

他の奴らが近寄らない様虫除けだってするさ。


女顔だった俺も中学になると段々親父に似て眉も濃く目が鋭くなったせいか花音の周りに寄る小蝿を威嚇すると誰も声を掛けて来ない。


文化祭の写真も皆で撮った。俺たちが1人ずつ花音と写ると調子に乗った奴らがやって来る。先輩でも容赦なく追い返した。


花音は自分だけで無く俺たち其々の写真をとりたがる。女子に販売するそうだ。ヤメテ・・・





そんな俺達が中3の夏休みに入ったばかりの夕暮れ時、花音が瑛兄のシャツを着て背負われていた。


偶然だったが、見てはいけない物を見た気がしてそっとその場に隠れた。


家まで走って部屋に入る。鼓動が激しくて嫌な予感しかしない。

瑛兄と花音・・・

葵の兄を花音は自分の兄の様に慕っている事は誰もが知っている。


結局夏休みは其々が受験対策に追われ、俺は誰にも話す事なく二学期になった。





花音が消えた・・・あの日一緒にいたはずの瑛兄に何を聞いても何も言わない。


俺はネットで名前を検索したり、黒髪ロングの女の子で目撃情報を検索したり、何も解らないまま花音を探していた時、突然修が事故死した。




あれから何の手掛かりもなく2年が過ぎた高三の春に花音は戻ってきた。


入学式後直ぐにでも駆け寄りたかったが椅子を倒して騒がせた為学年主任に絞られた。


急に大人になった花音は少し影が有りこの二年間の記憶がないと言った。


俺にだって高校に入ってから彼女位はいた。

それなりの経験もした。多くはないが・・・


記憶をなくした花音に問ことも出来ずもどかしい思いが続く日々を過ごし11月の終わりに花音が転校する事になる。

原因は葵だったが花音は葵を責めもせず又この町から消えてしまった。


「今度は街に居るから遊びに来てね。敬ちゃんの居る高校なの。」


そう言うとスマホの番号を教え蓮兄と瑛兄を連れて引越した。


何故何時も花音が居なくなる時に瑛兄が付いて行くのか疑問に思ったので葵に聞いた。


葵にしては珍しく『花音を守るため』だと教えてくれた。

葵と口を聞いたのは2年ぶりだった。





一回では終わらなかったので近いうちにまた書きたいと思います。

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