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第六十二話 洋食屋の名
ここはとある空き店舗。商談がまとまり、三人のコックが店として使うこととなった。
「さて、店の名は何としよう?」
佐々木というコックが言った。
「ああ、そうだ、名前がなくては始まらない」
宮本というコックが言った。
「平凡に『洋食屋なんたら』ではどうか?」
上泉というコックが言った。
三人の料理人は洋食屋を営む予定である。いずれも腕に自信ありという者どもである。
「ふうむ、だが『なんたら』では締まらんだろう」
と宮本。
「では佐々木、お前ならなんとする」
と上泉。
「そこで佐々木に聞くのかね!?」
と抗議する宮本。上泉はそれを無視し、佐々木に発言を促した。
「それでは『洋食屋佐久間』はどうか?」
と佐々木。
「佐久間!?」
「佐久間だと!?」
他の二人は驚いた。宮本が叫ぶ。
「佐久間などと言う名の者は私たちの誰も知らんはずだ! ならば全く関係のない人物だろう! どうしてそんな名をつける!?」
上泉も同調して、
「百歩譲っても『佐久間』には佐々木の佐の文字しか入っていない! お前一人のものにする気かね!」
と叫んだ。佐々木は極めて冷静に、
「二人とも、考えてみたまえ。この店舗の隣にあるラーメン屋を思い出すのだ」
すると二人は黙った。というのも、どういう訳かそのラーメン屋の名は『佐久間のとなり』だったのだ。




