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第九話 予言者の死

 穏やかな海をガレー船が行く。奇妙なことに、四人の男がマストに吊るし付けられている。全員、猿ぐつわを噛まされ、目隠しをされている。どういう咎で彼らはこんな目にあっているのか。それを知るのは年老いた予言者しか知らない。船長が問うた。


「予言者様、これで確実に千金の富が得られるのでしょうか」


 しかし予言者は黙って睨み返すだけ。その一睨みは海の男の頭である船長を震え上がらせるほどだった。仕方なく船長はガレーの漕ぎ手たちを鼓舞しに戻る。

 航海を始めて四日ほど経った夜。にわかに雲がかき曇り、稲光と強風と大波が乱舞し始めた。大時化である。船長は慌てて予言者にすがった。


「どうか、どうか予言者様! この嵐をお鎮めください!」


 予言の力を持つ老人は、マストに吊るされた男たちを指さすと、


「やつらを海に投げ込め。さすればたちどころに平らかになろう」


 と言った。船長は首をひねりつつ、


「しかし、この船には元より生贄のための水先案内人がおりますが」


 と言うと、老人は、そやつはいらん、あの奴ばらを投げ込め、さあ早く、と急かすばかり。しかたなく彼は水夫に四人を海中へと放り込ませた。

 途端に、雲の切れ間ができた。船長が歓喜の表情を見せかけた瞬間、


「馬鹿者め! 運命からは逃れられぬと知ってのことか! 痴れ者どもよ、我が雷鎚を受けるがよい!」


 船長が予言者を見やると、怯えきった表情で黙り込んでいた。騙したな、という前に船は雷に打たれ沈んだ。

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