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第五十八話 持つべきものは多かれど

『晴れ渡った空を割って一閃。白光は剣のごとく。抜剣の音は煩悩を断ち切るがごとく。青天の霹靂である』

 私はここまで書いて悩んでしまった。笹野先輩はまだ部室に来ていない。つまり相談相手が今はいないということだ。先輩を待ってみようか。いいや、もう少し書き進めてから話をしたい。そう思っていると、戸がガララッと開いて、

「あれ、笹野は?」  

 吉城先輩がやってきた。びっくりした。あまりにも件の文章の続きをどうするかについて悩んでいたので。戸があんなにもスムーズに動いたのにも驚いたけれども、そういえば昨日笹野先輩と溝の掃除をしたりロウを塗ったりしたっけ。自分の記憶力が一瞬低下したのは心配だ。ああ、無駄な話をしてしまった。文芸部ではよく顔を見るほうである吉城先輩――残念ながらこの部は幽霊部員が多い――がやって来た、それも急に。

「芳月も笹野待ちか?」

 吉城先輩は言った。私が頷くと、そうかー、と彼は席に着く。

「で、何をしていたんだ?」

「ああ、この文章の続きをどうしようか考えていたんです」

 私は件の文章を先輩に見せる。

「ふーむ……」

 しばらく唸ってから、吉城先輩は助言してくれた。

「一旦寝かせてみたらどうだ? その文章をテキストファイルに写してからさ、ファイル名を『ネタのストック』って付けておけばいいんじゃないか?」

「ああ、そうですね! ありがとうございます!」

 持つべきものは多かれど、よき先達は得難きことかな。

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